【幕間】研究所の伝書鳩騒動
※この外伝は、第9話の後に読むと、少し息抜き感覚で楽しめます。
鳩・カラス・雀が大暴れする研究所の騒動をお楽しみください♪
【幕間】研究所の伝書鳩騒動
夜の王都研究所。
ヴィクトル、真琴、レオンハルトは、三女との一件を終え、帰路につく途中だった。
「真琴、さっきの風魔法、思ったんだが――書類を担当者に飛ばす魔法とか作れないか?」
ヴィクトルがぽつり。
真琴は目を丸くして振り向く。
「えっ? 無理! 私は人の詠唱を覗いて修正してるだけで、魔法を新しく作ってるわけじゃないし、そもそも魔力ゼロだしね」
「でも、渡す書類が多くて面倒なんだよ」
ヴィクトルは肩をすくめ、ため息をつく。
(……この世界にメールみたいなのがあれば楽なのにな)
「魔法でクラウドみたいにまとめて保存して、そこから各自が――」
「雲?」
真琴は首を傾げる。
レオンハルトが小声でつぶやく。
「伝書鳩で良くね?」
ヴィクトルは真剣な顔で真琴に向き直る。
「……作るんじゃないぞ」
真琴はにやりと笑い、肩をすくめた。
「出来ませんよ。そういう魔法があったら教えてください。魔改造なら喜んでやりますけど」
⸻
その夜、研究所は前代未聞の騒動に包まれる。
机や棚から伝書鳩たちが次々と飛び立った。
その数十羽は、それぞれ個性豊かで自由気まま。
• 茶色の鳩「ポチ」:ドジで、書類をくわえたまま自分の尾羽に引っかかり転ぶ
• 白い鳩「シロ」:真面目で正確、だけどポチやクロの邪魔にイライラ
• 黒い鳩「クロ」:イタズラ好きで、書類をくわえて逃げ回る
• クロのそばにしれっとカラスが居座り、黒いコンビで所員を困らせる
• 小さな雀たち:「ピチチチ!」と鳴きながら飛び回り、書類に突っ込み、鳩やカラスの羽や頭に突撃
⸻
鳥たちの小競り合いが炸裂する。
ポチは尾羽に引っかかって机にドンッ!
シロにぶつかり、机の上で二羽がもつれ、書類がパラパラと床に落ちる。
クロはカラスに挑発され、書類を奪い合って棚の上でバランス崩し、机に書類の雨が降る。
雀たちは「ピチチチ!」と旋回しながら、落ちてくる書類に突っ込み、帽子や髪に直撃。
「わあっ! 頭に紙が!」
「ちょっと待て、どこに飛んだんだ!」
「まだ届かないのか!」
所員たちは絶叫しつつ書類を追いかけるが、鳩・カラス・雀の小競り合いに巻き込まれ、さらに混乱。
クロとカラスは互いに書類を奪い合い、棚の端で羽をばたつかせる。
ポチとシロは机の上で転げまわり、書類を巻き散らかす。
雀たちは上空から突入し、所員の肩や帽子に突っ込む。「ピチチチッ!」
ヴィクトルは机の上で、まるで添付メールしたら即電話確認するタイプの人のように、書類の行方を追う。
真琴は両手を広げ、ため息混じりに呟く。
(……もう、手に負えないわ)
クラリスが研究所を見回し、真顔で一言。
「少しはお兄様の苦労を理解すればいいんです!」
⸻
その隙に真琴は机の下でこっそり魔改造。
魔法が微かに光ると、暴れまわる鳩・カラス・雀たちは次第に書類を正しい場所へ運び始める。
誰もその正体には気づかない。
⸻
所長の声が響く。
「ヴィクトル! 伝書鳩使用は禁止です!!」
しかし鳩もカラスも雀もお構いなし。
ヴィクトルの周りを飛び交い、あちこちから書類を届け続ける。
研究所は大騒ぎだが、どこかほのぼのした空気も混じる。
鳩・カラス・雀の大群と小競り合いのカオスの中、真琴はニヤリと笑う。
(……これで少しは楽になるかな)
ヴィクトルは鳩の動きに気づき、首をかしげる。
「ん……?」
誰もこの異変の正体には気づかず、研究所の夜は大騒ぎのまま静かに更けていった。
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