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#36|ノック式のペンを使わない理由─現場を強くする「引き算」の経営

わたしはノック式のペンを使いません。
使うのはキャップ式だけ。

理由はシンプル。
部品が多くなるほど、壊れるリスクが上がる。
それだけのことです。

ノック式ペンは確かに便利です。
片手でカチッとすればすぐ書ける。
キャップをなくす心配もない。

でもその便利さは、内部のバネや引っ掛けの爪といった「見えない部品」に支えられています。
便利さを足した分だけ、壊れる箇所も増えているわけです。

キャップ式はひと手間かかる。
でも構造は単純で、壊れにくい。
インクが出なくなっても、原因はすぐわかる。
インク切れかペン先の潰れか、それだけ。




1.中小企業で起きていること


これ、中小企業の現場とまったく同じ話です。
ラインでミスが出たとき、納期が遅れたとき、多くの現場がまずやることは「何かを足す」こと。

  • チェックシートを増やす

  • 確認のハンコを増やす

  • 朝礼の項目を増やす

  • 報告書の様式を増やす

  • 作業手順書を分厚くする

ミスが出たら再発防止策を打つのは当然です。
でも5年、10年と積み重なったとき、現場はどうなっているでしょうか。

ベテランの田中さんしかわからない段取りがある。
田中さんが休んだ途端、ラインが止まる。

思い当たる節、ありませんか。


2.「ちゃんとした会社」が実は弱い


ここに、経営者が見落としやすい落とし穴があります。
ルールが増えて、手順書が分厚くなって、一見「ちゃんとした工場」に見える。
社長は「よし、整えた」と安心する。

でも現場の若いスタッフはどう感じているか。
「なんでこの確認が必要なのか意味がわからん。でも言われた通りにやるしかない。」

社長が安心しているとき、現場は疲弊している。
これが、複雑な仕組みが生む一番怖いズレです。

機械に例えるなら、外側はピカピカに見えるのに、内部のバネが劣化して今にも止まりそうな状態。
管理が強くなったように見えて、会社そのものは弱くなっています。


3.目指すのは「田中さんがいなくても回る会社」


では、どうすればいいか。
目指すべきは、仕組みを増やすことじゃなくて、仕組みを減らしても回る状態です。

田中さんがいなくても、新人の山本君でも同じように動ける。
誰が休んでもラインが止まらない。
それが本当に強い会社です。

トラブルが起きたとき、すぐ新しいルールを足す前に、一度立ち止まってください。

「これ、ほんまに複雑にしないと解決できない問題なのか?」

たとえば、ミスが頻発しているなら、チェックシートを増やす前に「そもそもなぜミスが起きるのか」を掘り下げる。
工程そのものを見直す。
作業の順番を変える。
そっちの方が根本から解決できることは多い。

強い会社になる瞬間は、新しい設備を入れたときでも、分厚いマニュアルが完成したときでもありません。
余計なものが削ぎ落とされて、「うちは何を大事にする会社か」がはっきりしたときです。


4.シンプルにするのは、実は一番難しい


シンプルな仕組みで現場を回すのは、一見楽そうに聞こえます。
でも実は、一番難しくて、一番人を信頼することを求める経営です。

手順書で縛られていれば、若いスタッフは「書いてある通りにやればいい」で済みます。
でもシンプルな現場では、一人ひとりが「なぜこの作業をするのか」を自分の頭で考えなければならない。

それは社長が現場を深く信頼するということです。
そしてその信頼に応えようとするとき、人は初めて本当の意味で育ちます。

ルールで縛らないからこそ、自分で考えるしかない。
そこから生まれる当事者意識が、会社を本当に強くします。

地味でも壊れにくいキャップ式のペンを選ぶように、経営もシンプルで壊れにくい仕組みを選びたい。

あなたの会社を見渡したとき、「田中さんしか知らない」ことがあるとしたら、まず何を減らせるか。
そこから考えてみてください。


ちなみに、わたしもパソコンやスマホの恩恵をしっかり受けています。
複雑なものを全部否定したいわけじゃありません。
ただ、複雑さには必ず壊れやすさや管理コストがついてくると思っています。

大事なのは、便利そうに見えることではなく、その複雑さに見合う価値がほんまにあるかどうかです。


✨️この記事書いた人✨️

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