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トロンボーンの魅力|後編|自分で演奏する場合

トロンボーン(Tb)と20年ほど共に過ごしてきた私。Tbの魅力って何だろう。高校でTb四重奏にはまり、OBの先輩との交流の影響もあって大学や社会人になっても自然とTbを続けていた。Tbの魅力を自分が演奏する場合で考えてみた。

1.ハーモニーが美しい

ドミソの和音がピアノ(平均律の楽器)では実はちょっとずれている(合ってない)、というのは有名な話。ドに対して、ソはちょっと高めに、ミは割と低めに音程を調整して、ついでにミは音量も控えめにすると、美しい和音(純正調)になる。Tbはそれが得意なのだ。なんたってスライドで音程は自由自在なので。

管の曲がりを利用して丸い音になっているホルンやユーフォニウムとは違い、マウスピースから出る音の質がそのまま楽器の音として出てしまうトロンボーンやトランペット。楽器は音を修正してくれない。
その代わり、音色の幅は広いと思う。Tbはトランペットよりマウスピースが大きく管が太いぶん、柔らかく温かい音も実は得意で、ビーンと金属の硬い音からポーというふんわりほわっとしたお布団みたいな音が出せる。

Tbはオケでも吹奏楽でもだいたい3本、たまに4本なので、しっとりした場面ではTbパートでお布団のほわっと和音を作っていることが多い。
この、お布団みたいな音で作るハーモニーが純正調でバチっと決まったときは、鳥肌もので気持ちいい。真剣な顔で吹きながら、心の中では「うおっ決まってるー!!」とたぶん叫んでる。

たぶん私が演奏していて本当に好きな瞬間を選ぶとしたら、これだと思う。音の中で自分と全体の境目が無くなったような、音に包まれているような、自分が音に溶けてしまったような、そういう場面。幸福感が内側から湧いてくる。文字にするとヤバい人みたいになってきました。

ただ、これを合奏で瞬時に決めるのはとても大変。ドミソのミの音程を決めるには、ドとソがぴったり合った時に高音でかすかに聴こえるミの音に合わせなければならない。ドとソがあってないと、ミは永遠に合わないし。吹き始めから合えば一番いいけど。周りと自分の音を聴いて、低くするか、高くとるか。判断力と瞬発力が求められるといえよう。

これもまた有名な話ですが、Tbの2ndパートはドミソの和音のミ(割と低めな音程)を担当することが多くて、髪が薄くなるという都市伝説がある。3rd(主にド)と1st(主にソ)に挟まれて、いつも音程に気を遣うから。真偽はともかくミの音は気を遣うし難しい。それだけに、決まると快感なのよ。

2.場を支配できる

Tbはベルが前向きで音が飛びやすい(遠くまで音が届きやすい)のに、ステージ上ではたいていひな壇の上の席で、さらに音が飛びやすい。練習では段差がなくて、ステージリハでひな壇の上になった場合などは「Tbうるさい!」と言われるのはよくある。普段の通り吹いただけなのに…。

それだけに、Tbパート全員で一斉にフォルテの音を奏でると一気に空気が変わる。完全にTbの独壇場。これも気持ちいい。

Tbは1本でもオケ全体の音に負けずに曲の色を決定できるくらい(プロコフィエフの『ロミオとジュリエット モンタギュー家とキャピレット家』のバスTbとか)だから、パートが一丸となったときの破壊力は楽器の中でも一番なのでは。

きっと、細かい音符がいっぱいの黒々とした楽譜を前の方で一生懸命吹いているクラリネットは、何人もいるのに、たった3人のTbの音にかき消されてしまって、内心「くそう」と思ってるんだろうなあ。そう思いながら後ろから気持ちよくTbを吹いていた。

Tbはスライドという特性上、動きがにぶい。だから細かい音符の楽譜はあまりない。要するにほとんどの場合、楽譜が簡単。
ステージ上ではちょっと高いところに座らせてもらい、前に向いたベルのおかげですんなり客席に音が届いてノンストレス。まあ「音がでかすぎ!」と言われ続けるのは、ちょっとフラストレーションがたまるかもしれないけど。

そんなTbと付き合ったおかげで、この私が形成されたんだろうなあ。




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