経営会議で"人事の議題"が最後に回される会社が、成長を止める構造
「経営会議は、毎月ちゃんとやっています」
「売上、予算、事業戦略、しっかり議論しています」
「人事の話も、ちゃんと入れています」
経営者の方から、本当によくいただくお話です。
人事コンサルタントとして、5,000人を超える面接、数十社の組織支援、4名から100名超への垂直立ち上げを経験してきました。
経営コンサル・執行役員として、複数の経営会議に同席してきた立場から、断言できることがあります。
経営会議で"人事の議題"が最後に回される会社は、5年後、確実に成長が止まります。
そして、経営者の方は、ほぼ気づいていません。
自分たちが、無意識に、組織の未来を後回しにしていることに。
今日は、経営会議の""議題の順序""という、一見些細な問題が、いかに組織の未来を左右しているかを、構造で言語化します。
◆「では最後に、人事から報告を…」の、あの空気
まず、私が経営会議に同席してきた中で、何度も見てきた場面をお伝えします。
会議の冒頭、月次の売上報告から始まります。
続いて、予算の進捗、事業戦略、マーケティング施策、新規プロジェクト。
経営陣が、真剣に、時に熱く、議論を続けていきます。
そして、会議終了予定時刻の10分前。
議長が、腕時計を見ながら、こう切り出します。
「では、最後に、人事から報告を…」
人事責任者は、資料を開きます。
採用進捗、離職者の状況、組織課題。
本当は、20分話したい内容が、資料の中に詰まっています。
でも、時間はもう、5分しかありません。
「時間がないので、簡潔に。採用は目標に対して80%、離職は前月比で微増、組織課題は…引き続き、人事で検討していきます」
こうして、経営会議は終わります。
議事録には、「人事報告」の項目に、たった3行だけ、記録されます。
このシーンを、私は、本当に何度も見てきました。
◆この会議の空気を、社員はどう受け取っているか
ここで、大切なことをお伝えします。
経営会議の空気は、社員に、驚くほど正確に伝わります。
議事録が回覧されなくても、伝わります。
役員が言葉にしなくても、伝わります。
なぜなら、社員は、経営が"何に時間を使ったか"を、日々の意思決定の中で感じ取っているからです。
「うちの会社は、売上とマーケの話ばかりだ」
「組織の話は、いつも後回しにされている」
「人事の課題を上げても、まともに取り合ってもらえない」
社員は、静かに、こう気づきます。
「私たちは、後回しの存在なんだ」と。
これが、社員のエンゲージメントを、じわじわと削っていく、静かな毒です。

◆事業を成功させたいなら、人と組織を先に議論すべき
ここで、経営の順序について、もう一段、踏み込みます。
私は、経営者の方に、いつもお伝えしています。
事業を本当にうまく行かせたいなら、人と組織の問題を、最初に議論すべきです。
売上、マーケ、事業戦略。
これらは、確かに、大切です。
でも、これらはすべて、"人"が動かします。
人がいて、組織があって、初めて、売上が立ちます。
人と組織の土台が崩れていたら、どんなに素晴らしいマーケ施策も、事業戦略も、絵に描いた餅で終わります。
にもかかわらず、多くの経営会議では、マーケや売上のテクニックの話ばかりが繰り返されています。
これは、本当に危険な兆候です。
◆「人事議題を最初に扱う会社」と「最後に回す会社」の、5年後の決定的な差
私が、これまで数十社を見てきて、確信していることがあります。
経営会議で人事議題を"最初"や"前半"に扱う会社と、"最後"に回す会社では、5年後に、決定的な差が生まれています。
その差は、こう表現できます。
→ 前者は、自走できる組織になっている
→ 後者は、人に依存した組織のままになっている
前者は、人が変わっても、仕組みでカバーできます。
キーマンが退職しても、組織の勢いは大きく落ちない。
新しく入った人も、既存の仕組みに乗って、成果を出せる。
後者は、キーマンが辞めると、勢いが一気に弱くなります。
そして、いつまでも同じ組織課題を抱えたまま、走り続けます。
毎年、同じような離職の話をし、同じような採用の悩みを繰り返す。
5年後、10年後の景色は、まったく別のものになっています。
◆なぜ、経営者は人事議題を後回しにしてしまうのか
