#43|優しい人の陰で誰かが嫌われてる
あなたの職場に、こんな人はいませんか。
誰にでも穏やかで、絶対に怒らない。
部下がミスをしても「次から気をつけてね」で終わらせる。
みんなが「あの人と働きやすい」と口をそろえる、いわゆる「理想のいい人」。
しかし、その人の優しさは、本当にその人ひとりの力で成り立っているのでしょうか。
1.「怒らない」は思っている以上にきつい
子育てをするようになってから、「怒らない」「叱らない」ことの難しさを身をもって知りました。
仕事で疲れ果てて帰宅した夜、子どもがカーペットにジュースをこぼす。
怒鳴りたい衝動をぐっと飲み込み、深呼吸して、「一緒に拭こうか」と穏やかに諭す。
表面上は落ち着いた親を演じながら、心の中は大嵐です。
これは「感情労働」と呼ばれます。
自分の本音に蓋をして、役割として穏やかな態度を維持し続ける作業です。
肉体労働と同じか、それ以上に消耗します。
個人の気力だけで毎日続けることには、やはり限界があります。
2.工場に置き換えると、見えてくるものがある
たとえば、機械は動き続けると熱を持つ。
そのまま放置すれば焼き付いて止まる。
だから冷却装置が必要です。
組織も同じ構造。
人が集まって仕事をすれば、必ず「摩擦」が生まれます。
期限を守らない、品質が甘い、確認をサボる、こういった問題を放置すれば、現場は少しずつ緩んでいきます。
「感じのいい社長」「話しやすい上司」が穏やかでいられるのは、その摩擦を誰か別の人が引き受けているからだったりします。
遅刻や期限切れをその場で注意する
納品前に品質をチェックして突き返す
「それはルール違反だ」と言い切る
後輩の尻ぬぐいを黙ってやる
こういう仕事は、やった人間が感謝されるどころか、「あの人は細かい」「口うるさい」と思われることの方が多い。
しかし誰かが担わなければ、現場の基準は確実に下がっていきます。
3.「厳しい人」と「ただ機嫌が悪い人」は別物
ここで、大切な区別をしておきます。
「厳しい人=組織のために動いている人」ではありません。
自分の感情をぶつけているだけの人も、当然います。
見るべきポイントはひとつ、その厳しさが、何のためか。
自分のイライラを誰かにぶつけているだけなら、それはただの八つ当たり。
しかし、品質を守るため、納期を守るため、現場が崩れないようにするために言っているなら、それは組織を支える仕事です。
矢印が「自分」に向いているか、「現場・チーム」に向いているか。
そこを見れば、区別がつきます。
4.「見えている役割」と「背負っている役割」のズレが、すれ違いを生む
問題は、このズレに誰も気づかないまま放置されること。
すると、こんな不満が現場に積み上がっていきます。
「あいつばかり評価される」
「なぜ自分ばかり嫌な役をやらされるんだ」
「誰も見ていないところで動いているのに、誰もわかってくれない」
やがて、摩擦を一手に引き受けてくれていた人から順番に燃え尽きて、辞めていく。
残るのは「感じのいい職場」という見た目だけ。
現場の熱を逃がせる人間がいなくなったとき、組織は静かに崩れ始めます。
5.その人が「何を背負っているか」まで、見にいく
「あいつ、口うるさいな」と思っている社員が、実は現場が壊れないように摩擦を吸収し続けてくれているかもしれません。
逆に、今「自分ばかりが損な役回りだ」と感じている人がいるなら、その人こそ現場の重りを背負っている可能性が高いです。
すれ違いをほどくには、態度や言い方だけで人を判断するのをやめること。
その人が何を引き受けているのか
そこまで見にいくことが、経営者には求められます。
優しい人が悪いわけではない。
厳しい人が正しいと言いたいわけでもない。
ただ、「感じよく見えること」と「現場に必要な役割を担っていること」は、必ずしも一致しません。
そこを見誤ると、本当に現場を支えている人間が報われず、表向きの印象だけで評価が決まる職場になっていきます。
冷却装置は、目立たない。
しかし、それが止まったとき、はじめてその存在の大きさに気づく。
明日、もう一度、現場を見渡してみてください。

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