【ちょっと昔の世界一周】 #37 《Tree of Life》
イスタンブール
東西の文化の交わる地と言われるトルコの最大の都市。
あまり地理に詳しくなかった学生時代の私でも聞いたことがある街。
アテネを後にした私は、そんなイスタンブールの駅に降り立った。
夜行列車での日本人との出会いはあったものの、私はこのイスタンブールで泊まってみたい宿があり再び一人旅に戻った。
目的の宿の名は
Tree of Life
ラオスで出会ったタカダさんから話を聞き、イスタンブールに行ったらぜひ!と念を押された宿だ。
その時は、有名な日本人宿と聞いて
『日本人宿か〜…』
といった考えだったのだが、シェムリアップでタケオに泊まったことにより、その考えはとうの昔に消えていた。
タカダさんからは聞いた情報によると
「トラム(路面電車)に乗って〝チャンベルリタシ〟(正確な発音でなくてもこんな雰囲気で)の駅で降りればすぐだよ!」
とのとこ。
とりあえずトラムに乗ればなんとかなる!と思い、トラム乗り場を探す。
と、街を歩き始めて感じたことがある。
『なんかアジアっぽい雰囲気がするな…』
建物の感じは違う。
どちらかといえばヨーロッパのような雰囲気。
しかし、ヨーロッパとも違った独特の世界観がある。
今まで訪れた国とは違い、トルコはイスラム教が中心の国である。
シルクロード交易時代からアジア・ヨーロッパの文化が混じり、さらに仏教ともキリスト教とも違うイスラム文化圏。
そう意味ではもちろんアジアとは違うはずだが、ヨーロッパよりは間違いなくアジアを感じられる。
『これがトルコか…』
僅かな時間だがトルコという国の空気を感じ、新しい土地に辿り着いたと気を引き締める。
そうはいっても、動かなければ旅は進まない。
ここで今までの経験を活かし、とりあえず人に聞く。
とはいえ変な人に狙われるのも嫌なので、目に入ったお店の人に声をかけてみる。
こういう時は、客商売をしている人に聞いてみるのが間違いないと自分の勘を信じる。
予想通りすんなりと教えてくれ、さらに店を離れ案内までしてくれる。
この時点でトルコが好きになった!
(単純にアテネよりも親切だったからであろう)
切符の買い方まで教えてくれて無事にトラムに乗ることができた。
ここまでくれば目的地まではあと少し。
とはいえ降りる駅を間違えるのも嫌なので、近くにいた人の良さそうなおじさんに
「チャンベルリタシ?」
と聞いてみる。
するとおじさん、カタコトの英語でもう少しだということを教えてくれる。
さらに自分はその前に降りるけど、この日本人はチャンベルリタシに行くんだ!と周囲の人たちに声をかけてくれる。
そんな親切な人たちのおかげで、無事にチャンベルリタシ到着。
本当にアテネと比べ良い場所である!
(アテネというよりもアテネのおばさんだが…)
ここからは【タカダさんメモ】を頼りに歩いてみる。
とはいえ、通り二本ほど進み下り坂を降りていく。というだけ。
こんなメモで辿り着けるのか?と思っていたが、意外と行けるものである。
無事に〝Tree of Life〟の看板を見つけることができた。
玄関のチャイムを押してみる。
すると、頭上から
「はーい!」
という声が聞こえた。
上を見上げると、窓からこちらを見ている人がいる。
ガチャ!
ドアからそんな音がしたと思ったら
「鍵、開けたよ〜」
と声がかかる。
訳がわからないが、とりあえず中に入ってみる。
ドアを開けると、自転車やらなんかしらの荷物とその横には階段がある。
ひとまず上に行ってみようと階段を上がっていくと、各階にドミトリーらしき部屋がある。
一番上まで上ってみると、そこにはリビングらしい空間が。
「いらっしゃ〜い!」
手前に置いてある机の横にいる男性に声をかけられる。
「日本人でしょ?ここは初めて?」
めちゃくちゃ日本語である!
「そうです…」
突然の日本語での対応に戸惑いながらもチェックインを済ます。
話をした男性は管理人(旅人だが、管理人という仕事をすることで安く宿泊できる)ということらしい。
宿の説明は後でするからと、とりあえず部屋(ベット)に案内してもらう。
階段を降り、案内された部屋には二段ベットがギッチリと並んでいる。
先程はチラッと見ただけだったが、じっくりと見るとなかなかの部屋である。
何が【なかなか】かと言うと、、、
なかなかである...
窓はあるのだが、部屋中に張り巡らされたロープにかかる洗濯物で昼間でも薄暗い。
ベッド以外のスペースには、所狭しと荷物が置かれているので足の踏み場は最低限。
そして、男だらけである。
文字では表現できない空間が広がっている。
奥にはシャワー・トイレがあり、そこに一番近いベッドの上段が私の場所とのこと。
荷物を置いたら説明するから。ということで管理人の男性は戻って行った。
ひとまず、みんなのようにバックパックを空いているスペースに置いて貴重品入れと共に登ってみる。
ヨーロッパではそれほど感じなかったが、久しぶりのカビ臭いベッドとご対面である。
カビ臭いといっても、部屋の中ではベッドからなのか別の場所からなのかは分からないのだが、改めて上から眺めるとよくぞここまで洗濯物をかけたな!という感想になる。
『想像していた日本人宿、バックパックカーの世界だな...』
そんなことを思っていると、何個か隣のベッドが動いた。
「あっ、新入りさんかい?よろしくね!」
洗濯物なのかなんなのか分からない物の中から、男の人が現れて挨拶をしてくれた。
どうやら昼寝中(朝寝?)らしい男性に挨拶を返し、管理人の所へ戻ることにした。
リビング?に戻ると、管理人の男性が先程の場所で他の旅行者と話をしていた。
「あっ、戻ってきたね。じゃあ説明するね!」
宿のルールを説明してもらう。
シャワーやキッチン、宿のパソコンなどの説明の他に面白かったことが、窓(道路側)の方を見るとU字型にベンチ(ソファ?)が置いてあり、中央のテーブルを囲んでいる。
その窓の近くには謎のボタン。
誰かが入口のベルを押すとチャイムがなり、誰かが窓から確認する。
そこで滞在者もしくは泊まりに来た日本人旅行者(さっきの私のように)ならば、ボタンを押し鍵を開ける。
ある意味、最高のセキュリティだ。
一応門限があるので、それまでに帰って来れば鍵を開けてもらえる。
日中も誰かしらはその辺りで過ごしているので問題はないとのこと。
「合う合わないは人によるけど、ツリーは楽しいよ!」
タカダさんの言葉が蘇ってきた。
確かに、合わない人は合わないだろう。
しかし、私にとっては楽しそうが勝っている。
こうして私のイスタンブール、いや【Tree of Life】での滞在が始まった。
