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【ちょっと昔の世界一周】 #39 《アザーンの響き》

私の滞在しているTree of Life(ツリー)〟はイスタンブールの旧市街にある。

旧市街はトルコの歴史を色濃く残した建物が多く残っており、観光スポットも多い。

旅を始める前は、イスタンブールに行ったら【アヤ・ソフィア】や近くにある【ブルーモスク(スルタンアフメットモスク)】には行ってみようと決めていた。

歴史的な意味はさておき、とても有名なのでせっかくならば行ってみたいという簡単な理由だったが、偶然にもツリーの立地はブルーモスクへ歩いてすぐである。

これは行けということか!と勝手に思い込み、いざ歩き始めようと思ったのだが、旅を通して好きななった場所がある。

それは、市場である。

日本にいた時は、正直買い物に興味がなかった。
なので、ウィンドウショッピングなんてもってのほか…

それが今や、何もなくても市場を見て歩き回るのが一番の楽しみとも言えるほど、市場散策が好きになっている。

アジアでは市場の活気・喧騒が心地よいこともあり、よく行っていた。
それがイタリア滞在中は、あることはあったのだが雰囲気が違う。
地元の人が集まるという意味では同じ雰囲気なのだが、喧騒度合いが違う。

そんな私にとって、話しには聞いていたイスタンブールのグランドバザールが近くにあるというのはワクワク感しかない。

僅かな時間だが、トルコの中にあるアジア感は好きな感じである。
そんなトルコの市場(バザール)である。

楽しいに決まっている!!

そんな期待を持ちながら、バザールへと歩いて行った。

*****

グランドバザールは想像以上に私を満足させてくれた。

観光客向けのいるかどうかは分からない土産物、いったい誰が買うのであろうかという素晴らしい輝きをした貴金属、日常的に使う衣料品や布地や外国にいることを感じさせてくれる複雑な〝匂い〟を漂わせている香辛料。

さらに旅をする前では想像できなかったが、うるさいほどしつこい客引きとの何も中身のない会話。

そんな光景が広がっている市場は迷路のように入り組み、建物の中だけではなく外にも並んでいたと思ったら再び建物内に戻っていく。

実際にお金を支払ったのは昼食をとった時ぐらいだが、いつまでもいられる楽しさがあった。

ヨーロッパ滞在中にあまり感じられなかった【うるさいほどの人との関わり】が常にあった。

初日ということもあり、軽く見に行こうと思っていたがこれはなかなか抜け出せない。

ツリーもそうだが、トルコという国は人を惹きつける、いや一度ハマったら抜け出せなくなる何かを持っているのかもしれない。

そんな不思議な誘惑が漂うバザールをしばらく見て周り、再び外に出た時に突如頭上に設置してあるスピーカーから大音量が流れ出した。

アッラー・アクバル
アッラー・アクバル

これが【アザーン 】か!

イスラム教の礼拝の時間を知らせる【アザーン 】

話に聞くのと実際に体感するのでは、また違った気持ちになる。

なかなかの大音量。
地元の人にとっては日常でも、旅人にとってはうるさいと言われるだけはあるな…
と思いつつ、自分の常識とは違った文化の中にいることを痛感する。

ちょうどキリもいいし、バザール観光も一段楽。
そんな風に気持ちを切り替え、改めてブルーモスクへ向かってみることにした。

*****

ブルーモスクへの道すがら、気軽に話しかけてくる地元の人たち。
基本は片言の日本語で

「ニホンジンデスカ、コニチワ!」「カラテ!ブルース・リー!」

なのだが、その他によく言われたのは

「イナモト、サイコウネ!」

サッカー日本代表(当時)の稲本選手がトルコリーグに参戦(所属)していたこともあり、話題のネタに敏感なようだ。

「稲本、My friend !!」

と答え、驚いて握手をしてくる人たちに

「It's my special Joke !!」

と言って笑い合う。

実にくだらない会話(笑)

それでも収穫もあった。
会話の流れでトルコ語の「ありがとう」を知ってるかと聞かれ、知らないと答えるとわかるまで教えてくれた。

テシェキュルエデリム(正確な表記ではないが)

最初はなんと言っているかだったが、単語を細かく分けて教えてくれる。
今までも日本人教えてきたらしく

鼻をかむ仕草をしながら【ティッシュ】
次に【キール】と侍の真似をして教えてくれる。
さらに関西弁!と言いながら【エーデ】
最後に【リム】

ティッシュ、キール、エーデ、リム

続けて言ってみてと言った感じで何度か発音練習をすると、親指を立て

「OK !! Perfect !!」

とお墨付きをもらった。

今までもそうだったが、現地の言葉を使えると対応が変わってくる。
こんなことも進んで教えてくれるトルコ人との会話を楽しみながら進んでいると、ブルーモスクが見えてきた。

イタリアでの教会巡りでもそうだったのだが、やはり宗教施設の雰囲気というものは独特である。

そして、その空気感は悪くない。

モスクの中で過ごしていると、祈りを捧げる人から観光客まで多くの人の動きがある。

ムスリム(イスラム教徒)の人たちにとっては神聖なモスクだが、私も含め宗教の違いがある観光客にとっては神聖さの違いがある。

それでも心が落ち着ける場所ということは、目には見えない〝何か〟があるのだろう。

それが〝神〟の存在なのかもしれないが、私には分からない。

モスクの中はそういったことを考えるには最適な空間。
しばらく今までの旅、生活を振り返りつつ考えてみたが早々答えが出るものではない。

それこそこういった考えを追求していくことが宗教なのかもしれないが、今の私にとってはそれ以上に〝旅〟の存在が大きい。

これからの旅、さらには人生の間にいくらでも考える時間はある。
そう思うことにして、モスクを後にした。

*****

その後もアヤ・ソフィア観光や街の散歩をして時間が過ぎていく。

改めてイスタンブールは魅力的な街である。

一休みを兼ねてベンチに座り、トルコに来てよかったと感じつつ今後の予定を考える。

ここからトルコで訪れたい場所は、なんといっても【カッパドキア】である。
トルコに来て行かないなんて考えられない。
(ギリシャに行ってパルテノン神殿に行かなかったのだが…)

その他にも【パムッカレのヒエラポリス(石灰棚)】【エフェソス遺跡】の二ヶ所が気になり、イスタンブールを出発しこれらの観光を終えて再びイスタンブールに戻り、ヨルダンへ飛ぶ。

これが今のところの計画である。

とはいえ、予定はあくまで予定である。

計画通りに進まないのが旅であるというのは、今までの経験で百も承知である。

これからの旅がどういったものになるのか、それは誰にも分からない。
それこそ〝神〟のみぞ知っているのかもしれないが、容易に教えてはくれない。

ならば進むのみ。

なるようになる

これが私の旅の考え。

ずっと外にいたので時間が分からないが、日も暮れている。
そろそろツリーに帰ろうか…

そんな私の頭上で再びアザーン が鳴り響く。

アザーン が鳴るから、か〜えろ〜

誰に聞こえるでもない一人言を口ずさみながら、ツリーへと帰って行った。


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