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人事が"数字に弱い"と思われている会社で起きていること

「人事の話は、いつも感情論で終わる」
「経営会議で、人事の議題は最後に回される」
「予算の議論になると、人事は説得力を失う」


経営者・人事の方から、本当によくいただくご相談です。


人事コンサルタントとして、5,000人を超える面接、数十社の組織支援、4名から100名超への垂直立ち上げを経験してきました。
事業責任者として、0→10億円のプロジェクトも、複数経験しています。


その経験から、断言できることがあります。


人事が、経営の議論の場で軽く扱われてしまう本当の理由は、能力ではありません。


人事が、"数字を作っていない"と、経営者から思われているからです。


そして、これは、人事の方が悪いのではありません。
構造的に、人事は数字から遠ざかりやすいポジションだからです。


今日は、その構造と、明日から変えられる第一歩について、お話しします。



「人事の話は、感情論」と思われている理由

少し、踏み込んだ話をします。


経営者と話していると、こんな言葉を聞くことがあります。


「うちの人事責任者は、いい人なんだけど、数字の話になると、急に弱くなる」
「組織課題を訴えてくるけど、数字の裏付けがないから、経営判断に組み込めない」
「PLやキャッシュフローの話をすると、目が泳ぐ」


これは、人事の方を責めているのではありません。
構造として、人事の方々が、数字から遠ざかりやすい職種であることを、経営者は感じ取っているんです。


実際、私が見てきた人事の方々の多くは、


PLやキャッシュフローを、読みこなしていない
ROIという言葉の意味を、自分の言葉で説明できない
→ 自部署の経費が、会社全体の何%なのかを、把握していない
→ 採用一人あたりにかかっている本当のコストを、計算したことがない


こういう状態の方が、本当に多いんです。


私自身、人事執行役員時代を振り返ると、最初は、ここに弱さがありました。
正直に告白します。
事業責任者として0→10億円のプロジェクトを経験させていただいて、初めて、経営の言語が見えるようになりました。


つまり、人事の方が数字に弱く見えるのは、"人事だけの仕事"をしてきたからです。
事業の現場、経営の議論、お金の流れに触れずに、人事の業務だけに閉じてきた人ほど、数字から遠くなります。





人事は、"コスト部門"ではなく"投資部門"

ここで、一つ大きな構造の話をします。


多くの経営者、そして多くの人事の方自身が、こう思っています。


「人事は、会社のコスト部門だ」
「だから、できるだけ予算を抑えて、効率的に運用するのが仕事だ」


私は、これは違うと考えています。


人事は、コスト部門ではありません。
人事は、"投資部門"です。


採用は、投資です。
研修は、投資です。
人件費は、投資です。
組織開発は、投資です。


そして、すべての投資には、リターンがあります。
そのリターンを、数字で語れる人事だけが、経営の隣に立てます。


ここを腹に落とせない人事の方は、いつまでも、コスト削減を要請される側で止まります。
投資の対価としてのリターンを語れる人事になった瞬間から、経営者は、人事の話を真剣に聞き始めます。



人事責任者が、最低限おさえるべき"4つの数字"

ここから、具体的な数字の話をします。


私が、顧問先の人事責任者の方に、最低限おさえてほしいとお伝えしている数字が、四つあります。


一つ目、エントリーから内定承諾までのファネル分析。


採用の各ステップで、何人がエントリーし、何人が書類選考を通過し、何人が一次面接、二次面接、最終面接を通過し、何人が内定を承諾したか。


これを、チャネル別、職種別、月別で、数字で把握しているか。


これがない採用は、感覚で動いている採用です。
ファネル分析があると、「どこで歩留まりが落ちているか」が一目でわかります。
そして、その箇所こそが、改善すべき優先課題です。



二つ目、採用単価。


一人を採用するのに、いくらかかっているのか。
媒体費、エージェント手数料、面接にかかる人件費、入社後の研修費。
これらをすべて含めた、リアルな単価を、職種別、チャネル別で把握しているか。


