【第2章】 第45話

【第2章】第45話 干渉不能領域

皇后陛下寝室。

言葉にするまでもない。

まるで——超大型台風の“中心”に立っているようだった。

空気が、押し潰してくる。

重いのではない。

“密度”が違う。

身体の輪郭が、じわりと歪む。

立っているだけで、削られていく感覚。

「……っ」

クラリスが、わずかに息を詰めた。

「皇后——鏡の前にいます」

視線を動かさず、読む。

「位置は固定。ですが——」

一拍。

「周囲の構造が、常に変動しています」

床が、揺れる。

いや——揺れているのは認識だ。

「……ここ」

真琴の声は——もう、遠かった。

既に一歩、踏み込んでいる。

その輪郭が、わずかに“沈んでいる”。

「真琴、戻れ」

リオが、低く言う。

返事はない。

ただ——

「……なるほどね」

小さな呟き。

理解した者の声。

その瞬間。

空間が、一段深く歪んだ。

真琴の姿が——

さらに沈む。

「……!」

クラリスが、息を呑む。

「クラリス」

リオが、短く呼んだ。

「君は、ここまでだ」

その声に、迷いはない。

「ここから先は——」

一拍。

「僕と真琴の戦場だ」

クラリスは、唇を噛む。

(そんな私も——)

言いかけて、止まる。

視線の先。

真琴は、もう“向こう側”にいる。

足場も、距離も、意味を持たない場所。

自分には——届かない。

ゆっくりと、息を吐く。

「……承知しました」

顔を上げる。

「真琴を——お願いします」

その言葉に、頭を下げた。

「にゃー」

足元で、シャドームーンが鳴いた。

「何でお前が返事してるんだよ!」

思わずリオがツッコむ。

だが、その口元はわずかに歪んでいた。

一拍。

「……行く」

短く告げる。

次の瞬間——

リオの姿が、空間に溶けた。

落ちるのではない。

“接続へ飛び込む”

その消失を、クラリスはただ見送る。



部屋は、再び静寂に包まれた。

だが——

静かなだけではない。

そこにあるのは、

“侵入を拒む構造”

クラリスは、ゆっくりと一歩下がる。

「……読める」

小さく、呟く。

「ですが——」

視線は、歪んだ空間の奥へ。

「これは、“読むだけでは届かない”」

手を伸ばすこともなく。

ただ、確信する。

「観測と干渉が、分離されています」

一拍。

「……厄介ですね」

だが、その目は——

逸らしていなかった。



軽すぎる?――いや、方向は合ってる。
ただ今のままだと**“緊張 → コメディ → 緊張”の切り替えが急すぎて、没入が一瞬切れる**のは確か。

だからやるべきはこれ👇
👉 軽さは残す。でも“空間のヤバさを下げない”

つまり

* 真琴の軽口=OK
* でも空間の危険は常に上に乗せ続ける



✨ブラッシュアップ版(後半だけ調整)

※流れはそのまま、トーンだけ整えてる





「はぁ……酸素ボンベが欲しいわ」

真琴は、沈みかけた身体を無理やり引き起こした。

同じ部屋。

だが——ここは、もう別物だ。

視界のあちこちに、バグ表示が浮かぶ。

完全じゃない。

むしろ——

「……多すぎ」

処理が、追いつかない。

「真琴!大丈夫か?」

リオの声だけが届く。

「大丈夫って言えない大丈夫ね」

軽く返す。

だが、息は浅い。

「……声届いてるだけマシか」

その瞬間。

「にゃー」

「えっ?」

真琴が目を見開く。

「シャドームーンまで来たの?」

「やる気に満ちた猫だぞ。コイツは」

リオの声が、少し近づいた。

「ハハ……寝室でダラけてるだけでいいのに」

「怠惰に飽きたんだろ」

一拍。

「……お前と同じでな」

「失礼な」

軽口を返す。

だが——

視線は、ずっと前を向いたまま。

空間の歪みは、止まらない。

「オルフェウスの作る異空間に近い?」

ふと、思い出す。

あの“世界の外側”。

「あれは、僕の世界だ」

リオの声が、少しだけ鋭くなる。

「こんな歪んだ構造と一緒にするな」

その瞬間——

バグ表示の一部が、弾けた。

「ちょっ……!」

「距離測っただけだ」

「馬鹿リオ!」

真琴が、即座に読み取る。

消えたログ。

残ったログ。

「ここ、人が囚われてるんだからね!」

「分かってる」

短い返答。

だが——

その裏で、空間が揺れた。

「……今の、触ったでしょ」

「今更だ」

リオの声が、冷たくなる。

「裏で糸引いて、娘を動かして、最後に回収」

一拍。

「陳腐なやり口だ」

その言葉に——

空間の密度が、わずかに上がる。

「父親なの⁈」

思わず声が漏れる。

「神殿の奴は知らん」

リオは、淡々と続ける。

「だが、この街とここは——同じ系統だ」

一拍。

「ルナミナの姉が触ってる」

「セラフィナだ。…僕の調査能力を舐めるな」

再び、バグが削られる。

真琴は、舌打ちしながら選別する。

「やめて、必要なの消さないで!」

「全部は消してない」

一拍。

「“繋ぎ”だけだ」

その時——

空間が、わずかに収束する。

そして。

リオの姿が、隣に現れた。

「……やっと来た」

「遅い」

「そっちが勝手に沈んだんでしょ」

軽く言い合う。

だが——

互いの視線は、同じ場所を見ている。

「セルディンは?」

真琴が問う。

「ただの中継だ」

リオは即答した。

「皇后への“繋ぎ”を作っただけ」

一拍。

「本体じゃない」

「そっか」

小さく頷く。

「じゃあここは——」

視線が、定まる。

「救出ミッションね」

「勇者ごっこか?」

リオが皮肉る。

だが——

真琴は、即答した。

「嫌いよ。そんな面倒な事は、他所でやってって思う」

一拍。

「でも、虐待親父はもっと大嫌い」

その口元が、わずかに歪む。

「助けてから説教コースね」

空気が、変わる。

「……で?」

リオが問う。

「プランは?」

真琴は、ゆっくりと息を吐いた。

「もう入ってる」

一拍。

「プランB」

視線が、完全に“構造”へ向く。

「引き込まれた時点で——開始済み」

リオが、わずかに笑った。

「いいね」

「攻めるぞ」

「当然」

真琴の口元が、上がる。

「ここから——私のターン」

追い詰められるのは、慣れている。

だからこそ。

「デバッグしてみせます」

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