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#27|「なんか違う」を信じた日─数年後、あの直感の意味が分かった

就職活動中の一次面接でのこと(大昔ですね💦)。
書類審査を通過し、期待を胸にあるオフィスへ足を踏み入れた瞬間、強烈な違和感を覚えました。

「仕事をする場になっていない」

うまく言葉にはできません。
でも、肌でそう感じました。

働いている人たちの様子、来ているお客さん、工場でいう「現場の空気」、それらが一瞬で統合されて、「ここはおかしい」という感覚として立ち上がってきました。

そのまま面接が始まると、私は開口一番、辞退を申し出ました。
面接官は淡々とした表情で「わかりました」と…

その後も集団面接だったため、終わるまで気まずい空気の中に座り続けました。
あの時間の居心地の悪さは、今でも覚えています。

数年後─その会社が民事再生法を申請したことを知り、
「やっぱりそういう会社やったんや」
と思いました。




1.職人の「勘」と同じことが、経営判断にも起きている


中小企業の社長なら、こんな経験があるはずです。

機械の音がいつもと少し違う。
ベテランの職人が「なんか今日はおかしい」と言う。
数値には出ていないのに、その日の夕方に設備が止まる。

あの面接の日に私が感じたことは、まさにこれと同じです。

私が感じ取ったシグナルは大きく3つ。
働いている人たちの様子、来ているお客さん、そして現場の空気です。

社員の表情に生気がない。
求職者と言えども、訪問者であるわたしたちに挨拶一つない。
会社のパンフレットで謳っているサービスと、実際に来ているお客さんの雰囲気がまるで合っていない。

こうした情報が一瞬で統合されて、「ここはおかしい」という感覚になりました。

職人の勘は、長年の経験が積み上げた「パターン認識」です。
「いつもと違う音」「いつもと違う手触り」
数値化できないけれど、確かに何かがずれている。
直感とはそういうものです。

非科学的なヤマ勘ではなく、これまでの経験と学習のすべてが、脳の中で超高速に処理された結果として現れます。


2.「せっかくここまで来たんだから」という罠


多くの人は「せっかくここまで来たんだから」と考えます。
交通費も時間もかけた。
今さら引き返せない。

これは経営でも同じです。
「あの設備、もう500万円つぎ込んだんだから、今さら捨てられへん」
「あの取引先、長い付き合いやから、多少おかしくても切られへん」
こういう判断ミスを、経営者なら一度は経験しているはずです。

過去に使ったお金や時間は、もう取り返せません。
大事なのは、これから先に何を失うかです。

あの面接の日、私は過去に費やした数千円・数時間よりも、もし入社した場合に失う未来を天秤にかけました。
キャリアの最初の数年間という、二度と取り戻せない時間。
精神的な余裕。
それらの大きさに比べれば、気まずさを抱えて辞退を申し出ることなど、大したコストではありませんでした。


3.会社の傾きは、ずっと前から「現場に出ている」


民事再生法の申請は、ある日突然やってくるわけではありません。
社長ならお分かりのはずです。

工場の床が油まみれで放置されている会社は、品質管理も怪しい。
休憩室がぐちゃぐちゃな会社は、段取りも悪い。
人が次々と辞めていく会社は、何か根っこに問題がある。
数字を見なくても、現場を歩けば会社の現状が見えてきます。

経営が傾いている会社も同じです。
資金繰りに追われる経営陣のプレッシャーは社内に伝わり、社員の表情を暗くします。

変化を恐れるトップがいれば、社員は挑戦を諦め、指示待ちの空気が漂います。
組織の機能不全は、必ず「現場の空気」として外に滲み出ます。

あの日私が感じ取った違和感は、単なる印象ではありませんでした。
水面下で進行していた経営の末期症状が、目に見える形で漏れ出ていたものだったと、今なら確信しています。


4.取引先を見極める「コントラスト効果」


直感を活かす上での最大の壁は、「これは本当の違和感か、それとも自分の思い込みか」の見極めです。

そこで使えるのがコントラスト効果、ざっくり言うと
「相手が言っていることと、実際に見えているものとのギャップに注目する」
という視点です。

「うちは品質第一です」と言う取引先の工場を訪問したら、材料が雑に積まれていた。
「社員を大切にしています」と言う会社を訪ねたら、誰もがうつむいて働いていた。
このギャップこそが、最も正直なシグナルです。

取引先を訪問するとき、新しい仕入れ先と会うとき、求人に来た人と面接するとき。
「言っていることと、見えているものは一致しているか」を問う習慣が、経営判断の精度を大きく引き上げます。


5.「失敗した選択」からしか得られないものもある


もしあのとき、直感を無視してその会社に入社していたら、どうなっていたでしょう。
給料の遅延、理不尽なリストラ、苦労は多かったはずです。
しかし、組織が崩壊していくプロセスを内側から体験するという、うまくいった経験からは絶対に得られない洞察もあったかもしれません。

中小企業の経営も同じです。
うまくいった仕事より、失敗した仕事の方が、深いところまで刻み込まれます。
正しい判断をすることだけが学びではありません。
どちらの道を歩いても、自分の「経験データベース」は豊かになっていきます。

あなたの周りにも、気づいていないだけで様々なシグナルが溢れているはずです。
「なんか違う」と感じたその瞬間を、どう扱うか。
そこに、経営者としての判断力の差が出ると、わたしは思っています。


✨️この記事書いた人✨️


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