【幕間】 レオンハルトの受難


【幕間】レオンハルトの受難


古代遺跡からの帰り道中の事——

あいも変わらず、真琴はリオに尋ねる。

「ねえ、リオ」

「何だよ?」

ちょい面倒くさそうに返すリオ。

「気になったんだけど、そもそも大昔にね——竜騎士って沢山いたんだよね?」

「ああ、そうだよ。それはそれは勇猛果敢な、空を翔ける一族だったよ」

「みんな水晶竜みたいなのに乗ってたの?」

真琴は、ちらりと後方を見る。

そこには——

希望に満ちた目で、こちらを見ているレオンハルト。

「いや、なんかさ。レオンハルトがあの竜に乗れるくらいに格を上げるって……」

一拍。

「試練の目標、高すぎない?」

レオンハルトの笑顔が、ぴたりと固まった。

リオは、視線を逸らす。

「……何よ?」

「いや、僕のせいなわけじゃないけどさ……」

明らかに歯切れが悪い。

「かつての竜はさ、サラマンダー並みのモンスターで——
知性も魔力も、人間が制御できるレベルだったんだよ」

「ふんふん」

「でも、水晶竜は……」

少しだけ、間を置く。

「引きこもってる間に、神格化しちゃったからさ」

「……は?」

「自分のレベル、もう落とせないんだよね」

静寂。

風の音だけが、砂をさらっていく。

「だから——」

リオは、にっこりと笑った。

「レオンハルトが上がるしかない」

「いや無理だろ⁉︎」

即座にツッコむレオンハルト。

「今の話聞いてたか⁉︎ 神格って言ったぞ⁉︎」

「うん」

「軽いな⁉︎」

真琴は、少しだけ考えてから——

「まあでも、ほら」

ぽん、とレオンハルトの肩を叩いた。

「頑張ればいけるんじゃない?」

「根拠どこだよ⁉︎」

「ノリ?」

「ふざけんな‼︎」

——そのやり取りの、少し後ろ。

フィオナが、そっと額に手を当てた。

「……はぁ……」

小さなため息。

優しい声音のまま、ぽつりと呟く。

「無茶を言われるのも、騎士の務め……なのでしょうか……」

「フォローになってないからなそれ⁉︎」

レオンハルトの叫びが響く。

さらにその横。

ヴィクトルは無言でモノクルを押し上げ——

レオンハルトを、じっと見る。

そして。

ゆっくりと、首を横に振った。

「おい今の何だ⁉︎」

「いや」

淡々とした声。

「現実的な判断だ」

「諦めるなよ‼︎」

リオが、くすっと笑う。

「まあ——」

小さく、呟く。

「だからこそ、“選ばれた”んだけどね」

「え?」

だが、その言葉は——

風に紛れて、誰にも届かなかった。

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