ここで、もう一段、経営者の心理に踏み込みます。
多くの経営者の方に共通する、無意識の心理があります。
短期的には、テクニックの話が、確かに重要なんです。
今月の売上をどう作るか。
次のキャンペーンで、何%売上を伸ばすか。
競合との差別化を、どうするか。
これらは、答えが明確で、動きやすい。
議論すれば、すぐにアクションに繋がる。
""動いた感""が、得られやすい。
だから、経営者は、これらに時間を使いたくなります。
一方で、人と組織の話は、答えがすぐに出ません。
今月、離職者が減ったからといって、来月にどう影響するのか、はっきりしない。
組織文化を変えるのに、何ヶ月、何年かかるのか、わからない。
だから、経営者は、無意識に、後回しにしてしまう。
"動いた感"が得られにくいから、避けてしまうんです。
これは、経営者が悪いのではありません。
人間としての、自然な心理です。
ただ、この自然な心理に流された経営者の会社は、5年後、必ず停滞します。
だからこそ、経営者には、この自然な流れに、意識的に逆らう覚悟が必要です。
◆短期は「テクニック」、長期は「組織」
私が、経営者の方にお伝えしていることを、一つのフレーズにまとめると、こうなります。
短期的には、テクニックの話は、確かに重要です。
でも、経営者は、長期的な目線で、組織を考える必要があります。
短期の"動いた感"と、長期の"組織の力"は、時間軸が違います。
短期のテクニックだけを追い続けた経営者の会社は、いつか必ず、組織の土台が崩れます。
長期の組織設計に、経営会議の時間を割いてきた経営者の会社は、じわじわと、しかし確実に、揺るぎない組織になっていきます。
どちらの会社にしたいかは、経営者の判断です。
そして、その判断は、毎月の経営会議の""議題の順序""に、静かに、しかし明確に現れているんです。
◆経営会議のあり方を変える、シンプルな第一歩
では、経営会議のあり方を変えるには、何から始めればいいか。
私の答えは、シンプルです。
議論の順番を、変えてください。
これまで、売上・予算・事業戦略の後に、人事議題を扱っていたなら、
次の経営会議から、最初に人事議題を扱ってみてください。
たったこれだけです。
でも、この一つの変化が、会議の空気を、根本から変えます。
議題を最初に扱うと、経営者と経営陣が、フレッシュな頭で、組織の話に向き合えます。
時間切れの心配なく、じっくり議論できます。
そして、その議論を踏まえて、事業戦略やマーケの話に入っていく。
事業と組織が、切り離されず、繋がって議論される。
これが、本当の経営会議のあり方です。

◆経営者の方への、最後の三つの問い
最後に、三つだけ、問いを残します。
御社の経営会議で、人事議題は、何番目に扱われていますか?
御社の人事議題に、経営会議の時間の何割が、割かれていますか?
御社の社員は、経営が"組織を本気で考えている"と、感じ取れていますか?
この三つに、自信を持って答えられないなら、御社の組織が、5年後の景色に向かっているのか、それとも停滞に向かっているのかは、すでに、経営会議の議題順序に現れています。
◆議題の順序は、経営の優先順位そのもの
最後に、もう一度。
経営会議の議題の順序は、単なる会議運営の話ではありません。
議題の順序は、経営者が、無意識に、何を優先しているかを、そのまま映し出します。
社員は、それを、驚くほど正確に、感じ取っています。
そして、経営者が"人と組織"を最優先に置いた瞬間から、組織は、静かに、しかし確実に変わり始めます。
自走できる組織になるか。
キーマン依存のまま、成長が止まる組織になるか。
その分かれ道は、明日の経営会議で、あなたが、どの議題を最初に取り上げるか。
その一点にかかっています。
売上より先に、組織を語る。
戦略より先に、人を語る。
その順序を、今日、経営者として選ぶ勇気があるかどうか。
その一つの選択が、5年後の組織の姿を、決めていきます。
◆ここから、本当に伝えたいこと
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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