#37|体に悪いものはうまい─経営もたぶん同じ
からあげ、コロッケ、ドーナツ、フライドポテト。
体に悪いってわかってても、仕事終わりにコンビニで目に入ると、つい手が伸びてしまう。
一口食べた瞬間、その日の疲れが全部吹き飛ぶような気がする。
でも、毎晩それを続けたらどうなるか。
これは誰に言われんでもわかりますよね。
実は、中小企業の経営でもまったく同じことが起きているんです。
1.「助かった」と思った判断が、じわじわ効いてくる
経営で怖いのは、悪い判断が「いかにも悪そうな顔」をして現れるわけではない、ということです。
むしろ、「今月乗り切れた」という顔をして現れます。
「現場が回った」という顔をして現れます。
だから気づかない。
気づいた頃には、それが当たり前になっている。
よくある「美味しい罠」を3つ挙げてみます。
① 値引き
「他所より少し安くしたら、仕事が取れた」
その瞬間はホッとします。
でも、それを続けると加工賃はどんどん低くなります。
一度下げた単価は、なかなか元に戻せません。
しかも、安さで取った仕事ほど、要求は細かくてクレームも多い。
気づけば、忙しいのに利益が残らない会社になっていきます。
② 社長が全部抱え込む
「自分でやった方が早い、確実だ」
これは事実です。
段取りも品質管理も、社長が動けば間違いない。
でも、それを続けると、社長がいないと現場が止まる会社ができあがる。
社長が現場に張り付くほど、次の仕事の段取りや営業に頭が回らなくなる。頑張れば頑張るほど、会社が前に進まなくなるという矛盾です。
③ 人を育てるのを後回しにする
忙しいから、今は教えてる余裕がない。
できる人間がやった方が早い。
今月だけを見れば、その通りです。
でも、ずっとそれを続けた会社には、「ベテランしか回せない仕事」が積み上がっていく。
そのベテランが体を壊したり、辞めたりした瞬間に、現場が一気に回らなくなる。
この3つに共通することがあります。
今のラクさを、将来の会社の体力で買っているだけ、ということです。
2.判断の基準をひとつ変えてみる
では、どうすればいいか。
難しい話ではありません。
判断するときに、こう自問するだけです。
「この決め方は、半年後・1年後の会社を強くするか」
今月の受注が取れるか、今週の現場が回るか、それも大事です。
でも、それだけで判断し続けると、知らないうちに会社の体力を削る選択ばかりが積み重なっていきます。
体にいい食事が「地味で、すぐ効かなくて、作るのが面倒」なように、会社経営にとっていい判断も、だいたい地味で手間がかかります。
単価を下げずに、自社の加工技術の強みをきちんと伝えること。
段取りや検査を、自分でやらずに若手に任せてみること。
忙しい時期だからこそ、少しの時間でも隣で教えること。
どれもすぐには結果が出ません。
やっている最中はしんどいし、「本当にこれでいいのか」と不安になることもあります。
でも、体を鍛えるのと同じで、地味な積み重ねが、あとで会社の踏ん張る力になるんです。
3.全部を一気に変えなくていい
そうは言っても、目の前の仕事を断るわけにもいかないですよね。
だから、全部を一気に変える必要はありません。
今やっていることの中に、少しだけ「未来への種」を混ぜ込めばいいんです。
たとえば、自分が段取りをするなら、若手を横に立たせて見せながらやる。
自分がクレーム対応に行くなら、次回は一緒に連れて行く。
それだけでいいんです。
ドーナツを食べながら、少しずつ野菜を混ぜ込んでいくようなイメージですね。
4.今うまいか、あとで効くか
体に悪いものはうまい。
会社経営も、たぶん同じです。
「助かった」と感じた判断ほど、少しだけ立ち止まって考えてみる。
「これは今がラクになるだけか、それとも来年の会社を本当に強くするか」
その問いをひとつ持ち歩くだけで、日々の決め方はじわじわと変わってきます。
即効性はありません。
地味だし、最初は手応えも薄いです。
でも、そういう判断の積み重ねが10年後も生き残る会社をつくる、と私は思っています。

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