【ちょっと昔の世界一周】 #23 《アンコールワットへの道》
雨の音で目が覚める。
時計を見ると5時をちょっと過ぎたぐらい。
スコールといった感じなのでバスの出発時間には止んでくれるだろう。
昨日はとても楽しい1日になった。
今ではそう思えるが、旅を始めたばかりの頃の自分ならば不安でいっぱいだったであろう。
自分の成長を感じる一日ともいえる日を過ごし、ようやく予定通りの旅が始まる期待を込めながら荷物をまとめ始めた。
とはいえそこまで時間はかからない。
さらに雨なので散歩もできない。
ベットでゴロゴロするのもさすがに飽きた。
まだ7時にもなっていない。
シェムリアップまでの長距離バス乗り場までは、8時過ぎに宿の前まで来てくれる車で行くとのこと。
やることもないのでフロントのパソコンでも、、、
そう思い階段を降りたが、皆考えることは同じようで昨日のように全て使われている。
しょうがないので雨の様子を見に道路の方へ目を向ける。
そうしていると土砂降りの中向かいの市場に向かって走っていく人が何人かいる。
朝から買い物か…
そう思って見ていたが、時間もあるしバスの中で何か腹ごしらえできるものがないかと考え私も行ってみようと決めた。
土砂降りとはいえ道向かい。
さらにいえば対面している部分が入口。
一気に駆け抜け市場に入るとあまり人がいない。
お店(道の両側に商品を並べているだけだが)を見る人も店番の人もほぼいない。
『みんな雨に濡れないために通り抜けただけなのかな?』
そんなことを考えていると、何やら大勢の人の気配がする。
その方向に進んでいきようやく気づいた。
昨日の昼食をとった食堂が大勢の人でひしめき合っている。
どうやら皆が市場に来た目的は朝食の為だったらしい。
せっかくなので私も流れにのってみようと決めたのだが、それにしても凄い人数である。
中央に調理場があり、それを囲むように席がある。
さらにその外側にテーブルと椅子が並んでいる。
朝から店の人はフル回転といったところ。
昨日の昼はゆったりとした感じだったのだが、ひっきりなしに席が埋まっている。
運よく調理場を囲む席が空き腰を下ろす。
店の女性は昨日も来た外国人である私のことを覚えていたらしく『また来たんだ』という表情で挨拶をしてくれた。
周囲の人の料理を眺め、気になる料理を指差し同じものを注文する。
メニューが書いてはあるが、これが一番間違いない注文方法である。
駅の立ち食い蕎麦のような雰囲気で、皆黙々と食べて帰っていく。
今までのようにゆったりとした雰囲気の街なのだが、そんな中にあるバタバタと忙しい空気感を見れて面白い。
腹ごしらえも済ませ外に出ると雨が止んでいた。
荷物を準備し車を待つ。
珍しく予定通りに車が来る。
それに乗り長距離バス乗り場まで向かう。
といってもわずか二、三分で着いたのは昨日散歩した川沿いの道路。
そこには豪華なバスが止まっていた。
バスに乗り込み驚いた。
なんとエアコン付きである。
カンボジアでエアコン付きのバスに乗るとは…
一人感動しながら席に座り出発を待っていると、私たちの後にも大勢の人が乗ってきた。
観光客というよりは地元の人たちということもあり、わざわざ外国人の隣に来る人は少ないようでしばらくはゆったりとしていたのだが、だいぶ席が埋まった頃に来た青年(同い年ぐらいだろうか)が隣に座ってきた。
出発予定時間には席がほば埋まりバスが動き出す。
二日遅れでシェムリアップへ向け出発である。
無事に出発、朝食も食べ満腹、さらに寒すぎもしないエアコンの風という環境もあってか、眠たくなってくる。
そんなウトウトとし始めた時に、隣の青年が声をかけてきた。
「Japan ? China ?」
日本だよと答えると笑顔になり
「ホンマでっか!」
とカタコトながら言い出した。
日本語!?しかも関西弁!?
驚く私にこちらもカタコトの英語と日本語で説明してくれたのだが、仕事で日本の企業と関わりがあったらしく、その時の人が関西人だったらしく少し教えてもらったらしい。
時々飛び出してくる関西弁を楽しみながらしばらく話しバスに揺られる。
そうこうしているうちにバスは広い場所に着いて止まる。
休憩かな?と思うと隣の彼が
「私はプノンペンに行くんで、別のバスに乗り換えるね!」
そう言って荷物をまとめ出した。
どうやらここはバスターミナルのようだ。
「Have a nice trip !!!」
そう言って去っていく彼を含め、何人かを降し再びバスは動き出す。
少し人が減ったこともありゆったりとした車内でウトウトしながら過ごしていると、多少遅れはしたものの無事にシェムリアップに到着した。
シェムリアップは流石に観光地ということもあり、人の流れがとても多い。
バスを降りると早速タクシー・トゥクトゥクの客引きが旅行者目がけ一斉に声をかけてきた。
勢いに負けタクシーに乗る人、無視し歩き出す人と様々である。
もちろん私の周囲も同じように客引きが集まる。
皆オススメの宿を紹介してくる。
サワンナケートの時もそうだったが、客を連れてきたらいくらかマージンがもらえるのであろう。
そんな彼らには悪いが私の行きたい宿は決まっている。
「Takeo Guesthause !!! Japanese !!! Do you know ???」
タケオ・ジャパニーズを言っておけばなんとかなると信じ、言い続けると伝わったようだ。
タケオに行くなら俺に乗れ!と皆言っている。
「How much ??? Who CHEEP !!!」
文法も何もあったものではないのだが、誰が一番安いんだ!という私の意図は伝わったらしい。
皆口々に金額を言い合う。
一人が少しでも安い金額を言うと少しでも安く言ってくる。
まるで【せり市場】の逆である。
下げられない人から少しずつ離れていき、最終的に一番安い値を言ってくれたタクシーに決まる。
車に乗り込み、窓越しに景色を見るとやはり観光地らしく栄えている印象が見てとれる。
道路も舗装されているだけでなく、とても広い。
そんなことを思っていると車が止まる。
どうやら到着したらしい。
料金を払いフロントへ向かう。
すると、さすが日本人宿である。
英語表記の横に日本語で料金表が書いてある。
ドミトリー(ドミ)は満杯だったが個室が空いているらしい。
少し高いがドミは泊まったことがなく、少し不安もあったので個室に決め鍵をもらう。
荷物を置き再びフロントに行く。
チェックインの時に見ていたが、アンコールワットへのシャトルバスの時間が書いてある。
しかも丁寧にも日本語で。
これが日本人宿か…
驚きと共に嬉しさを感じながら時間を確認する。
ようやく明日に迫ったアンコールワット観光に胸を弾ませながら、せっかくなのでシェムリアップを見て回ろうと思い、街の方へと歩き出した。
