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#35|残業問題は「誰が悪いか」で見るな

正しいことをしたのに、なぜかギスギスし始めた

少し想像してみてください。
これまでざっくりやってきた給与計算をきちんと整えて、タイムカードや残業代をちゃんと管理しようと決めた。
当たり前のことを当たり前にやろうとしただけです。

ところが、いざ数字を正確に出してみたら、これまで見えていなかった残業代がドカンと給与明細書に載ってきた。
「うちの連中、わざとダラダラ残って残業代を稼いでいるんじゃないか」
そんな疑いが頭をよぎった社長は、決して少なくありません。

正しいことをしたのに、職場の空気がおかしくなる。
これは中小企業でも、どこでもよく起きている話です。



1.人を疑うのは「考えるのをやめること」と同じ


なぜ、わたしたちはすぐ「あいつのせいだ」となってしまうのでしょうか。

実は、人間の頭というのは、複雑な問題の原因を「誰か一人のせい」にした瞬間に、考えるのをやめてしまう仕組みになっています。

犯人を見つければ安心できる。
社長自身が「俺のやり方に問題があったのか」と向き合わずに済む。
だから「あいつが悪い」という結論は、脳にとって楽なんです。

例えば、突然、工場の電気代が跳ね上がったとします。
その時、真っ先に「誰かがエアコンつけっぱなしにしとるんじゃないか」と怒鳴り散らしても、本当の原因が古いコンプレッサーの電力効率の劣化だったとしたら、怒鳴り続けるだけで電気代は一向に下がりません。

人を疑っている間は、本当の原因にたどり着けないのです。


2.残業の「中身」を疑え


では、人ではなく何を見ればいいか。
答えは「残業の中身」です。
残業が増える原因として、現場でよく見られるものを挙げてみます。

  • そもそも仕事の量が多すぎる

  • 作業の段取りが悪く、やり直しが多い

  • 社長や上司の指示が曖昧で、従業員が迷いながら動いている

  • 仕事の教え方、任せ方に問題がある

「段取りが悪い」「やり直しが多い」と聞くと、スタッフ個人の問題に聞こえがちです。
しかし実際は、最初に「こういう仕上がりにしてくれ」という基準を上司がきちんと伝えられていなかったことが原因のケースが非常に多い。

会社側の伝え方の問題が、現場の残業時間を増やしているわけです。
「構造の問題」が「人の問題」に見えてしまっているだけなんです。


3.「残業申請」を、現場改善のきっかけに変える


具体的な手を打つとすれば、「残業の事前申請制」が有効です。
ただし、ただ紙に書いてハンコを押すだけでは意味がありません。

大事なのは、「何の作業を、何時間でやるか」を言葉にしてから始めるという習慣をつけることです。

たとえば「A社の部品の仕上げ確認のため、2時間残ります」という申請が出たとします。
上司が「あの作業なら1時間で終わるはずだ」と感じたとき、これまでなら「あいつは仕事が遅い」と心の中で思って終わりでした。

しかし事前申請があれば、その疑問を「なぜお前は遅いんだ」という責め方ではなく、「どこで時間を食っているのか、一緒に見てみよう」という話し合いのきっかけに変えることができます。

実際に話を聞いてみると、「検査の数値を台帳に手書きで転記するのに毎回40分かかっている」といった、個人の努力ではどうにもならない現場の無駄が見つかることがあります。

コストを抑えるために始めたルールが、現場の問題点を洗い出す道具に変わるんです。


4.まじめに働く従業員を守ることにもなる


この仕組みが一番助かるのは、毎日きちんと働いているスタッフです。

必死に手を動かしているのに「残業代目当てじゃないか」という空気を出され続けたら、どんなに優秀なスタッフでも気持ちが折れます。

「真面目にやるだけ損だ」と感じ始めたら、最悪の場合、静かに辞めていきます。
優秀なスタッフが辞めるのは、中小企業にとって本当に痛い損失です。

一方、「何の作業にどれだけ時間がかかるか」を言葉にする習慣があれば、「この仕事にはこれだけの時間がかかる、ちゃんとした理由がある」ということを、データとして示せるようになります。
まじめなスタッフを、根拠のない疑いから守る盾になるのです。

また、夕方になると急にのそのそ動き出す「ずるい人」への抑止力にもなります。
何をするかを具体的に申請しなければならないので、中身のないダラダラ残業は申請のしようがない。
申請内容と実際の作業がかみ合わなければ、具体的な指導ができる。

精神論でも監視でもなく、仕組みで公平さをつくることができるわけです。


5.「誰が悪いか」より「どこが詰まっているか」


残業問題に向き合う時、問うべきことはシンプルです。

「誰が悪いか」ではなく、「どこが詰まっているか」。

従業員の根性や性格を裁く裁判官になるのではなく、現場の流れの中にある邪魔なものを取り除く「改善担当」になる。
電気代が上がったときにまず電力会社に電話して機器の状態を確認するように、残業が増えたときもまず現場の流れを確認することです。

もし部下を持つ立場なら、スタッフが遅くまで残っているのを見たとき、ぜひこう聞いてみてください。
「なんでまだおるんだ」ではなく、「どこで引っかかってる?俺に取り除けるものはあるか?」と。

その一言が変わるだけで、現場の空気は必ず変わっていきます。


✨️この記事書いた人✨️

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