【幕間】 真琴の逆鱗ー後日談

【幕間】真琴の逆鱗ー後日談

フィオナが廃墟一帯を祈り、鎮魂してから
王都に戻った。

ヴィクトルが魔法庁へ依頼達成の報告書を作成に行ったところで
真琴は、部屋に戻って、魔法ログを何やら構築している。

「何かやってるの?」
リオが聞いてきた。

「聖水浄水器作るの!」

「あれ、冗談じゃなかったんだ」

「決まってるでしょう」

「しゃ、このログも読んでみる?」

リオが古びた杯を見せてきた。

「何これ?」真琴が受け取るとピコンピコン

「あっ、これ知ってる!聖杯ってやつだー」

「御名答。宝物庫で転がってたからさ」

真琴が聖杯を受け取った瞬間、
ログウィンドウが一斉に開いた。

ぴこん。
ぴこん。
ぴこんぴこん——

「うわ、こっちも元気」

真琴が思わず呟く。

リオが肩をすくめた。

「神殿の宝物庫は、放置遺産の山だからな」

真琴は、興味津々でログを開いていく。



【聖遺物:識別番号不明】

分類:

▶︎ 聖杯

状態:

▶︎ 稼働中

適合者:

▶︎ 未登録



【機能一覧】

・浄化補助

・水質安定化

・魔力活性化

・神聖属性増幅

・自動循環機能

・不老不死化



「……あれ?」

真琴の目が止まる。

「自動循環?」

さらにスクロールした。



【推奨運用例】

・聖水循環設備

・広域浄化施設

・浄水管理機構

・神殿内水脈接続



部屋が静まった。

真琴が、
ゆっくり顔を上げる。

「……作れるじゃん」

「何を?」

リオが嫌な予感を覚えながら聞いた。

真琴は、
満面の笑みで答えた。

「聖水浄水器」

「やっぱり本気だったか……」



さらにログが開く。

【警告】

現在、
神殿水脈接続機能は停止中です。

停止期間:312年



「うわぁ」

真琴がドン引きした。

「こっちも放置かぁ……」

「神殿ってそういうところだぞ?」

リオが遠い目をする。

真琴は、
ログを読みながらぶつぶつ呟き始めた。

「でも、待って?」

「循環機能が生きてるなら、
聖杖側の浄化術式と組み合わせて……」

「クラリスの水魔法制御を通して……」

「フィルター型に再構築すれば……」

リオが、
そっと距離を取った。

これは危険だ。

真琴の“開発モード”である。



その時。

部屋の扉が開いた。

「戻ったぞ……」

ヴィクトルだった。フィオナも一緒だった。

だが。

机の上に置かれた聖杯を見た瞬間、
動きが止まる。

「…………」

ゆっくり。

本当にゆっくりと、
真琴を見る。

「何だ、それは」

「聖杯!」

「どこから持ってきた?」

「リオ!」

「やぁ」

「お前かぁぁぁぁ……!!」

ヴィクトルが頭を抱えた。



真琴は、そんなヴィクトルを気にせず、
ログを開き続ける。

【複合接続予測】

対象:

▶︎ 聖杖

▶︎ 聖杯

▶︎ 水属性術式

接続成功率:92%



【予測結果】

“広域聖水循環装置”の構築が可能です。



真琴の目が輝いた。

「出来る!!」

「出来てはいかん!!」

ヴィクトルの悲鳴が響く。

その横で、
リオだけが静かに呟いた。

「……売れるな」

「売りません!!」

フィオナが即答した。

珍しく、
本気で。

ピコンともう一つのウィンドウ
【聖杯機能】
対象:人間
機能:不老不死

“どうしますか?“




数日後。

神殿。

セルディンは、
静かに机の上の書類を整理していた。

その傍ら。

見慣れない銀色の装置から、
澄んだ水音が響いている。

一定速度で循環する水。

淡い浄化光。

「……なるほど」

セルディンが、
静かに呟いた。

「循環効率を落とした方が、安定しますね」

机の横には、
綺麗にまとめられた数枚の紙。

真琴の書いた“取扱説明書”だった。

端には、
新しい文字が追記されている。



※長時間連続稼働時は、
循環速度を0.2下げることで
術式安定率向上を確認。



セルディンは、
満足そうに頷いた。

「実に合理的です」

静かな部屋に、
水音だけが響く。

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