【幕間】 王国について②

【幕間】王国について②


この国の存続に関わる時代もあった。



まだ、第一王女を産んだばかりの頃。
隣国との戦争が始まった。

王は、最前線に出る必要があると——私に告げた。
深刻な顔だった。

幼い子供を抱えた妻を残して、戦地へ向かう。
それが、この国の王の在り方。

普通の妻ならば——
泣いて、帰りを待つのだろうか。

「戦地に赴くのでしたら」
「内政の権利を、私にお渡しください」

私は、そう言った。

人質外交で送り込まれた側室。
この国に、味方などいない。

貴族達は、利権と保身に忙しい。
誰が統治するかなど——重要ではない。
自分に都合がいいかどうか。
それだけだ。

本来であれば、内政は
管理執務官や大臣と協議の上で進められる。

だが——
その時、執務を担っていた大臣夫婦は、すでに不在だった。

理由は、知らされていない。

私は——それを、問題とは思わなかった。



命令は、素直には通らなかった。

「前例がございません」
「権限の範囲を逸脱しております」
「王の裁可を待つべきかと」

貴族達は、整った言葉で拒絶する。

当然だ。
側室上がりの女が——内政を握る。
面白いはずがない。

私は、彼らを咎めなかった。

ただ——一つずつ、整理していった。

「では、その“前例”を提出してください」
「権限の範囲は、どの条文に基づきますか」
「王の裁可が必要とする根拠を、明文化していただけますか」

逃げ道を、消していく。

やがて、言葉は減った。
代わりに、頷きが増えた。

私は、それを良しとした。
——効率が、上がったからだ。

誰も、声を荒げなくなった。
誰も、反論しなくなった。

私は——それを、理想的な状態だと判断した。

反対意見は、記録されなくなり。
異論は——存在しなくなった。

私は——それを、当然のことだと認識するようになった。

人から、表情が消えたと——
誰かが、囁いていたとしても。

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