5万円の決裁まで社長に集まる会社が成長できない理由
「5万円なので、社長の承認をお願いします。」
こんなやり取りが、毎日のように繰り返される会社があります。
備品の購入。
広告費の利用。
小さな値引き。
金額はそれほど大きくないのに、最後は必ず社長の承認が必要になる。
No.2や幹部の立場なら、「このくらい現場で決められないのか。」と感じたことがあるのではないでしょうか。
もし社員の判断力が原因なら、人を入れ替えれば解決するはずです。
教育を増やせば、自分で決裁できるようになるはずです。それでも実際には、経験を積んでも、役職が上がっても、小さな決裁は社長へ集まり続けます。
私は400社以上の組織と向き合ってきましたが、この現象にも共通点があります。
それは、「小さな決裁でも社長へ集める組織」ができあがっていることです。
問題は5万円ではない。「最後の承認」が社長になっている
「金額が小さいから問題ない。」
そう考える会社もあります。しかし、本当の問題は金額ではありません。
5万円の決裁が1件あることではなく、それが何十件、何百件と社長へ集まることです。
一つひとつは数分で終わる仕事でも、その積み重ねが社長の時間を奪います。現場もNo.2も、「社長の承認待ち。」という状態になります。
つまり、会社の成長を止めているのは意思決定が一人に集中する仕組みなのです。
社員は責任を避けているのではない。「承認を取ること」が仕事になっている
社員は責任から逃げているわけではありません。
自分で判断したいと思っています。それでも承認を求めるのは、その方が安全だからです。
勝手に決めると修正される。
あとから、「なんで承認を取らなかった?」と言われる。
一方で承認を取れば、「確認してくれて助かった。」と言われる。
この経験を繰り返せば、人は自然に学習します。
迷ったら承認を取る。
自分では決めない。
その方が正しい、と。
つまり、社員は判断力を失ったのではありません。組織の中で、「承認を取ること」が最も正しい行動だと学習しているのです。
だから、小口決裁が集まる原因は、人ではなく組織が生み出した行動パターンなのです。
No.2も「決裁する人」ではなく「承認フローの一部」になってしまう
この状態で苦しくなるのは、No.2です。
現場から決裁依頼が来る。
自分でも判断できそうな内容なのに、「一応、社長へ確認します。」となる。
本来、No.2は意思決定を分散させる立場です。しかし、小さな決裁まで社長へ上げ続けることで、自分自身も承認フローの一部になってしまいます。
その結果、現場はNo.2ではなく、その先にいる社長を見て仕事をするようになります。
だから、役職が上がっても、経験を積んでも、No.2としての影響力は育ちません。
問題はNo.2の能力ではありません。
意思決定を分散できる仕組みになっていないことです。
優秀な経営者ほど、小さな決裁まで抱え込んでしまう
優秀な経営者ほど、判断が早い。
小さな決裁でも、その場ですぐ答えを出せます。
だから現場も助かります。会社もスムーズに動きます。しかし、その積み重ねによって、「小さいことでも社長に聞こう。」という文化が少しずつ出来上がります。
No.2も幹部も、自分で決裁するより承認を求めることを優先するようになります。経営者は責任を果たしているつもりでも、現場は「最後は社長が決める会社」だと学習しているのです。
小口決裁が集まる原因は、意思決定が一人へ集中する組織になっていることです。
だから、どれだけ社長が頑張っても、組織の構造が変わらない限り、この状態は繰り返されます。
最後に
5万円の決裁まで社長に集まるのは、「小さな決裁でも社長へ集めることが正解になる組織」が出来上がった結果として生まれる、組織の問題です。
だから、人を育てる前に、小さな決裁を現場で完結できる仕組みになっているかを見直す必要があります。
もし、
「小さな決裁まで社長へ集まっている。」
そう感じたなら、その違和感は間違っていません。
組織は、人ではなく構造で動いています。
■メンバーシップ「No.2経営ラボ」

この記事では、「小口決裁」という一つの組織のバグを取り上げました。しかし実際には、この問題も単独では起きません。
権限委譲、承認フロー、会議設計、幹部育成、評価制度。一見すると別々の課題ですが、実はすべて意思決定の仕組みでつながっています。
メンバーシップ「No.2経営ラボ」では、「組織のバグ」を一つずつ分解しながら、No.2が組織全体をどう見立て、どの順番で改善していくのかという判断軸をお伝えしています。
小さな決裁を集めるNo.2ではなく、組織を前に進めるNo.2になるために。
▼二宮誠悟プロフィール
現役取締役。400社以上の組織と向き合い、組織を構造から読み解く。
▼No.2経営支援サービス
組織課題を可視化し、意思決定・権限設計・実行プロセスを再構築する。
▼組織のバグ100本Q&A(有料記事)
組織のバグを言語化し、組織を動かす判断軸を体系化する。
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