【幕間】 (第八話と第九話の間)
■幕間(第八話と第九話の間)
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幕間 境界を越える者
――同じ頃。王城。
王城の回廊を、ヴィクトルは静かに歩いていた。
「……何とか収まったな」
小さく息を吐く。
「あの曲者皇后の目に止まったのは、不味かったが……」
思考を巡らせながら進む視線の先に、白い一団が現れた。
「……神殿の連中が王城に?」
わずかに目を細める。
「珍しいな。最近は距離を置いていたはずだが」
すれ違う――その直前。
「おや」
一人の男が足を止めた。
「貴方はヴィクトル様でしたか」
穏やかな声。
「お噂は予々。魔法研究の権威と伺っております」
ヴィクトルは軽く肩をすくめる。
「それはどうも。だが、そちらがここにいる方が興味深いな」
男は、わずかに微笑んだ。
「必要があれば、境界は越えられるものです」
その言葉に、ほんのわずかな違和感が残る。
ヴィクトルは一拍置いてから問う。
「……必要、とは?」
「最適な運用のため、です」
迷いのない答えだった。
「人も、組織も、適切に配置されるべきですから」
静かな声音。
だが――どこか、冷たい。
「“役割”から外れたものは、いずれ歪みになりますので」
その言葉は、あまりにも自然に発せられた。
まるで、それが当然であるかのように。
ヴィクトルは男を見据える。
「……そうか」
それ以上は踏み込まない。
男もまた、それ以上は語らなかった。
「お引き止めして失礼しました」
一礼。
「セルディンと申します。またいずれ」
白い一団は、そのまま歩き去っていく。
足音は整然としていた。
無駄がなく、揺らぎもない。
――まるで、最初から“配置されていた”かのように。
ヴィクトルはその背をしばらく見送り――
小さく息を吐いた。
「……厄介そうなのがいるな」
わずかな沈黙。
そして、ぽつりと呟く。
「……あれは、“神殿”ではないな」
その言葉は、誰に届くこともなく。
静かな回廊に、溶けて消えた。
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