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マキビシ8ビート #3

【あらすじ】

服部半蔵、百地丹波、風魔小太郎、石川五右衛門、猿飛佐助、霧隠才蔵、加藤段蔵…この国の歴史上に偉大なる功罪と数多くの謎を残した存在。しのびの者である。その中の一人、忍者集団 北伊賀衆 三大上忍 御頭役、藤林ふじばやし長門ながとのかみ

その八男として鍛え上げられた身買われ養子、百地ももち 凪雲なぐも。17歳。

織田信長、今川義元、武田信玄、上杉謙信、北条氏康、徳川家康など名だたる武将達が己が天下を目指した戦国時代。

その乱世の忍として暗躍し、"百年に一度の天才"と謳われた伝説の存在。この物語の主人公である。


時は変わって、2024年現代。

ウクライナ情勢、パレスチナ問題、少子高齢化、物価高騰、政治不信、自然災害、感染病、魑魅魍魎はびこるSNS、盛りすぎサムネ画像、キモすぎる同調圧力、ウザすぎるヘイトスピーチ、蔓延する薬物汚染、ブラック過ぎる世の中etc…時代は移ろっても乱世は乱世。そこで暮らす藍沢あいざわ 涼太りょうた(17歳・高校生)。

B-BOY リョータの愛称を持つ彼は、パリ五輪 日本代表として注目されたブレイクダンサー。

この物語、もう一人の主人公である。

光と影。
相対する存在。
共鳴する鼓動ビート
歴史小説 × 現代SF小説。
クール × エモーショナル。
出会ってしまった二人の非凡。
新たに生まれる一つの伝説。

サイバーテロ、AI、ロボット、宇宙工学などを織り交ぜ、「人間とはなにか」、「生きる価値とは何か」を、筆者独自の視点で描いたエンタメ活劇。

今ここに馳せ参じて候。
しかと刮目せよ。


【↓ リョータ編 プロローグはこちら ↓】



その技は、"ワープ"っていわれてる。
出来たとしても、見れたとしても
「そんな奴ァいるわけないだろ」
ってオチさ。誰にも出来ない幻の技だよ。
だから"ワープ"なんだ。


エアフレア1.5 またの名を『ワープ』と呼ぶ。
エアフレアというのは、エアートラックスという技で、近代ブレイキン(2000年代のブレイクダンス)が創造したパワームーブの一種。

このエアートラックスという技は、倒立旋回後、開脚したその脚が生み出す遠心力を原動力とし、腕が地面を押す際に発する斥力と遠心力が掛け合わさることで全身が空中でホバリング回転するという、物理法則と人体工学のギリギリを攻めた凄技。

その発展形がエアフレア1.5、つまり腕の力で浮かせた体を空中で1.5回転させる超絶技巧。
これを『ワープ』と云うのだ。

しかしこれには誤りがある。

正確には1.5回転ではなく、2.0回転なのだ。

通常、人間の腕の力は脚力の3分の1程度に留まる。
フィギュアスケートのトリプルアクセルや4回転ジャンプが人類の限界値だとするなら、それを逆立ち状態で行なうエアフレアが2.0回転するのは

人間の限界を超えることを意味する。

そんな超人技は、もちろん誰にも出来ないし、見た者も存在しない。

あまりにも難しすぎる荒唐無稽なそれは、いつしか1.5回転という、"まだ可能な"閾値に下方修正されてしまったのだ。


藍沢リョータの夢は、このエアフレア2.0、つまり『ワープ』を公式戦での使用すること。


つまり、12月の『レッドブルBC ONE 2024 World Final』で、前人未到の必殺技『ワープ』を披露することが、オリンピック後の目標であった。




今夜は約500年ぶりの皆既月食!
神秘的な光景を一目見ようと、天体ファンのみならず多くの人々がその時を待っています!
しかも今夜はそれだけではありません!
こちら『つくば宇宙開発技術センター』では、なんと先日パリ五輪で世界中を興奮させた"ブレイキン"の日本代表チームが最新鋭技術を搭載したロボットとダンスバトルを繰り広げます!世界最強のダンサー VS 世界最高水準のマシン。夢と希望と興奮の電脳戦、是非そちらもご期待くだ



「…あ、ちょ!リョータ!今めっちゃ集中して観てたのに!てか、えっ!?俺ら今日ロボットと戦うの?全然聞いてないんだけど!てかマジターミネーターじゃん!」


「声がデカイんだよ、イッシンは」



つくば宇宙開発技術センター。通称J-AXA。


茨城県つくば市を拠点とする、国内初の、宇宙開発および関連する技術とテクノロジーの発展貢献を専門とする官民一体組織だ。


リョータたちは今日、そのJ-AXAと国内外を代表する民間企業100社が主催する『アマテラス2024』というイベントにゲストとして参加することが決まっていた。

エネルギー、AI、バイオテクノロジー、物流、通信、ロボット工学、宇宙開発 等の分野で世界を席巻する企業が一堂に介するコンペディション。
未来を担う新進気鋭のベンチャー企業はもちろん、トヨタマ自動車、NNTT、KGDI、ソフバンク、光菱、ソニー、Google、サムスン、テスラ、Amazon、メタ、マイクロソフト、それにあのNASAの関係者も参加するテック業界にとってのいわば"万博"だ。

