[大東亜戦争の遺産⑤]インドネシア独立戦争を戦い抜いた残留日本兵 井上和彦/ジャーナリスト(「日本の息吹」令和7年5月号より)
インドネシア独立宣言文起草の日付に込められたインドネシア人の思いとは―

「17-8-05」―これはインドネシアの独立の日である。
インドネシアの独立宣言が行われたのは、終戦2日後の1945年(昭和20年)8月17日だったのだから「17-08」は読み取れる。だが「05」とは?
驚くなかれ、なんとそれは「皇紀2605」のことだったのである。
独立宣言文起草の日付に日本の皇紀を採用したインドネシア―もし日本軍の進出とその後の軍政が、インドネシアの人々に恨まれていたのなら、皇紀など使われるはずがなかろう。アラムシャ元第3副首相はこう述べている。
《我々インドネシア人はオランダの鉄鎖を断ち切って独立すべく、350年間に亘り、幾度か屍山血河の闘争を試みたが、オランダの狡智なスパイ網と、強靭な武力と、過酷な法律によって、圧倒され壊滅されてしまった。
それを日本軍が到来するや、たちまちにしてオランダの鉄鎖を断ち切ってくれた。インドネシア人が歓喜雀躍し、感謝感激したのは当然である》
そして占領後の日本軍最高司令官であった今村均中将の軍政は素晴らしかった。
日本の軍政は、オランダ支配下では考えられなかった地元民に対する教育および医療制度の整備、インドネシア語の普及、そして後の独立に向けたインドネシア人の政治意識の醸成を行なった。
わずか3年半の統治期間に、教員養成のための教員学校や、医師・医療機関従事者養成のための医科大学、近代農法を学ぶ農業大学などが次々と設置されたのである。
そしてなにより、日本軍は、いち早く政治犯として獄中にあったのちの大統領となるスカルノと同じく副大統領となるハッタを救出しており、このことからも日本がこの後にインドネシアを独立させようとしていたことがわかる。

もとより日本軍の蘭印侵攻作戦の最大の目的は、アメリカを中心とするABCD包囲網によって手に入れることができなくなった石油など工業資源確保のためであり、すなわち日本の国家存亡をかけた戦いであった。
だが同時にこの戦いは、350年にもおよぶオランダの植民地支配を終焉させ、後にインドネシアを独立させるためでもあった。
インドネシア人にとって、それまで彼らを奴隷として扱ってきたオランダを日本軍が見事に撃ち破ったことは史上最高の出来事だった。
日本軍による統治のなかでも、後の独立戦争でその中心となって戦ったインドネシア初の軍隊組織「PETA」(ペタ/祖国防衛義勇軍)を創設したことは最大の功績だった。インドネシア人によって編成されたPETAは、日本軍によって教育訓練され、「大団旗」と呼ばれるPETAの旗は、日本の旭日旗をベースにデザインされていた。

だがこうして日本軍がインドネシア人の軍隊組織PETAを錬成している最中に、日本は連合軍に降伏してしまったのだ。
すると再び、かつての宗主国オランダやその盟友イギリスがインドネシアを支配しようと舞い戻ってきたのだった。
ここにインドネシア独立戦争が始まった。
もちろん日本軍によって育てられたPETAは立ち上がって独立のために戦った。
そして忘れてはならないのが、大東亜戦争終結後も自発的にインドネシアに残留を決め、インドネシア独立のために再び銃を執った2000名に上る日本兵の存在である。
残留日本兵は、かつて自分たちの到来を大歓迎してくれたインドネシアの人々を見捨てることができなかったのだ。彼らは愛する家族との再会の夢を捨てさり、インドネシア独立のために舞い戻ってきた英蘭軍と戦ったのである。
こうして1949年12月までに1000人もの日本兵が戦死し、生き残った者の多くは独立後も現地に留まって終生インドネシアで暮らした。

そんな残留日本兵達はいま、ジャカルタの「カリバタ国立英雄墓地」をはじめスラバヤやスマトラなど全国各地の英雄墓地に眠っている。そして彼らは、インドネシア独立戦争を戦い抜いた〝英雄〟として人々から讃えられているのだ。
大東亜戦争は、アジア解放のための戦いだったのである。


いのうえ かずひこ
ジャーナリスト。昭和38年滋賀県生れ。滋賀県立膳所高校・法政大学社会学部卒。専門は軍事・安全保障・外交問題・近現代史。各種バラエティー番組やニュース番組のコメンテーターを務める。著書多数。フジサンケイグループ第17回「正論新風賞」受賞。第6回アパ日本再興大賞受賞。
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