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#28|技術は教えられる。でも価値観は?

まず、こんな例え話から考えてみてください

「家事は女性がやるものだ」という考え方を持っている人がいるとします。
これは正しいか間違っているかという話ではありません。
ただ、長年の経験や育った環境、周りからの影響が積み重なって染みついた価値観です。
誰かが外から「それは違う」と言ったくらいでは、まず変わらない。

一方、「家事のやり方がわからない」という人がいます。
これはスキルの問題です。
洗濯機の使い方も、料理の段取りも、教えれば身につく。

この二つ、一見似ているようで、まったく別物です。

これを工場に置き換えてみましょう。
「旋盤の使い方がわからない」
→スキルの問題→教えれば身につく
「ちょっとくらい手を抜いても、ばれなきゃいいだろう」
→価値観の問題→そう簡単には変わらない

ここを混同してしまうと、採用でとんでもない失敗をします。




1.「姿勢は変えられない」は冷たい話ではない


「人の考え方は変わらない」と言うと、少し乱暴に聞こえるかもしれません。
もちろん、いい親方との出会いや修羅場をくぐり抜けた経験で、人が変わることはあります。

ただ、経営者として考えると話は別です。
一人の社員の「仕事への姿勢」を変えようとするなら、並大抵の時間とエネルギーでは足りません。
何年もかけて、丁寧に向き合い続ける覚悟が要る。
中小企業にそこまでのゆとりがあるでしょうか。

だから「姿勢は変えられない」というのは、あきらめの言葉じゃない。
「変えようとするのは割に合わない。だったら最初から見極めよう」という、現場感覚に根ざした知恵なんです。


2.姿勢のズレは、こんなふうに会社を壊す


腕は確かだが「自分のやり方が一番」と信じて疑わない職人が入ってきたとします。
最初の1週間は、その技術力に社内も感心します。
仕事が速い、仕上がりがきれい。
「いい人を採れた」と思うかもしれない。

でも2週目から、少しずつおかしくなってきます。
自分の段取りを他の人に教えない。
若手が質問してもぶっきらぼうにあしらう。

1ヶ月後には、彼がいないと回らない仕事が増え、彼自身がボトルネックになっている。

彼は「なぜ周りは自分で考えないんだ」と不満をため、周りは「なぜ教えてくれないんだ」と不信感を募らせる。
技術が高いだけに、問題は余計に根深くなります。

技術の問題なら教えれば解決できます。
でも姿勢のズレは、指摘してもかみ合わない。


3.面接で見抜くには「昔の行動」を聞く


「あなたの仕事への姿勢は?」と面接で聞いても、本音は出てきません。
誰だってよく見せようとします。
有効なのは、過去の具体的な行動を聞くことです。

例えばこう聞いてみてください。
「前の職場で、上司の指示にどうしても納得できなかったことはありますか。そのとき、あなたはどう動きましたか」

答えに正解はありません。
「納得はできなかったけど、まず従ってみた」
「理由を聞いて、自分の考えも話した」
「黙って自分のやり方でやった」

どれが正しいかではなく、その行動の背景にある姿勢が、自分の会社の空気と合っているかどうかを見るんです。
細かい技術の話より、この一つの問いのほうがよほど多くのことを教えてくれます。


4.中小企業ほど、一人のズレが全体に響く


なぜ中小企業ほど、採用時の姿勢の見極めが重要なのか。
理由は3つあります。

1つ目は、影響力の大きさです。
100人規模の会社なら、姿勢がズレた1人がいても担当を変えたりカバーしたりできます。
でも10人以下の会社では逃げ場がない。
バケツの水に一滴墨を垂らすようなもので、水が少ないほど一瞬で全体が黒く染まります。

2つ目は、「言わなくてもわかるよね」が機能しなくなることです。
小さな会社はマニュアルが整っていない分、長年の「うちの当たり前」が現場を動かしています。
「困ってる人がいたら手を止めて助ける」
「ミスはすぐ報告する」
こういう暗黙の了解がズレると、いちいち説明が要るようになる。
仕事を前に進めるエネルギーが、内輪もめの解消だけに使われてしまいます。

3つ目は、社長の時間とエネルギーの問題です。
姿勢のズレから生まれる人間関係のトラブルは、経営者の時間を根こそぎ奪います。
採用失敗の89%はスキル不足ではなく、姿勢や価値観のミスマッチが原因だという調査報告もあるくらいです。
問題が起きてから火消しするより、採用の段階でズレを防ぐほうが、時間もお金も圧倒的に安上がりです。


5.あなたの会社の「当たり前」は、ちゃんと伝わっていますか


今の現場を思い浮かべてみてください。
「なんかかみ合わないな」と感じる場面があるとしたら、それは技術の問題ではなく、姿勢の小さなズレかもしれません。

ただ、一点だけ正直に言わせてください。
「合う人だけを採る」という考え方は効率的ですが、一方で「時間をかけて育てる」という選択肢もあります。
厳しい親方の下で鍛えられ、最初はまったく話にならなかった若者が、10年後に会社の柱になった。
そんな話は、どの会社にも一つや二つあるはずです。

合う人を探すコストと、時間をかけて育てるコスト。
どちらに投資するかは、今の会社の状況によって変わります。
あなたの会社の天秤は今、どちらに傾いていますか。
そして、それは本当に望ましい状態でしょうか。
ご自身の経験と照らし合わせながら、ゆっくり考えてみてください。


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