かつてモノづくりで世界をリードした日本も、"失われた30年"と呼ばれる政治システムの機能不全期間を経て、国内のモノづくり産業が相次いで撤退、縮小、廃業に追い込まれている。
経済成長率は先進国最下位。かつての後進国にも「日本はビンボー」と揶揄されるほど、衰退の一途を辿る昨今。
そこにコロナ禍やウクライナ情勢が絡み、元々資源に乏しい日本の国力は急速減退する一方だ。
少子高齢化という大きな持病も抱えていて、ヒト・モノ・カネの三拍子ともに首の皮一枚、背水の陣ときた。

そんな泥舟を救うかもしれない100年に一度の特大イノベーションが一年前に起こったのだ。

それが、純国産型 生成AI『ミネルヴァ』と四〜二足歩行・四肢変則型動作を実現させた純国産型 超高性能ロボット『シン』の開発成功である。

ネット上に作り上げた仮想空間で、4096体のアバターが同時に訓練し、5時間で2万世代分の世代交代をする。そうして人間の複雑な動きや臨機応変の対応を自動学習していく。習得した動きや対応の数々をデータベースとし、実際のハードウェア、つまりロボットがその動きを真似て自ら動く。

生物が生存出来ない宇宙空間や、放射能で汚染されたメルトダウン寸前の原発、気圧変動や激しい水圧、溶岩から発生する高温、有毒な硫黄ガスなどにも長時間耐えて、一流エンジニアや宇宙飛行士よりも高いパフォーマンスを発揮するハイテクマシン。

その超絶的に賢くて頼りになるロボットの為に、今が旬のダンスバトルというアレを使って『大人の都合満載PR活動』を行う。
いわゆる"案件"というやつだ。

それもこれもブレイキンのおかげだろう。
頭や背中でクルクルするのは目立つから。

「なんか電車の"ガタンゴトン"が、ターミネーターの"デデン デンデ デン"に聞こえてきた!ほら!デデン デンデ デン…デデン デンデ デン!ほら!」

「もうわかったから静かにしろよ!」

リョータはあまり乗り気じゃなかった。
心境は別のところにあるようだ。


早く練習がしたい。それだけだった。





「あー南海トラフこえー…今日パンしか食ってねえ」
思ったことをすぐ口にするのはイッシン。
リョータの一つ上の青年で前回パリ五輪の日本代表決定戦でリョータと0.1ポイント差を競ったライバル。スキルとフィジカルはほぼリョータと互角。しかもリョータには無いコミカルなキャラクターが売りの日本を代表するBボーイ。


「なんかさ…最近忙しくて、練習もだけど、プライベートとか全然じゃん…いい加減疲れたよ」
これはBガール Anriことアンリの嘆き。1月の日本代表決定戦から特に忙しい。何せパリ五輪で金メダルを獲得したメダリストだから。


「まあなぁ…スポンサーさんも来とるしあんまり野暮なこと言われへんけど、レッドブルも近いしなぁ」
そう言うのは、シンタロー。
Bボーイ SHINTA-ROCKの通り名で、多分いま一番有名なダンサー。オリンピックでは金メダル候補だったし、日の丸国旗を掲げて開会式の旗手を勤めた。


「多分これが終わったら、またいつもの生活に戻るよ」
秋葉原から約1時間。快速特急 つくばエクスプレスが研究学園駅を過ぎ、つくば駅直前の長いトンネンに差し掛かる。車窓から一瞬だけストロボ反射した灯をぼんやり眺めてリョータはそう呟いた。

いつも見てるはずの月と太陽を今日だけみんな拝みに来るみたいに。
このブームが終わったら、多分また代わり映えしない日常に戻るよすぐに。

流石にそこまでは言えなかった。



「これはこれは!あ…皆さんようこそお越し下さいました!私、本日皆さんの案内役を務めさせていただきます、阿澄あすみと申します。いやぁ…お目にかかれて光栄です!わたしこう見えて高校の頃、ヒップホップダンスをやってまして、ダンス…好きなんです。だから日本代表決定戦の頃から皆さんのことは観てました!」

一同にそう挨拶をするのは、J-AXA広報部の阿澄という女性だ。アンリより歳上の、可愛いとも言えないがその逆とも言えない至ってフツーの、育ちの良さそうな、というか堅物っぽい口調と、細身の黒いワンピースが似合う女性だった。


「NICEアスミン!よろしくアスミン!」
イッシンがアゴをしゃくり上げ、大袈裟にグッドサインをしながらふざける。


「あ、ああ、はぃ。ありがとうございます!よろしくお願いします!"イッセイ"さん!」


「いやそれ別人!」


これには思わず笑ってしまった。


「ああ、すいません!イッシンさん!…ひ、ひとまず控え室をご案内致します。ではどうぞこちらから!」

動揺しきった口調で、阿澄ことアスミンが音響機材や鉄パイプ、ダンボール等、イベント関連資材でいっぱいになった関係者専用通路とイベント会場を隔てている搬入扉を開いた。




「うわぁ…すげえ」
一面に広がる宇宙とテクノロジー。


皆が一瞬で鷲掴みにされた。


















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