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#38|意志より先に、仕組みを変える

「今度こそ気をつけよう」
そう思っても、また同じことが起きる。

作業ミスが続いて、「次からはちゃんと確認しろ」と伝えた。
しばらくはよかった。
でもまた同じミスが出た。

ベテランのはずなのに、なぜか同じところでつまずく。
あるいは自分自身、スマホをちょっと見るつもりが、気づいたら何十分も経っていた。

「意志が弱いからだ」「根性が足りない」
そう片づけたくなる気持ちはわかります。
でも、本当にそれだけでしょうか。




1.スマホをあえて「つまらなく」した話


わたしはスマホのホーム画面をモノクロ(白黒)にしています。
しかもアプリは画面下のドックに数個あるだけ。
それ以外は何も置いていません。

おしゃれに見せたいわけでも、ミニマリストを気取りたいわけでもありません。
目的はただひとつ。
スマホを、なんとなく触りたくなる状態にしておかないことです。

スマホというのは最初から「触りたくなるように」作られています。
カラフルなアイコン、赤い通知マーク、次々に出てくるお知らせ、あれは全部、「ちょっと見てみようかな」という気持ちを引き出すための設計です。

あの赤い通知マークも偶然ではありません。
人間の脳は赤や鮮やかな色に対して、「何か重要なことが起きているかもしれない」と反応するようにできています。

これは大昔、熟した食べ物を見つけたり、危険な動物をいち早く察知したりするための本能です。
スマホを作っている会社は、その本能を意図的に使って、「今すぐ見ないと損をする」と感じさせているわけです。

画面の向こうには、何千人もの優秀なエンジニアや心理学者がいて、「どうすればもう一度画面を見させられるか」を毎日研究しています。
そんな仕組みに、個人の気合や根性だけで対抗しようとするのは、最初から分の悪い戦いなんです。

だからわたしは、意志で勝とうとするのをやめました。
代わりに、環境を変えることにしました。


2.「段差」を意図的につくる


ここで一つ、身近な例を考えてみてください。

工場の通路に、つい物が置かれてしまう場所はありませんか。
「ここには置くな」と何度言っても、気づいたらまた置かれている。

そういう場所には、たいてい「置きやすい理由」があります。
広さ、動線、棚との位置関係、何かしら、物が置かれやすい構造になっているのです。

逆に言えば、そこにチェーンを張るとか、ラインを引くとか、棚の位置を変えるとか、物理的に置きにくくする工夫をすれば、「置くな」と言い続けるより確実に効きます。

これは、スマホの話とまったく同じ原理です。
やってほしくない行動には「段差(抵抗)をつくる」。
やってほしい行動には「段差を取り除く」。

この考え方を、工場の段取りや職場の仕組みに使えないか、というのが今日お伝えしたいことです。


3.「気をつけろ」より「気をつけやすい流れ」をつくれ


支援の現場でよく見る光景があります。
ミスが出るたびに「次からはちゃんと確認しろ」と伝える。
張り紙を貼る。

朝礼で注意する。
それでもまた同じミスが起きる。
そのたびに「意識が足りない」「やる気がない」と本人の問題にしてしまう。

でも少し立ち止まって考えてみてください。
その作業の流れ自体が、ミスを起こしやすい構造になっていないか、ということです。

  • 確認すべきタイミングで、確認しにくい場所に書類がある

  • 次の工程に進みやすい流れになっていて、チェックをつい飛ばしてしまう

  • 集中が必要な作業の横に、すぐ話しかけられる環境がある

これは、作業者の意識や根性の問題ではありません。
ミスが起きやすい設計になっているんです。

「ちゃんとする人を増やす」より、「ちゃんとしやすい仕組みにする」。

これが持続する現場を作るための考え方です。
具体的にはこういうことです。

  • つい飛ばしてしまうチェックがあるなら、飛ばせない順番に変える

  • 後回しになりやすい報告があるなら、報告しやすい場所とタイミングを先に用意する

  • 集中が必要な作業があるなら、邪魔が入りにくい時間帯や場所を確保する

地味な工夫に見えますが、「気をつけろ」と100回言うより、はるかに効きます。


4.「不自由」が、現場を強くする


「自由にやらせる」というのは、一見よさそうに聞こえます。
でも現場において、何でも自由にできる状態は、同時に「何でもサボれる状態」でもあります。

ベテランほど、自分で自分に「不自由」を作っています。
道具を置く場所を決める。
作業の順番を変えない。
確認のタイミングをルーティン化する。

これは几帳面な性格だからではなく、そうしておいた方がミスが減ることを、経験で知っているからです。

若手や新人に「ちゃんとしろ」と言うより、そのベテランの「不自由な習慣」を仕組みとして取り込む方が、現場全体のレベルは上がります。

スマホをモノクロにするのも、同じ発想です。
我慢しているのではなく、流されにくい環境を先につくっておく
人は設計の影響を受ける生き物だから、設計を先に変えておく。
それだけのことです。


意志が弱いから工夫するのではない。
人は仕組みに引っ張られる生き物だから、先に仕組みを変える。

あなたの現場で今日から一つだけ「ちゃんとしやすい設計」を加えるとしたら、何が変えられそうですか?


✨️この記事書いた人✨️

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