【雲間月怪異譚】 第11話
【雲間月怪異譚】第11話 注文の多いネイルサロン編①
※注意※
イラストは、AIが生成しています。
本作『雲間月怪異譚』には、
怪異・都市伝説・因習・和風ホラー表現が含まれます。
薄暗い話や、
“じわりと嫌な感じ”のする話が苦手な方は、
どうか無理をなさらず回れ右でお願いします。
それでも覗いてくださる方は――
どうぞ、雲間の怪異譚へ。
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「三日月先生、最近調子はいかがですか?」
ここは、都内の某スタジオ。
スタジオといってもYouTuber向けの
撮影スタジオって感じだ。
勿論、動画撮影もOKな防音装置ガチのスタジオです。
怪談師は、今や人気タイトルなので
個室もそれようなのが常時用意してあります。
そこで本日は定期的の動画撮影でした。
ゲストが今声をかけてくれた女性の怪談師
『白石 花音』である。
アイドル系YouTuber怪談師で、人気急上昇中
そんな彼女が撮影終了後に話しかけてきた。
「おや、今日はスケジュール大丈夫なの?
いつも駆け足で次〜って行くからさ」
「やだなぁもう、そんな風に見てたんですか?」
「そんな風って、忙しいって偉い事だよ」
人気アイドルとは距離感難しい。
どこで噂になるか、写真を撮られるかって
いやいや、そんなレベルな人気じゃないんですけどね〜
想像力で自虐しちまった。
「三日月先生?」
「あ、嫌。若いアイドルな子が僕なんかに話しかけて〜って考えちゃったのよ」
にかって笑うと向こうも笑顔を向けてくれた。
おしゃれに手を抜かない子は、どんな仕草も可愛いねぇ
「三日月先生…あの、実は聞いて欲しい話がありまして、
今日はスケジュール空けてきたんですよ」
「聞いて欲しい事?」
公式にも僕は霊感ありませんって言ってあるので
その系統の相談は少ない。だけど?
「僕に聞かせたい事?」
うんっと頷いた。
「ああっと、ここは時間制限あるから場所変えようか。
どうする?遠くても良いならうち?っていう所だけど
おすすめがあればどこでも行くよ」
普通に自宅来る?なんていきなり言ったら引く所だけど
改めて言っても人気急上昇中のアイドル系な子だから
迂闊な所は、言えないのである。
「先生のお宅って同居人の方もいらっしゃるって聞いてます。
遠くても構わないのでお邪魔していいですか?」
「同居人の噂も聞いてる上での話なんだね?」
「はい。その関係の相談なんです」
わかったと言って、僕の車で自宅まで行くことになった。
⸻
「おかえり」
家に戻ると、カウンターバー兼流しにいる
クロウがそう声をかけてきた。
僕の後ろにいる女性を見て、怪訝な表情を浮かべる。
「お客様?事前に連絡してよ」
「悪い。連れてきちゃった」
「初めまして。白石 花音って言います。
今日は、三日月先生にご無理を言って…」
「ご無理?保の怪談センサーが呼んだんでしょ?」
「怪談センサー?」
クロウがため息をついて言った。
「保ってさ、霊感レベル低いくせに、呼ぶのよ。
特に厄介な奴をね」
白石 花音は、ああ…って顔してる。
いや、僕は怪談収集してるけど、ホイホイじゃ…
ん?ホイホイは、便利か?
「便利な機能じゃありません!迷惑な機能です」
クロウが保の考えてる事を察したのかそんな事を言った。
「まあ、兎に角座って。お茶?コーヒー?」
「あ、コーヒーで。ブラックでお願いします」
アイドルのイメージって甘〜いイメージだったけど、
この子はビターで行くみたいね。
⸻
それぞれがコーヒーを飲み、白石さんが話出した。
「実は、これにまつわる話なんです」
言って、彼女が両手を伏せた状態で見せてきた。
両手の爪が綺麗に整っている。
だが、装飾はされていない。
「あれ?綺麗にしてるけど、今時はネイルアートって言うんだっけ?それともネイルチップかな?いつもはしてるよね?」
「はい。そうなんです。他の子達と競い合うように
デザインを自慢しあっていました」
手を引っ込め、自分でも爪を見る。
「洋服にスタイリストさんがいるように、爪にも
ネイリストさんがいたんです」
「お店契約じゃなくて、個人のネイリストさんって事で良いのかな?」
クロウが聞いた。
「はい。私のスタイリストしている方からの
紹介でお願いした人なんです」
最初は、デザインの冊子で経歴がわりに勧められた。
デザインは、十分に満足のいくレベルと判断して
お願いしたのだが、そこからがおかしいと
「ネイリストさんの自宅兼ショップは、
個人で行なっているのですが、行くと
マッサージ、洗浄、ケアまでは納得しているのですが、
爪の状態で難癖がつくんです」
「難癖?」保は聞いた。
「普段の生活、仕事、プライベートな事に踏み込んで
聞いてくるんです。そこから、食事や就寝などの
指示が始まって…いっこうに作業に入らない。
いや、今日はやめておきましょうって終わる事もしばしばで」
「でも、体調って爪に出るっていうよね?
実際に白石さんの爪綺麗だし?」
「それです。綺麗になったら、ネイルするものでしょう?」
「そうだよね。するものだよね?」
ちょっと圧が強くなってきたって
クロウに目配せした。彼は彼で話を真剣に聞いていた。
こっちも
勿論、向こうも——
「ただのネイルの話じゃない」
白石花音が、ぽつりと続けた。
その一言で、部屋の空気がわずかに変わる。
クロウがコーヒーを置く音だけが、やけに響いた。
「どういう意味?」
保が聞くと、白石は一瞬だけ言葉を選ぶように視線を落とした。
「“ケア”って言われるんです」
「ケア?」
「はい。最初は普通の施術なんです。でも途中から、必ず言われるんです。爪だけじゃなくて、生活全体を整えないと意味がないって」
クロウの目が細くなる。
「それ、どこまで踏み込まれるの?」
白石は、少しだけ息を吸った。
「最終的には、“あなたの状態は爪に出ているから、私の管理下に置いた方がいい”って」
沈黙。
保は、コーヒーを一口飲もうとして止めた。
「……管理下?」
「はい。最初は冗談だと思ってました。でも、断るとネイルの予約が全部消えるんです。次の日には、何事もなかったみたいに連絡が来て、“今日はまだ整ってないですね”って」
クロウが小さく舌打ちする。
「それ、もう客商売じゃないね」
「でも、技術は本物なんです」
白石はそこで初めて、少しだけ迷うような顔をした。
「だから余計に、切れないんです」
保は、そこでようやく気づく。
これ、ただの“変な人”の話じゃない。
“依存”が作られている。
しかも——かなり丁寧に。
クロウが低く言った。
「保、これたぶん“選別型”だよ」
「選別?」
「整えるふりして、相手の生活に入り込むやつ」
白石の指先が、わずかに震えた。
「……やっぱり、そうなんでしょうか」
その瞬間だった。
カウンターの奥で、クロウの湯呑みが“カタン”と鳴った。
誰も触れていないのに。
保の背中に、嫌な感覚が走る。
“見られている”というより——
“評価されている”。
まるで、爪先から順に。
「そこから、僕に相談って流れはどうして?」
本題に入ろうよって僕は言った。
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