#7|「まだやれる」社長の顔が言うてた|原点回帰の力
「事業を続けるかどうか、正直悩んでんねん」
先日、中小企業の社長さんと話をしていた時のことです。
いつもは元気なその社長が、開口一番こう言ったんです。
この一言が、ずしんと胸に響きました。
前職から独立後、お金の悩み、人の悩みに向き合いながらも、人脈を駆使し20年弱必死に経営の舵取りしてきた方。
そんな人が「やめる」と言うんですから、相当追い詰められている状況だったんでしょう。
景気の悪化、人手不足、主要取引先への依存度の高さ。
中小企業を取り巻く環境は本当に厳しい。
でも、それだけじゃない。
20年かけて築き上げてきた会社、技術者としてのプライド、従業員への責任。
そういうものすべてを手放すかどうか悩んでいる。
そんな重たい決断を迫られていたんです。
1.ふと昔の話が始まった
そんな重い空気の中で、ふと話の流れが変わりました。
社長が急に昔の話を始めたんです。
「そういえば、独立直後の頃のことを思い出すわ」と。
なんで今、昔の話?と思いましたが、聞いていると面白い。
追い詰められた状況なのに、なぜか昔の、それも一番大変だった創業時の話をし始めた。
これには何か意味があるんじゃないかと感じました。
「何もなかったけど、毎日がワクワクやった」
その社長が話してくれた創業当時は、自宅をオフィスにして一人で机に向かって頃のことでした。
従業員なんていない。
売上もゼロ。
本当に何もないところから、たった一人で手探りで未来を創ろうとしていた時代です。
「でもな」と社長は言いました。
「あの頃は何もなかったけど、毎日がワクワクやった。
朝起きたら、今日はどんな仕事が来るかな、
どんな技術を覚えられるかな、って楽しみやったんや」
今の苦しい状況とは正反対の、希望に満ちた話でした。
お金がなくても、設備がなくても、何かを作り上げる喜び、お客さんに喜んでもらえる嬉しさ。
そういう純粋な気持ちで毎日を送っていた。
そんな時代があったんです。
2.社長の顔が変わった
その話をしている間、社長の表情がだんだん変わってきました。
最初はどんよりしていた顔が、少しずつ明るくなってきたんです。
何も言わなかったけど、その表情を見ていると「まだやれる」って思っているのが伝わってきました。
これはわたしの勝手な解釈かもしれませんが、創業当時の気持ちを思い出すことで、何かが変わったんだと思います。
あの頃の情熱や、ものづくりへの純粋な気持ちを思い出して、もう一度頑張ってみようという気持ちが湧いてきたんじゃないでしょうか。
昔を思い出すのは逃げじゃない
「昔は良かった」なんて言うのは、現実逃避だと思われがちです。
でも、この社長の場合は違いました。
昔を懐かしんでいるんじゃなくて、「自分は何のためにこの仕事を始めたのか」「何が自分を突き動かしていたのか」を思い出していたんです。
嵐の中で船が流されそうになった時、錨を下ろして踏ん張りますよね。
それと同じで、困ったときに自分の原点を思い出すことで、ブレない軸を取り戻すことができるんです。
特に今みたいに先の見えない時代には、こういう心の支えが大切になってきます。
3.あなたの「始まり」を思い出してみませんか
この話は、中小企業の社長だけの話じゃありません。
職人さんでも、営業の人でも、事務の人でも、みんなに当てはまる話だと思います。
仕事がうまくいかないとき、
「なんでこの仕事を選んだんだっけ」
「最初の頃はどんな気持ちだったかな」
と振り返ってみる。
新しいことを始めたけど行き詰まったとき、
「何が楽しくて始めたんだっけ」
と思い出してみる。
そういう小さな原点がきっとあるはずです。
昔を思い出すことは、後ろ向きなことじゃありません。
今の問題にしっかり向き合って、これからどうするかを決めるために、自分の一番大切な気持ちを確認する作業なんです。
迷ったとき、疲れたとき、情熱が薄れてきたとき。
そんなときに自分の原点に戻ることで、もう一度やる気を取り戻すことができる。
新しい視点で物事を見ることができるようになるんです。
4.中小企業の社長が教えてくれたこと
原点回帰は決して経営者だけに限った話ではありません。
仕事で壁にぶつかったときに
「そもそもなんでこの仕事を選んだのか」
「最初の頃の意気込みはどうだったか」
と振り返ること。
趣味の創作活動が行き詰まったときに
「何が楽しくてそれを始めたのか」
を思い出すこと。
日常の中にも多くの原点があります。
原点を思い出すという行為は、過去にしがみつくことではありません。
むしろ現在の課題としっかり向き合い、未来に向けてより良い決断を下すために、自分自身の最も根源的な動機から強さと明確さをくみ出すための能動的なアクションなのです。
行き詰まりを感じたときは、物事の見方や取り組み方を見直してみる。
そして、忘れかけていたやる気の火を再び燃やす。
そうすることで、自分の中にある「まだやれる」という力を再発見することができるんです。
5.あなたの「最初の気持ち」は何でしたか
あなたが今やっている仕事、大切にしている活動について、その「始まり」を思い出してみてください。
初めてその道に足を踏み入れたときの気持ち、最初に感じたワクワク感はどんなものでしたか。
そのときの気持ちや、その瞬間の情景を思い浮かべてみる。
もしかしたらそれが、あなたが今直面している課題や迷いに対して、思いがけないヒントや、もう一度踏み出すための勇気を与えてくれるかもしれません。
この社長さんが見せてくれたように、原点に戻ることで見えてくるものがあるはずです。

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