【第6章】 第132話

【第6章】第132話 それぞれの出発

シュバルツ邸前

馬車が2台止まっている。
一台は、長距離用のシュバルツ家の馬車。

もう一台は、王家の第一王子用の馬車だった。

「駄目だ!」

「却下!」

「困ると言ってるのです!」

「却下だ。同行する!」

館の入り口で、ヴィクトルとクラリスそれにアレクシス王子が口論している。

「何あれ?」真琴が執事のアスターに聞いた。

「アレクシス王子が同行すると言って聞かないのです」

「王子が同行って言ったら、護衛騎士に従者ついてくるだろう?」

レオンハルトとフィオナにルードヴィッヒは、すでに準備して待っている。レオンハルトは、今回も馬車の御者も兼ねてくれる。

「僕たちの馬車の乗車人数は、4人だよ?僕とフィオナに真琴にクラリスが乗ればいっぱい。その王子様の馬車使えばいいじゃない?」

リオが当然のように言った。

王子が乗って来た馬車は一回り大きく、馬の数も乗車人数も2人ずつ多く乗れると…

「何故、私がこっちなのだ?」
ルードヴィッヒが苦虫を噛み潰したような口元で抗議する。

「私もだ。ここからダンジョンまで真琴に確認したい事も多いし、王子の子守などごめんだ」

ヴィクトルも抗議…って

「お兄様、子守りって完全に不敬な?」

「不敬か?」言いながらクラリスを抱き寄せて、アレクシス王子に聞く。

「ふ…ふけ…狡いぞ!クラリスを盾にして!」

「全くもう!話がくだらなさ過ぎて出発も遅れてる!」

と、小一時間揉めに揉めて…

こう決まった。

1号馬車(真琴組)

* レオンハルト(御者)
* 真琴
* クラリス
* フィオナ
* リオ

※定員いっぱい。

2号馬車(王子組)

* 御者
* アレクシス
* ヴィクトル
* ルードヴィッヒ
* 王子の護衛騎士1人と従者に絞られた。

二号馬車では──

「やっと同行できた!」

アレクシスだけが満面の笑みだった。

ヴィクトルは窓の外を眺め、

「……」

ルードヴィッヒは腕を組み、

「何故、私が……」

と小さく呟く。

護衛騎士と従者は、

(胃が痛い……)

と、ほぼ同時に思っていた。

この形での出発となった。

「…やっと静かになった」真琴がぼやく。

「もう!行っくよ〜」リオの号令で出発した。

行き先は、新ダンジョン。

館には、グレアムとエマがその騒ぎを見送った。

「貴方も同行したかったのではなくて?」

「マシューの魔法庁も正式に動いている。今回は、私はマシューと同行だ。私も職務として動かなくてはならんからな。致し方ないさ」

「そう。じゃ私も依頼通りに動くわね?」

エマがそう言った。

「へ?エマ?」

「私も王様から依頼が来てたから」

「依頼って聞いてないぞ?」

「だって、今話したもの。」

エマが間を置いて説明した。

「『緑水の調べ』が冒険者ギルドを通じて召集かけられたの。リーダーが行かないわけには行かないでしょう?エンヤもずっと冒険者ギルドでギルド長で退屈してたからって張り切ってるわ〜だから、暫く別行動ね!」

「お、おい。いつ冒険者に復帰なんて…」

「バニラアイスには、SSS級冒険者に復帰してたじゃない?
冒険者の規則では、直接依頼は受けないといけないのよ?
私、まだSSS級返納したくないもん」

「ないもんって!」

「アスター、私の準備も終わってる?馬車は冒険者ギルドのを使用するから」

「万全に整えてございます。久々のパーティー冒険ですので、十分にお楽しみくださいませ」

意気揚々とエマも出発した。

「あ、アスターあれ」

「何でしょう旦那様?はい、こちらが旦那様の旅支度です。個人での情報収集となりますが、シュバルツ家の恥にならないようご精進くださいませ」

「……私だけ仲間外れではないか。」

とグレアムは肩を落とした。

「旦那様には旦那様のお役目がございます。」

アスターが即答した。

さらに、

「皆様、それぞれに重要なお仕事でございます。」

と言いながら、グレアムの背後で門扉が閉まった。

(寂しい…)

グレアムは、魔法庁へと向かった。
彼は今回は、マシューたち調査隊で技術顧問として情報収集に携わる。



魔法庁──

「待たせたな、マシュー。」

「おう!技術顧問よろしくな」

「ああ」

なんだか元気のないグレアムにマシューは、心配する。

「何だか、元気がないが、今回は俺たちのライフワークでもある古代魔法式の調査にも関係しそうなんだぞ?」

ワクワクするだろうとマシューが聞くが

「調査は楽しみなんだ。問題はそこじゃない。」

「ん? 何がだ?」

「マシュー!」

こうして、魔法庁長官マシューと技術顧問グレアムを乗せた馬車も、新ダンジョンへ向けて走り出した。

こちらもまた、どこか微妙な空気を漂わせながら──。

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