採用単価がわかれば、「どのチャネルが投資効率が高いか」が見えます。
そして、その数字を経営に提示できる人事は、予算交渉で強い立場に立てます。


三つ目、人件費売上比率。


自社の総売上に対して、人件費が何%を占めているか。
業界平均と比較して、自社はどこに位置しているか。
部門別では、どの部門の人件費効率が高く、どこが低いのか。


これは、経営の最も基本的な数字の一つです。
人事責任者が、この数字を語れないと、経営の議論には参加できません。


四つ目、エンゲージメントスコア(eNPS)。

社員が、自分の会社を、家族や友人に薦めたいと思っているかを測る指標です。


これを、定期的に、部門別、職種別、勤続年数別で測定しているか。
そして、スコアの変化を、組織課題の早期発見に使えているか。


エンゲージメントスコアは、離職率の先行指標です。
ここが下がっている部門は、半年〜1年後に、必ず離職が増えます。



数字を、"経営の言葉"に翻訳するということ

ここで、もう一段、深い話をします。


数字を持つだけでは、十分ではありません。


人事責任者の仕事は、数字を、"経営の言葉"に翻訳することです。


例えば、こうです。


(数字だけで止まる場合)
「エンゲージメントスコアが、前期から5ポイント下がりました」


(経営の言葉に翻訳する場合)
「エンゲージメントスコアが、前期から5ポイント下がりました。
特に、営業部門の3年目以降の社員で、低下が顕著です。
過去のデータから、この層のスコア低下は、6ヶ月後の離職率に直結します。
このまま対策を打たなければ、年内に営業部の中核人材3〜4名が離職するリスクがあります。
営業部の売上構造から逆算すると、3名の離職は、年間売上で約8,000万円のインパクトを生みます。
今、この層の引き留めに、500万円の組織開発予算を投じる提案です。
ROIは、約16倍の投資効果が見込まれます。」


この翻訳ができる人事だけが、経営者の隣で、組織の意思決定に関わっていけます。

数字を、ただ報告するのではなく、"事業のインパクト"に翻訳する。
これが、戦略人事の核心です。



◆"語れる人事"になるための、第一歩

ここで、よくいただく質問があります。


「数字を語れるようになりたいけれど、何から始めればいいですか?」


私の答えは、シンプルです。


レポートから、意識してください。


誰に言われなくとも、月に一度、自部署で扱っている数字を、自分でレポートとしてまとめてみる。


採用ファネル分析を、チャネル別で作る。
人件費売上比率を、部門ごとに出す。
離職率を、勤続年数別で集計する。
エンゲージメントスコアの変化を、グラフで可視化する。


最初は、誰にも見せなくて構いません。
自分の手元に、毎月のレポートを溜めていく。


そうすると、数ヶ月後、不思議なことが起きます。


数字の"異常値"が、見えるようになります。
「あれ、この部門だけ、人件費が上がっている」
「この媒体だけ、内定承諾率が落ちている」
「このスコアが、3ヶ月連続で下がっている」


異常値が見えた瞬間、人事の仕事は、"感覚"から"仮説"に変わります。
そして、仮説を持って経営者に話しかけられる人事は、経営の信頼を、確実に獲得していきます。



人事責任者の方へ、最後の三つの問い

最後に、三つだけ、問いを残します。



あなたは、人事の業務を、"コスト"ではなく"投資"として、経営に語れていますか?


あなたは、毎月、自部署の数字を、自分の手でレポートにまとめていますか?


この三つに、自信を持って「はい」と答えられないなら、人事が経営の議論の場で軽く扱われている原因は、あなた自身の中にあるかもしれません。


人事は、感情で組織を語るのではなく、数字で語る職種

最後に、もう一度。


人事は、感情で組織を語る職種ではありません。
人事は、"数字で組織を語り、感情で人を支える"職種です。





組織課題を訴える時は、数字で語る。
社員一人ひとりに向き合う時は、感情で寄り添う。


この二つを、両方持っている人事だけが、経営の隣に立ち、社員の心の側にも立てます。


数字に弱い人事のままでいると、いつまでも、感情論で議論を進める人として扱われます。
数字を持った瞬間から、人事は、組織の未来を設計する側に、回っていけます。


明日からの第一歩は、シンプルです。
自部署の数字を、一つ、自分の手で集計してみる。



そこから、あなたの人事の仕事は、静かに、確実に変わり始めます。

ここから、本当に伝えたいこと

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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