#14|ペルソナ設定より「一人の顔」を意識したビジネス戦略
難しいマーケティング理論より、まずは身近な取引先から
会社を経営していると、「新規開拓をもっと頑張れ」「ターゲット顧客を明確にしろ」なんてよく言われませんか?
コンサルタントからは「ペルソナ設定をしましょう」と提案される。
年齢は何歳で、どんな会社の、どんな役職の人で…
と細かく理想の顧客像を作る手法です。
でも正直なところ、そんな机上の空論みたいなことをやっている暇があったら現場で汗をかいていたい、というのが本音ではないでしょうか。
わたしの体験談が、そんな悩みにヒントになると思います。
1.教科書どおりじゃない、でも結果が出た方法
わたしは、副業をはじめた際、「どんな客層を狙うか」という一般的なペルソナ設定をしませんでした。
頭に浮かんだのは、すでに面識のある会社のA社長という、実在する特定の人物でした。
「とにかくA社長にこれは素晴らしいと喜んでもらいたい。A社長から『ぜひうちと契約したい』と言ってもらうためには、一体どうすればいいのか」
この一点だけを徹底的に考え抜いて、サービスを練り上げていったのです。
2.なぜ「知っている人」を思い浮かべると上手くいくのか
架空のペルソナと、実在の人物。
なぜ後者の方が効果的なのでしょうか。
その人のことがリアルにわかる
A社長がどんな課題を抱えているか、どんな言葉に心を動かされるのか、どんな価値観を大切にしているかを、はるかにリアルに深く想像できます。
過去の会話の断片、その人の表情、反応といった具体的な記憶が想像をさらに豊かにしてくれるのです。
本気度が変わる
抽象的なペルソナではなく、顔の見える個人を相手にすることで、「この人を助けたい」「この人に心から喜んでほしい」という、より人間的で強い動機が生まれます。
この内発的な熱量が、製品やサービスの細部に宿り、コミュニケーションの熱となって相手に伝わるのです。
問題の核心が見える
「みんなが困っていること」は漠然としていますが、「A社長が困っていること」は具体的です。
その具体的な困りごとに真正面から取り組めば、的確な解決策が見つかりやすくなります。
話し方も決まる
A社長に説明するつもりで資料を作れば、使う言葉も、強調するポイントも自然と決まります。
「この話し方ならA社長にも伝わるな」という感覚で進められます。
3.狙いが外れても、実は大成功だった話
興味深いことに、最終的にA社長は、わたしが最初に想定していたサービスとは少し違う別のものを契約いただけました。
狙い通りドンピシャではなかったんです。
ところが、ここからが本当の成果でした。
A社長のことを真剣に考えて作ったサービスが、全く別の会社のB社長、C社長といった方々に大変喜ばれて、そちらとの契約につながっていったのです。
一人を深く考えると、多くの人に響く
これはどういうことでしょうか。
A社長のことを本気で考えた結果、A社長と似たような悩みを抱えている他の社長さんたちの心にも響くサービスになっていたのです。
中小企業の世界でも同じことが言えるでしょう。
例えば、いつも付き合いのある山田製作所の専務のことを真剣に考えて加工技術を磨けば、同じような課題を持つ他の会社からも「うちでもお願いします」という話が来るかもしれません。
一人のお客さんのことを深く深く考えることが、実は多くのお客さんに喜んでもらえる技術やサービスを生み出す近道になることがあるんです。
失敗を避けるための注意点
もちろん、選ぶ相手を間違えると失敗することもあります。
あまりにも特殊すぎる要求をする相手を基準にしてしまうと、他の誰にも役に立たないものになってしまう可能性があります。
でも中小企業の強みは、長年の付き合いで様々な取引先を知っていることです。
その中から「この人の課題は、他の会社でもよくある話だな」と思える相手を選べば、大きく外すことは少ないでしょう。
4.今日から始められること
この「一人の顔を思い浮かべる」やり方を試してみませんか?
まず、こう自分に問いかけてみてください。
「この技術を一番喜んでくれそうなお客さんは誰だろう?」
「あの社長さんが困っていることを、うちの技術で何とかできないか?」
具体的な相手が頭に浮かんだら、その人のことをとことん考えてみる。
どんな製品を作れば喜んでくれるか、どんな納期なら助かるか、どんな価格なら納得してくれるか。
営業や提案にも使える
この考え方は、新しい技術開発だけでなく、営業や提案の場面でも使えます。
「製造業の皆さんへ」という漠然とした提案書より、「田中社長、いつもお世話になっております」という気持ちで書いた提案書の方が、相手の心に響きます。
田中社長以外の人が読んでも、「この会社は本当にお客さんのことを考えている」と感じてもらえるはずです。
5.難しく考えず、身近なところから
複雑なマーケティング理論を学ぶ前に、まず身近な取引先の顔を思い浮かべてみる。
「あの社長さんなら、きっとこんなことで困っているだろう」
「こういう提案なら喜んでくれるはずだ」
そんな風に考えることから始めてみませんか?
案外、それが新しいビジネスチャンスの第一歩になるかもしれません。
結局のところ、「誰に喜んでもらいたいか」がはっきりしていれば、それで十分なんです。
まずは一人の顔を思い浮かべることから始めてみましょう。

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