【第6章】 第127話

【第6章】 第127話 魔石


王宮の図書館クラリス執務室。

今、クラリスは書類提出の為に館長の所に行っている。

と言うことは、

「お前とクラリスは仲が良いのだな」

クラリスの執務室の一角には、アレクシス王子の執務机もあり、彼も良くと言うかほぼここで執務を行っている。

本日は、その状況下で高瀬真琴が来室していた。

「クラリスは、意外とドライだからね。合理性が前提にある」

「そうだな。合理性があれば、我の机が未だここにあっても文句を言わないからな」

一拍置いて更に聞いてきた。

「では、彼女の合理性とは?」

「謎かけ?」

「いや、仲が良い=合理性の整合性かな?」

「だから、恋に発展しないのよ!」
馬鹿たれって言われてるようでアレクシスは、ムッとした。

「お前は、あの男を推しているのだろう?」

あの男とは、レオンハルトの事だ。

「はあ……ここの男どもは」

「何だよ?」アレクシスもついにため口になってきた。

「王子様は、気持ちを読めなくて、推し男は、気持ちを読みすぎてどちらも同じ土俵でお見合いしてるんだから」

やれやれと言いながら、真琴は魔石を手にした。
新しくクラリスが持ち込んだ魔石だ。
また何かを作るつもりらしい。

だが、魔石が妖しく光る。

「ねえ、この魔石どこから手に入れたって言った?」

「いや、それはクラリスじゃないぞ。私に侍従が新しく現れたダンジョン入り口にばら撒かれていたって」

「なっ、王子ヤバい!部屋を出て!」

真琴が王子の手を引き、ドアの方へ向かうタイミングで

魔石が大きく光り、爆発を起こした。

二人は、互いを庇うようにドアの外へと爆風で追いやられた。

気がついたのが早かったのは、アレクシス。

「真琴!真琴、大丈夫か?」

真琴は、声にならない呻き声を呟いている。

騒ぎを聞きつけて、館内の職員が集まってきていた。
館長もクラリスも走ってくる。
その姿を見ながら、大丈夫と小さな声が真琴の口から漏れた所で意識が飛んだ。



背中がジンジン痛い。

ついでに何か肩から背中上部が重い。

真琴は、どうやらベッドにうつ伏せに寝かせられていると
思った所で目が覚めた。

「お、重い…」

あまりの重さに起き上がれない。

「気がつきましたね?」フィオナの声がする。

「やはり、重り効果適めん!」リオの声がする。

「だからって…」クラリスの声もする。

「あの…状況説明カモーン」
真琴は、うつ伏せなまま説明を求めた。

「クラリスの執務室で謎の爆発事故だ。覚えているか?」

横に座っているらしいアレクシス王子の声がする。

「あ、王子は怪我は?」

「おかげさまで、ちょっと腕の打撲くらいた。君の方が背中に火傷を負ってしまった。僕を庇ってくれたからね」

(ああ、ドアに弾き飛ばされながら、体を捻った記憶はある)

「でも、何故重いのでしょうか?火傷はそんなに酷いの?」

「いや、フィオナが痕が残らないように治療した。でも、ちょっとヒリヒリするかな?皮膚の戻りは、時間がかかるからね」

フィオナもクラリスに王宮に呼ばれたそうだ。
真琴の手を握って心配そうにしている。

「だからねー僕がじっとしているようにと対策をお願いしたんだ」えっへんとリオが威張った声を上げる。

「対策?」

「えっと、上からシャドームーンに蜘蛛ちゃんズね。重いのは、シャドームーンだわ」
とクラリスが説明してくれた。
蜘蛛ちゃんズは、ほぼ重さないからね。

重いと言われて、シャドームーンの尻尾が
バタンバタンと頭を叩く。

それはさておき、

「ねえ、クラリス。魔石ってこんなに危うい代物なの?」

「確かに存在が不安定な物はあります。しかし、王宮に持ち込まれる物は、厳重に調査された物のはずです。ましてや王子の所に持ち込まれるものがそんな…」

魔石は、本来は魔法庁で調査確認された物だそうだ。
市井に売買されている物も含めて管理番号が振られる。

クラリスが作業に使う物もちゃんと管理番号付きよって見せてくれた。魔石ペンも分解してみたらちゃんと管理番号付きであった。

「じやあ、ダンジョン入り口に落ちていた魔石を調べもせずに持ち込むなんて非常識って事ね?」

そこまで確認して言ったら、みんなその辺りは織り込み済みらしく渋い顔になっている。

「お兄様たち、魔法庁から先行で調査隊が出るらしいわ」
と、クラリスが言った。

「王子の元に届けた侍従も行方不明なの」と言った。

「……ねえ、それ」

「どうしたのですか?」

「その人、本当に侍従だったの?」

部屋の空気が止まった。

「侍従は簡単に交代できる役職ではない」

先に口を開いたのはアレクシスだった。

「そう」

真琴は頷く。

「王様がジェイクさんを信頼してるみたいに、侍従って王族が一番近くに置く人でしょう?」

アレクシスの表情が険しくなる。

「……ああ」

「なら、行方不明だから怪しいで終わらせちゃ駄目」

真琴はゆっくりと言った。

「その人ならやりかねないのか」

「その人に限って違うのか」

「そこから先に考えるべきよ」

真琴の背中の痛みが治った頃、シュバルツ邸に戻った。

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