【ちょっと昔の世界一周】 #43 《仲間との時間》
お店をあげての歓喜の祝勝会を終え、私たちはサフランボルへの帰路についていた。
タケシ君たちは今夜の夜行バスでカッパドキア方面へと向かう予定。
私も明日、そのルートでカッパドキアへと向かうことにしていた。
トルコ観光で最も注目されるスポットである【カッパドキア】
そのカッパドキア観光の拠点となる街は四ヶ所ある。
【アヴァノス】
【ギョレメ】
【ネヴシェヒル】
【ユルギュップ】
その中でもギョレメは周辺のスポットも含め最もいい街。
という話をイスタンブールのツリーで聞いていた。
そんなこともあり、サフランボルからギョレメへと向かう予定で移動を開始していた。
タケシ君、ナオト君の二人もギョレメを拠点にカッパドキア観光をするつもりだったようで、お互いの持っている情報を話していると、あっという間にサフランボルに戻ってきた。
ギョレメ行きのバスまではまだ時間がある。
みんなで夕食を。という話になり、マギーとセリアは一度宿に戻り、私たちのペンションへと来てくれることになった。
国籍は違えど同じ時間を過ごしたこともあり、私たちの仲間意識は相当強まってきている感じがしていた。
そんな仲間が離れていく。
旅をしているからこそ、当然といえば当然なのだが少しでも長く共に時間を過ごしたい。
それぞれがそんな気持ちで準備を整える。
各々用意を済ませて、改めて夕食をとりに出かける。
それぞれがこれまで、そしてこれからの旅のことを話し合いながら楽しい時間を過ごす。
もう少しで二人の出発時間になる。
すると、ナオト君が
「そういえば、サフランボルって夜景も有名なんだよ!」
と教えてくれた。
少しずつ日も暮れてきたこともあり二人が教えてくれた高台へと行ってみると、言葉通りの素敵な景色が広がっていた。

日中も落ち着いた雰囲気のある街並みだったが、日が暮れて家の灯りがもれてくるぐらいで街灯もそれほどあるわけではない。
落ち着いた空気が漂う、幻想的な街並み。
一同、話をするわけでもなく夜景をジッと眺めている。
昼間のカフェでの盛り上がりから、こうして無言で景色を見る。
『旅を通して、素敵な仲間と出会えたな...』
そんなことを考えながら時間は過ぎていき、バスの時間が近づいてきた。
宿に荷物を取りに戻り、そこでタカシ君たちと挨拶を交わす。
「いい旅を!」
今まで何度もこの言葉を言ってきた。
それでも今回の言葉は今まで以上に気持ちがこもっている感じがした。
正直言えば、一日違いで同じ街に行くのでまた会う可能性は高い。
それでも、全く出会うことがなかったかもしれない人たちと、また出会える保証はない。
一緒にいた時間は、一日もない。
しかし、共に楽しい時間を過ごした仲間。
そんな仲間にかける言葉。
いい旅を!
これまでよりもこの言葉の意味を深く噛み締めた。
*****
二人を見送った後、だいぶ暗くなってきたこともありマギーとセリアをヤン君が送って行くことになった。
シオリさんはというと、海に入ったからシャワー浴びてサッパリしたい!と言っていたので、特にやることのない私もヤン君達について行くことにした。
不思議なのだが、彼らの会話はもちろん台湾語。
時折り、私に分かるように英語も(最低限しか理解できないが...)混ぜて話しているが、なんとなく雰囲気から内容が察せるものだ。
途中で話になったのだが、二人は明日別のツアー(これもタクシーレンタルのような形で行きたい所を周るもの)に行く予定だという。
先ほどヤン君には話をしていたがノブも行くかい?と誘ってくれた。
せっかくなら行ってみたい!と言うと、じゃあシオリはどうかなぁ〜?となるが、一瞬の静寂の後
「She say ”OK ! I wanna Go !!”」
(もちろん行く!って言うね!)
と全員一致で彼女ならば「行く!」って言うね。と笑いながら納得した。
翌日、二人が迎えにきてくれると予定を決め宿に戻る。
シオリさんに話をしようとするも部屋にいない。
まだシャワーかな?と思っていると
「おかえり〜。ノブ君こっちだよ〜!」
と宿のテラス席から声がかかる。
行ってみると、他の宿泊客や宿のスタッフを含め飲み始めているシオリさんの姿が。
「挨拶したら、一緒に飲むかい?って言われたから飲んでたわ!ノブ君も飲もうよ!」
断る理由はもちろんない。
一応、明日の件を話すと想像通り即答でOK!
ヤン君は先に寝るね。と部屋に戻ったがその後もしばらく酒盛りは続いた...
*****
翌朝、私は意外に早く目が覚めた。
昨夜は最終的に飲みつぶれたシオリさんをベッドまで運び、そのおかげか?腕が痛い...
私はというと、元々お酒が強いこともありいい意味で調子がいい。
朝食にはまだ早いので、若干の朝霧がかかる中少し散歩に出ることにした。
みんなで歩くのもいいのだが、こうして一人で歩くサフランボルの街もいいものだ。
少しひんやりとした空気の中を歩いていると、ある建物に目が留まった。
まだ早い時間にも関わらず、入口脇に数人が集まって話をしている。
近くを通った際に何気なく挨拶すると、予想通り
「ニホンジンデスカ?」
と聞いてくる。
そうだよ。と答え軽く会話をしていたが、その流れでこんな早朝から何をしているのかを聞いてみると
「Here Bakery」
と教えてくれた。
ベーカリー...
パン屋である。
私も元々はパン屋で働いていた。
なんだか懐かしくなり
「I`m baker too !!」
と言うと、なんと作業場まで案内してくれた。
案内された作業場はとても狭い。
大人二人でほぼいっぱいになる。


突如として現れた外国のパン職人。
それを見ようと部屋の外には数人の人...
ちょっとやってみる?とちょうどパン生地を丸める工程(生地の形を整える)だったようで、生地を指さしている。
体に染みついたことは、咄嗟でもできるものである。
特に意識することもなく、サッと丸めていくとドアの向こうにいる人たちから歓声が起こる。
これでも五・六年、ほぼ毎日のようにやっていただけあってあっという間に用意された生地を丸め終わる。
すると、生地を準備してくれた人が、やるじゃないか!といった感じで、粉だらけの手で私の肩をバンバン叩く...
肩についた真っ白な手形...
全員、あっ...といった表情になったが、一瞬のうちに笑いに変わる。

その後も少し様子を見せてもらい、そろそろ帰ろうとすると
「これ、持ってきな!」
という感じで、焼き上がったパンを何個か袋に入れて渡してくれる。
いくら?と聞くが
「You are Japanese Baker !!」
と言ってお金はいらない!とジェスチャーで伝えてくる。
一度は断るのが社交辞令かもしれないが、ここはトルコ。
そして、国は違えど同じパン職人同士。
これも旅の出会いの一つ。
彼らもある意味で旅の仲間と言ってもいいかもしれない。
ありがたく受け取りお礼を伝え、私は小麦粉で白くなったシャツを着て焼きたてのパンと共に宿へと戻って行った。
