【幕間】 王国について③
【幕間】王国について③
王国には、様々な種族が暮らしている。
王都は特に経済の中枢という事もあり、
人族、エルフ族、ドワーフ族——はては友好的な魔族までが行き交う。
その中でも、ドワーフ族は
そのゴツい手とは裏腹に、道具や武器の作成において右に出る者はいない。
⸻
そんな王都の片隅。
人通りの少ない裏通りに——一軒の店がある。
カラーン……
古びた扉が開き、乾いたベルの音が鳴った。
店の奥。
カウンターに座るのは、頬に大きな傷跡を持つドワーフの男。
その鋭い視線に、気の弱い者ならば一瞬で踵を返すだろう。
「店主〜、ちょっとお願いがあってきたんだけど」
「ああ?またリオか。お前さん好みの道具はないぞ」
ぶっきらぼうな返答。
だが、どこか慣れた響きでもある。
リオは、この店の常連だった。
ただし——普通の客ではない。
出所のよく分からない道具を持ち込み、
改造や強化を依頼する。
しかも、そのほとんどが一点物。
量産は出来ず、儲けにもなりにくい。
……が、店主にとっては“面白い”代物ばかりだった。
「今日はね、魔法の杖なんだけど」
リオが取り出したのは——
どう見ても、ただの指示棒だった。
「……なんじゃそりゃ。ただの棒だろ」
「ふふん、それがねぇ〜」
くるり。
先端を回す。
——次の瞬間。
バチィン!!
一メートルほどの雷光が、空間を切り裂いた。
「……ほほう」
店主の片眉が上がる。
「雷だな?」
「うん。ちゃんと雷」
リオと店主は、顔を見合わせ——
ニヤリと、同じ笑みを浮かべた。
⸻
「ちょっと外で試すか」
「だね」
——数秒後。
バチィン!!
裏路地に、雷が弾けた。
一瞬の静寂。
そして——
「うわあああああ!?誰だ今の!!」
「看板が!看板が燃えてるぞ!!」
遠くで怒号が響く。
リオと店主は、ゆっくり顔を見合わせた。
「……威力は十分だな」
「だな」
「王都で使うもんじゃねぇ」
「だね」
——ガチャ。
何事もなかったかのように、店の扉が閉まった。
⸻
「……で、何本目だこれ?」
「覚えてない」
⸻
「……リオ?」
静かな声が、背後から落ちた。
空気が——変わる。
ゆっくりと振り返ると、そこにはフィオナが立っていた。
にこりと微笑んでいる。
……その笑顔が、一番怖い。
「……ちょっと見せてもらってもいいですか?」
店主の視線が、わずかに泳ぐ。
リオは——無言で目を逸らした。
⸻
——カーテンが、開かれる。
その奥にあったのは。
壁一面に並べられた、異様な数の魔道具だった。
どれもこれも——見覚えがある。
「……これ」
真琴が、ぽつりと呟く。
「うん」
「私が“危ないからやめとこ”って置いといたやつだよね?」
「そうだね」
悪びれない即答。
⸻
「……なるほど」
フィオナは、ゆっくりと頷いた。
「つまり」
「危険だから保留にしたものを」
「改造して」
「増やしていると」
一拍。
「……素晴らしいですね」
「いや違う違う違う」
「違わないですね」
にこり。
「安全性の確認は?」
「してないね」
「使用場所の制限は?」
「特に」
「責任は?」
「……」
沈黙。
⸻
「……これ、全部“未完成”なんですよね?」
「うん」
「完成したら、どうなるんですか?」
「知らない」
⸻
「では——」
フィオナは、優しく微笑んだ。
「全部、没収です」
「えっ」
「あと」
「今日壊した分は、修理費を請求しますね」
「えっ」
「連帯責任で」
「えっ」
⸻
こうして——
王都の片隅で密かに増え続けていた“規格外コレクション”は、
一度、その歴史を閉じた。
……はずだった。
⸻
数日後。
「店主〜、ちょっといい?」
「……懲りねぇな、お前」
カウンターの下で。
新しい“何か”が、かすかに光った。
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