[ 二番目が私になるとき ]:シロクマ文芸部(月めくり)
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なんかかんかで、わたしの中では不思議なお話ができました🌕

[ 二番目が私になるとき ]
「月めくりをするのはどうでしょう」
20☓☓年。我々は、衛星軌道上のゴミを回収する会社の社員。
清掃宇宙船「WASH」を操縦し、毎週一度のゴミの回収作業をしていた。
いつもと変わらない通常業務のハズだった。
しかし、予期せぬマシントラブルで衛星軌道を外れてしまい、我々は宇宙船ごと宇宙空間へ飛ばされてしまった。
隣に搭乗している相棒が緊急事態の発生を、本社と宇宙運輸局に伝えてくれた。
操縦桿を握る私は、頭を冷静にするべく呼吸を整えながら、なにか策はないかと、コックピット内をあちこち見回した。
(どうする、どうする)
そんなときに聞こえてきたのが、「月めくりをする」という相棒の声だった。
私は、目を前方に向けた。
漆黒の闇と、きらびやかな星が広がる。
その中で、太陽の光を強烈に反射した、月の姿が見えた。
月めくりとは、マラソンの折返し地点のように、月を回り込むように飛行し、月の引力を借りて軌道を地球に向ける方法だ。
「報告したので、いつかは救助艇がやって来ます。ただ、救助を受けるには月めくりをして、少しでも地球に近づくことが最適かと思います」
と冷静に分析する相棒。
「そうだな、今は、それしか無いな」
私は、同意した。
同時に緊張もした。
月めくりをするには、かなりのスキルが必要だ。
月に近づきすぎると、月に引っ張られ激突してしまう。
かと言って、遠いとそのまま月を通過してしまい、二度と地球の方向へ向くことができなくなる。
月の引力を使って方向転換するには、針の穴に糸を通すような狭い場所に宇宙船を運ばなければならない。
しかも、使える燃料は限られている。
私は、震える手を操縦桿からはずし、膝の上においた。
目を閉じ、呼吸を整える。
すると相棒が、「大丈夫」と言ったあと、少しおどけた言葉を発した。
「成功すれば、あなたは人類史上二番目、民間人としては初めての、月めくりを成功した偉大なるパイロットとなりますよ」
(ほう)
私の頭の中が、少し静かになった。
そして目を閉じたまま、
「いち宇宙ゴミ清掃会社の社員が、偉大なるパイロットかー」
と呟くと不思議と不安が消えさり、頭の中が、無限の彼方まで澄み渡っていく感じがした。
静かに目を開けて、輝く月を見据えた。
私は、大きく深呼吸をし、
そして、
「よし、英雄になろう」
「ラジャー、幸運を願います」
と静かに言った相棒に、私は訊ねた。
「この船の名前はなんだ」
「WASH」
「二番目を“I(私)”に変えてみろ」
「WISH──願い、或いは、希望……」
「私は、会社員の希望になる」
「ラジャー」
少し高ぶった相棒の声を聞きながら、私は、操縦桿を月に合わせ、足のペダルを踏み、宇宙船の後方からエアを噴射した。
おしまい
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