【幕間】 王国について①
【幕間】王国について①
今日、天気も良い。
窓の外から聞こえる喧騒も——どこか穏やかすぎる。
⸻
「ねえ、リオ」
部屋の中で、真琴が声をかけた。
「なんだよ?」
いつも通り、ちょっと嫌そうな顔で振り向くリオ。
このやり取りも、すっかり日常になりつつある。
「この国ってさぁ。国王がいるのに“皇后陛下”なの?」
真琴は、ベッドに寝転がったまま首を傾げた。
「側室から皇后になったって聞いたけどさ」
「ああ、その話か」
リオは、少しだけ視線を上げる。
考えを整理するように。
「昔、この国は戦争してたんだよ」
「戦争?」
真琴が、身体を起こす。
「まあな。この世界の戦争は、武力と魔法だ」
「ファンタジーあるあるってやつね」
「今は現実だろ」
「すみません、茶化しました。それで?」
リオは、ため息を一つ。
「この国の王はな。“雷の魔法を使えること”が資質の一つなんだ」
「雷?強そう」
「強いどころじゃない。地球で言えば——全知全能の神、ゼウスが振るうやつだ」
「それは強いわ」
真琴が素直に頷く。
「当然、戦争になればそういう奴は最前線に出る。王でも例外じゃない」
「王様が前線?」
「そうだ。で——王が抜けた国はどうなると思う?」
「内政ぐちゃるね」
「正解」
リオが軽く指を鳴らした。
「そこで、皇后が権限を引き継いだ」
「なるほどね。でも戦争は勝ったんでしょ?」
「勝ったし、王も戻ってきた」
「じゃあ普通、元に戻るんじゃないの?」
一拍。
リオは、少しだけ口角を上げた。
「——戻らなかったんだよ」
「え?」
「内政の主導権は、そのまま皇后が握り続けた」
「へぇ……それって、つまり——」
真琴が言いかけた、その時。
「その“理由”、お聞きになりますか?」
ぬっ、と。
扉のところに立っていたのは——クラリスだった。
分厚い本を抱え。
なぜか不要な眼鏡をキラリと光らせ。
手には、どこから持ってきたのか指示棒。
「……なんで教師モードなの?」
真琴が、思わず姿勢を正す。
クラリスは、静かに微笑んだ。
「では——講義を始めましょうか」
⸻
数分後。
「——つまり、権力構造が“固定化”された可能性が高い、ということです」
「なるほど、わからん」
真琴が即答した。
「真琴様……」
クラリスが額に手を当てる。
「要するに、戻らなかったんじゃなくて——戻せなかった、かもしれないってことだよ」
リオが補足する。
「あー、そういうやつね」
真琴は、軽く伸びをした。
「強すぎると、手放せなくなるやつ」
「まあ、そんなところだ」
⸻
「でさ」
真琴が、ぱちんと手を叩いた。
クラリスが持っている指示棒の先端をクルクル回す。
「せっかくだし作ってみる?」
「何をだよ」
「雷の魔法」
一瞬の沈黙。
「……は?」
「雷の仕組みはねぇ〜」
ウキウキした真琴である。
⸻
バチィッ!!
「おお!?」
レオンハルトが、目を輝かせる。
「で、これ威力は!?」
真琴は、ちらりと視線を横に流した。
《出力制限:魔石品質依存》
《最大電圧:人体に安全な範囲》
《用途:簡易防護》
「……」
一拍。
「——うん、護身用だね」
「え?」
真琴は、肩をすくめる。
「いやこれ——“兵器”じゃなくて“規格品”だわ」
⸻
「全知全能神は、どこ行った!?」
レオンハルトの叫びが、部屋に響いた。
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