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#18|「経営者マインドを持て!」って、無理ゲー

「もっと経営者の気持ちで考えてくれよ」
工場の朝礼や飲み会の席で、つい口にしてしまう言葉ではないでしょうか。
社長としては当然の願いです。

でも、なぜか社員に響かない。
言っても言っても変わらない。
今回は、いくつもの中小企業を支援してきた中で見えてきた「なぜ伝わらないのか」という問題と、本当に社員を育てるために必要なことをお話しします。




1.「経営者目線」って、具体的に何ですか?


多くの社長が「うちの社員にも経営者目線を持ってほしい」と思っています。
私も同じです。
でも、ここに落とし穴があります。

その「経営者目線」を具体的に説明できる社長は、実はほとんどいないのです。

例えば、あなたが社員に求めているのは何でしょうか?

  • 売上を上げる意識?

  • 材料や電気代のムダをなくすコスト意識?

  • 新しいことに挑戦する姿勢?

  • うちの会社を大事に思う気持ち?

おそらく全部だと思います。
でも、それを言葉にして伝えたことはありますか?
社長の頭の中では当たり前でも、社員には伝わっていないかもしれません。

目指すゴールがはっきりしていなければ、「もっとコスト意識を持て」「会社全体のことを考えろ」と言われても、社員は「明日から具体的に何をすればいいんだ?」と困ってしまいます。


2.もっと深刻な問題─やらせてないんです


定義が曖昧なのも問題ですが、実はもっと深刻な問題があります。

仮に「経営者目線とはこういうことだ」と説明できたとしても、それを身につけさせるために社員にどんな経験をさせればいいか
ここまで考えている社長はほぼいません。

つまり、ゴールを示すだけで、そこに行くための道筋を用意していないということです。
地図も持たせずに「あの山に登ってこい」と言っているようなものです。

これは社員のやる気とか能力の問題ではありません。
教え方、育て方の仕組みに問題があるのです。
結果として、いくら「経営者目線を持て」と言っても、社員は具体的に何をしていいかわからず、お互いにイライラが溜まっていく悪循環に陥ります。


3.育て方の基本─言葉で示す+やらせる


経営者目線は、口で言うだけでは育ちません。
言葉で示すこと と、実際に経験させること、この二つがセットで初めて社員は育ちます。

まず、言葉で示す
「うちの会社で言う経営者目線とは、こういうことを知っていて、こういう見方で仕事を考えて、こういう判断ができることだ」と具体的に伝えます。これが目指すべきゴールになります。

例えば:

  • 「この部品一個いくらか、工賃いくらか、常に頭に入れて仕事する」

  • 「お客さんが困っていることを先回りして考える」

  • 「自分の工程だけじゃなく、前後の工程のことも考える」

こういう具体的な話です。

そして、実際にやらせる
ゴールを示しただけではダメです。
そこに至るまでに、どんな仕事や役割を与えて、経営者の気持ちを体で覚えてもらうか。
これを計画して実行していく必要があります。

中小企業での具体例:

  • 材料の発注を任せてみる(値段の交渉も含めて)

  • お客さんとの納期調整を一緒にやらせる

  • 月次の原価計算を見せて、利益がどう出ているか説明する

  • 新しい設備導入の検討に参加させる

  • クレーム対応に同行させる

ただ毎日同じ作業をやらせているだけでは、経営者目線は育ちません。
意図的に「経営の一部」を経験させる工夫が必要なのです。


4.なぜ「やらせる」が難しいのか


重要性はわかっても、実際にやるのは簡単ではありません。
多くの中小企業でこの部分ができていない理由は、おおむね三つです。

① どうやればいいかわからない
自分(社長)が苦労して身につけてきたことだから、どう教えればいいかわからない。
社員それぞれ性格も経験も違うから、一人ひとりに合わせた教え方が必要ですが、そこまで手が回らない。

失敗が怖い
任せるには権限も渡さないといけません。
でも失敗したらどうしよう?お客さんに迷惑をかけたら?と考えると、結局自分でやってしまう。
結果として、社員は安全な範囲の仕事だけで、本当の意味での成長につながりません。

目の前の仕事で手一杯
受注はあるし納期は迫っている。
社員を育てる余裕なんてない。
長期的な人材育成よりも、今日明日の納品が優先─これが現実です。


5.社長に問いたい─本気で考えたことがありますか?


ここで率直にお聞きします。

あなたの会社では、「経営者目線」を具体的にどう説明して、それを身につけさせるためにどんな経験をさせるか、本気で考えたことがありますか?

これは経営者目線に限った話ではありません。
「もっと責任感を持て」「自分で考えて動け」「チームワークを大切にしろ」—どんな言葉でも同じです。

抽象的な言葉を投げかけるだけでなく、具体的に何をすればいいか示して、実際にそれを体験させる。
これができて初めて、社員は育つのです。

育てることは、段取りを組むこと
人を育てるというのは、「頑張れ」「気合だ」という精神論ではありません。具体的な目標を決めて、そこに至るまでの段取りを丁寧に組む、地味だけれど大事な仕事です。

製造の段取りと同じです。
どんな工程を踏めば良い製品ができるか、工具は何を使うか、時間はどれくらいかかるか、それを考えて準備するのが段取りです。
人材育成も同じで、ゴールを決めて、そこまでのステップを組む。
気合や根性ではなく、仕組みで育てるということです。

面白いことに、この「育てる仕組みを考える」というプロセス自体が、実は社長自身の経営者目線の現れでもあります。
うちの社員をどう成長させたいのか、そのためにどんなチャンスを与えるべきか、失敗のリスクをどう管理するか、こういうことを真剣に考えて実行するのは、まさに経営そのものです。


6.おわりに


社員の目線を上げて、会社全体の力を底上げするためには、精神論や曖昧な期待だけでは足りません。
はっきりとした目標と、それを体で覚えさせるための計画的な経験、この両方が必要なのです。

あなたの会社での「経営者目線」という言葉の使い方、あるいは社員の育て方について、もう一度考えてみませんか。
この話が、そのヒントになれば嬉しいです。


✨️この記事書いた人✨️

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