【大反省会】タロウが当て逃げに遭ったときの話(後編)
(前編はこちら)
交差点での現場検証、横断歩道に立たせて状況を聞く。
その間もタロウは、
「ぼくが左を見てなかったからなんだよ。。」
と何度も言うばかりで、状況が見えてこない。
車が来ていないところ見計らって、
先生が実際に横断歩道の前半、真ん中、後半に立ち、
それぞれのところで振り返りながら
「車と当たったのはこのへん?」
と尋ねる。
先生が横断歩道の後半で振り返り、
「ここ?」
と尋ねたとき、タロウがうなずいた。
車の大きさを確認しようとするも、
タロウは両手で1メートルほどの幅をつくるだけで、それが大型車か軽自動車かもわからない。
車は黒で、乗っていたのはウルトラの祖母くらいの年齢の女の人、
ということだけがわかった。
体のどこに当たったのかと訊いてもはっきりとした答えはなかった。
なにはともあれ怪我はないし、
これ以上先生たちを拘束するのが申し訳なく、
「ありがとうございました。本人も言うように、よく見ていなかったんだと思います」
「左右確認するよう、よく言って聞かせます」
とお礼を言い、タロウにも頭を下げさせた。
あとからわかった、ことの真相
家に帰っておやつを食べさせ、
一息ついたところで改めて詳しく話を聞いていると、
「ぼくもう、わたっとったんよ」
とタロウがぽつりと言った。
そこで初めて、車と接触したのはタロウが横断歩道を渡り切ったところだということ、
そして、ドンと当たったのは体ではなく、
ランドセルの端だったということが判明した。
そして、車の運転手は窓をあけてタロウに声をかけたが、
降りて確認はせずに行ってしまったのだということも。
その日は訪問リハビリの日だったので、
作業療法の先生に一連の出来事を説明した。
するとその先生、
「ランドセルと接触したんだとしたら、タロウくんは横断歩道を渡り切っていたんでしょうね」
「渡りきっているんだから、ちゃんと左右確認して、車が来ていないと思って渡り始めたんだと思いますよ」
「当たったのがランドセルだとしても、これ、
当て逃げと言っていい案件ですよ」
と言ったのだ。
当て逃げ。
頭をガツンと殴られた気がした。
私の中の、タロウが悪いという
前提に気づく
私の頭の中で出来上がっていたストーリーは、
「いつものタロウの不注意でおきた出来事」だった。
連絡を受けたときからそうだった。
タロウが不注意で人様の車にぶつかったのではないか。
タロウから話を聞く前から、私の頭には、
そんな決めつけがあったじゃないか。
タロウも、自身の不注意について私から怒られてばかりだから、
「自分に非があったとしたら」と考え、
怒られる前に「ぼくが左を見ていなかったから」と弁明したのだ。きっと。
「タロウはいつも不注意」
「不注意のせいでいつも他人に迷惑をかけてしまう」
そんな私の中の前提が、
タロウを萎縮させてしまって、
要らぬ弁明をさせてしまった。
その夜、タロウが寝たあと、
私は泣きながら大反省会をした。
いちばんの味方でいるということ
翌朝、タロウがまだ
「今日はちゃんと、みぎひだりをかくにんする」
としょんぼりしていたので、
「ちゃんと話をわかるまで聞かずに、
タロウが悪かったということにしてごめん」
と謝った。
そして、
🔸きっとタロウは左右確認をしてから渡った
🔸だから、当たったのがランドセルの端だけで済んだ
🔸タロウが横断歩道を渡っていても、気づかない車や止まってくれない車はいる
🔸もし車とぶつかったら、痛くなくても、大丈夫とは言わない
🔸すぐに学校か学童に戻って先生に言う
🔸心配はするけど、怒らないから
などを抱きしめながら伝えた。
わかってもらえたかな。
自信はない。
特性を持つ子の親をしていると、
子どものどんな行動が不適切だったか明らかにして、
本人にそれを諭し(たとえポーズだとしてもやらなければいけない)、
子どもに代わって頭を下げる機会がとても多い。
友だちから何か嫌なことをされたと報告されても、
話を聞きながら
「でもあんたが先に何か、相手の気に触ることしたんちゃうん」と
言ってしまうこともある。
「うちの子はやらかす」という前提、決めつけは、
知らず知らずのうちに子どもへの眼差しを歪めてしまっていて、
「いちばんの味方でいる」ことを阻む。
タロウがこの件を思い出して口にするたび、
何度でも謝ろうと思う。
そして、いちばんの味方であるためには、と
何度でも立ち止まって考える。
