【第5章】 第116話

【第5章】第116話 揺らぐ境界線


王都外縁区。

旧搬入区画から戻ったリオとヴィクトルは、そこで足を止めた。

夜明けはもう近い。

だが、王都の空気はまだ完全には明るさを取り戻していない。

「……ここまでだ」

リオが静かに言う。

ヴィクトルは振り返る。

「これで終わりか」

「終わりじゃない」

リオは首を振る。

「ただ、お前がこれ以上“あの層”に踏み込むのは危険だってだけだ」

ヴィクトルは短く息を吐く。

反論はない。

すでに見たものが、それを許さなかった。

「分かった」

それだけ言って頷く。

リオもそれ以上は言わない。

二人は別方向へと歩き出す。

王都の奥へ戻る者と、外へ向かう者。

――

一方その頃

ボルボロ。

それは王都からさらに外れた場所にある。

荒野とオアシス、そして砂漠の入り口が交わる境界の地。

乾いた風と湿った水の気配が、わずかな均衡を保ちながら共存している場所だった。

真琴はその境界の道を歩いていた。

「……ここに来ると、空気が違うね」

乾いた風。

遠くに見える砂の気配。

そして、オアシス特有のわずかな湿り。

そのどちらにも完全には属さない場所。

それがボルボロだった。

ボルボロの外れには、砂漠へ続く荒野が広がっている。

風が地面を削り、岩が露出した地帯。

その先に、ゆっくりと砂の海が始まる。

真琴は立ち止まる。

「リオたち、まだ戻ってないよね……」

風が頬をかすめる。

そのときだった。

ボルボロと荒野の境界線。

砂と土が切り替わるその“境目”で、空気が一瞬だけ歪む。

ほんのわずか。

しかし確かに。

真琴は目を細める。

真琴は違和感を覚えた。
だが、それが何なのかは分からない。

ほんの一瞬だけ。

世界の境界線が重なったような違和感。

「……今の?」

振り返っても、そこにはただの境界しかない。

乾いた土地と、これから砂に変わる土地。

いつも通りの風景。

だが、その“切り替わりの瞬間だけ”がわずかにズレていた。

まるで、世界の層が一瞬だけ重なったような感覚。

真琴は小さく息を吐く。

「……気のせい、かな」

すぐに風が戻る。

砂はただの砂としてそこにある。

荒野もまた、いつもの荒野に戻る。

ボルボロは何も変わっていない。

ただ、その境界だけが――ほんの一瞬だけ、別の何かに触れたように揺れていた。

ボルボロはいつも通り、荒野とオアシスと砂漠の入り口として静かにそこにある。

しかしその奥で、誰にも気づかれないまま。

遠くの“異なる層”の余波だけが、わずかに届いていた。



レオンハルトが馬車の馬に水を飲ませている。

「ここからどうするんだ?」

勿論、古代遺跡に進みはする。

だが、ひとり会っておきたい人物がいた。

領主の娘『エイレシア』齢12歳

レオンハルトに馬車と荷物の見張りを頼み、

真琴たちは領主館へ向かった。



「お久しぶりです〜〜」

飛びかからん勢いで応接室走り込んできた少女

「元気でしたか?」

フィオナも真琴も笑顔で応対する。
アリアは、初めてなので軽く会釈。

「あの、リオ様は?」

「ああ、リオは王都で仕事中」

と返事を聞いて、見るからに肩を落として落胆した。

「そうですか、残念です…」

「あ、あのね今回は、エイレシアに頼みがあって来たのよ」

「真琴様が私に頼みですか?」

「そう。また古代遺跡に潜るにあたって、あの遺跡の前の
サンドワームが厄介なのよ。だから、砂漠案内役を借りれたらと思って」

「まあ、そう言うことでしたのね!水臭いですわ」

そう言って、エイレシアは、砂漠のことでしたら我が家の右な出るものはおりません。無事に古代遺跡までの往復承りましょう。

エイレシアの手配は早かった。領主の手際と言うべきだろうか。

馬車を改めて領主館に預けて、それから砂漠横断のためのキャラバンが組まれる。

「サンドワームは、まともに相手すれば厄介なモンスターですが」

(はあ。厄介でした。倒すのにヴィクトル倒れそうでした)
真琴がそんな事を考えていたが、倒れそうなほどに魔力威力を上げたのは他ならない真琴だ。

「あの生物は、ちゃんと攻略法があるんですよ」

「ほえ?」っとフィオナが呆けているうちに
真琴たちは一行は、古代遺跡前まで辿り着いていた。

「なっ、なっ、なんですとーーー⁉︎」

サンドワームは、砂の中に潜むミミズ。捕食は確かに生き物ではあるが目が退化している分、音に敏感なのだそうだ。

ボルボロの街では、砂漠越え(サンドワーム対策)として
砂の上を突き進むロケット花火のような爆竹が特産品として販売している。
これをサンドワームの居そうなところで使用する。

音を立て、砂の上を走るロケット花火。
サンドワームは、それを追いかけていく。
キャラバンは、その隙に砂漠を越えるのである。

「ボルボロの街が何故発展した街だと思ったのですか?サンドワームが脅威でしたらとっくに旅人は他所に流れて寂れた街になってますわよ?」

キャラバンについて来たエイレシアはそう言った。

「ハハハこんな簡単に…俺たちの苦労は?」
レオンハルトは、かつての苦労に思いを馳せた(合唱)

「まあ、怪我もなく古代遺跡に来たんだ。良しとしよう」
アリアさんの慰めに、レオンハルトは顔を上げた。

「古代遺跡は、私たちだけで入ります。ここで待っていてくださいますか?」

「はい。ここでキャラバン・キャンプをしてお待ちしています。
ご無事をお祈りしてますわ」

エイレシアは、黒魔法の使い手である。同行してもらえれば心強いとは思うが、12歳の領主の娘、やはり躊躇らわれた。

「さあーて!蜘蛛ちゃんズ出番だよぉ」
気を取り直して、古代遺跡に入る。

今回のメンバーは、真琴に蜘蛛ちゃんズ、
フィオナにアリア、レオンハルトだ。斥候を蜘蛛ちゃんズに任せて遺跡へと入ったのである。

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