【幕間】 静かに揺れるもの②
【幕間】 静かに揺れるもの②
「ねえ、リオ。確認したいことがあるの」
食事を終え、一同がそれぞれの部屋へ引き上げた後。
真琴は、ずっと引っかかっていた疑問を口にした。
「何だい、真琴?」
リオはカップを傾ける。
ブラックコーヒー……に似た、豆茶だ。
「ドワーフ製の通信機と地図板って——嘘よね?」
「え?」
一瞬の間。
「何を言ってるのかな?」
「誤魔化さないで」
真琴はじっと睨む。
「ここまで使ってきて分かったわ。あれ、元の世界の技術に寄りすぎてる」
「ドワーフ製じゃない」
一歩、踏み込む。
「——オルフェウス製よね?」
「嫌だなあ……何のことやら」
明らかな動揺。
「正直に言いなさい」
間髪入れずに畳みかける。
「じゃないと、協力拒否するわよ?」
リオは言葉に詰まる。
視線が泳ぎ、誤魔化しを探す——が。
やがて観念したように、両手を上げた。
「……参ったなぁ」
「叶わないな、真琴には」
「当然でしょ」
真琴は腕を組む。
「フィオナもクラリスも、ヴィクトルもレオンハルトも」
「これ以上危険があるなら、知る権利はある」
「……怒らない?」
「は?」
「怒らないって約束してよ」
「約束?」
真琴の目が、さらに細くなる。
「いいから、言って!」
リオが珍しく食い下がる。
「……わかった」
真琴はため息をついた。
「話しなさい」
⸻
「最初に言ったよね。水晶竜は最後の竜だって」
「……言ったような気がするわね」
「あれも——僕の力だよ」
真琴のこめかみが、ピクリと動く。
リオ——いや、オルフェウスは一度息を吐いた。
「水晶竜とはね、古い付き合いでさ」
「静かに過ごしたいって言うから、場所を用意したんだ」
「それが古代遺跡?」
「正確には——その最深部」
「そこに“ゲート”がある」
「……隠すためね?」
「そうそう」
リオは苦笑する。
「で、ここからが問題なんだけど」
真琴の眉が、ゆっくりと上がる。
「水晶竜の能力がさ——幻竜だったんだよ」
「それが?」
一拍。
「……影響が出ちゃって」
リオは視線を逸らした。
「遺跡の中が——大迷宮に」
「ただの構造じゃない」
「空間そのものが、歪んでる」
「はあーー?」
真琴の声が響く。
「しかもさぁ」
リオは、気まずそうに続けた。
「本人、気持ちよくなって——爆睡しちゃってて」
「迷宮、解除できなくてさ」
「……ハハハ」
⸻
「……ハハハ、じゃないでしょ」
真琴の声が、低く落ちた。
リオの笑いが止まる。
「え?」
「その迷宮」
一歩、距離を詰める。
「——あんたが責任持って案内しなさい」
「……はい?」
「解除できないなら、最短ルートで導けるでしょ?」
「いや、それは——」
「できるわよね?」
圧。
「……できます」
リオは観念した。
⸻
「あともう一つ」
真琴がにっこり笑う。
嫌な予感しかしない。
「構造、全部説明して」
「え?」
「仕様書で」
「は?」
「元テクニカルライターなめないで?」
リオの顔が固まる。
⸻
「リオ?」
背後から、柔らかな声。
いつの間にか、フィオナが立っていた。
「後で少し、お話しましょうか?」
「……はい」
即答だった。
⸻
「迷宮?」
横からレオンハルトが顔を出す。
「面白そうじゃん」
「やめろ」
リオが即座に遮る。
「絶対お前、余計なことする」
「えー?」
⸻
真琴は、ため息をついた。
「……まあいいわ」
「その話は、砂漠を抜けてからにしましょう」
リオが、わずかに安堵の表情を浮かべる。
——が。
「逃げられると思わないことね」
その一言で、顔が引きつった。
——その迷宮の奥で、何かが待っているとも知らずに。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
本日は幕間を2話更新しました。
少し息抜きの回でしたが——
次回からは、砂漠編に突入します。
穏やかなまま、進めばいいのですが……。
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