【ちょっと昔の世界一周】 #60 《旅をしている》
「Big !! So big !! but,,, 」
イタリアからギリシャへと向かう船の中での会話が蘇る。
あの時出会った韓国人の彼の言葉を思い出す。
確かに、目の前にあるピラミッドは大きい。
本当に大きい。
だが、それ以外は...
そんなことを思いながら、ピラミッドの中へと進んでいった。
*****
砂漠ツアーから戻ったカイロでの夜、宿のメンバーで話をしているとタク君、ナオヤ君たちからピラミッドへ一緒に行きませんかと誘われた。
二人は明後日には別の街へと出発するので、ピラミッドさえ見ておけば再びカイロに戻ってきた時にゆったりできるという考えらしい。
私も明後日の夜の便でスペインへと旅立つこともあり、できれば明日のうちに行っておこうと考えていたのですんなりと首を縦に振る。
そうしているうちに、新たに宿に来たマサユキさんも一緒に行くことになり、ツアー後に急いでピラミッドを見に行ったユウタさんからバスなどの情報を聞いてその日は眠りについた。
そして翌日。
市内からピラミッドのあるギザへは電車と乗合バスを使えば行けるらしい。
移動自体はそんなにかからないということだったので、ユウタさんを見送りつつ昼食を食べに行き、教えてもらった駅へと歩を進める。
マサユキさんは有給を使って、短期間ではあるがアジアを中心に度々海外にきているらしい。エジプトは初めてとはいえ、海外自体は慣れていたのだが短期間の旅ということもあり、観光ツアーや移動はタクシーなどを使うことがほとんど。
なのでこういった移動は慣れているようで慣れていないからワクワクする!と言っている。
そんな私たちだが、ユウタさんが言っていた通り女性専用車両(宗教上)に気をつけながら、問題なく目的地へと辿り着く。
はずだった…
駅からは乗合バスを使っていけば入場ゲートの近くまで行ける。
そう聞いていた。
観光時間は三〜四時間ほどなので、昼過ぎについてゆったりと見て回ってちょうどいいぐらいかな。と予定を立てながら乗合バスを探していると、三人からこんな提案がある。
時間のこともあるし、ここから近いはずだからタクシーでサッと行こう!
確かにそれは一理ある。
ペトラではないが、観光時間は長い方がいい。
だが、タクシーには良い思い出と悪い思い出の両方がある。
なんとなく、ここまで来たのだからバスがいいと思っていたものの、みんなが乗り気になっているし、何かあっても仲間がいるからいいかなと考えその提案にのってみることにした。
タク君たちがこれからの旅の練習をしたいというので任せてみると、そこまでふっかけられてはいないであろう値段で見つけてきてくれる。
車に乗り込み一安心…
ではなかった。
着いた場所からはどう考えてもピラミッドは見えない。
要は説明&運転手の理解が足りなかったようだ。
旅をしていればまぁしょうがないと思うこと。
なのだが、三人とも大慌て…
運転手の話ではここが言っていた場所だ。
二人からしてはピラミッドじゃない。
多分お互いに納得はしないだろう。
マサユキさんは、改めてピラミッドまでお願いすると、こちらの方が不利な状況ということもありかなりの値段をふっかけてくる。
そこで、私も参戦してみた。
その前に近くにいたおじさんにピラミッドまでの行き方を聞くと、近くの乗合バスで行けるらしい。
なので運転手に対し
「こちらの納得する値段でピラミッドまで行くなら乗る。できないならここまでの料金も払わない!」
ということを伝えた。
もちろん引かない。
なので話を切り上げ、驚く運転手を尻目にバス乗り場へと向かうことにした。
「こんなことあるの…」
と呆気にとられているタク君たちだが、海外あるあるだよ。と返す。
その代わり、いい人も同じぐらいいるからね!と伝え、しばらく待って教えてもらったバスに乗る。
今度はピラミッドをジェスチャー付きで確認し、しばらくすると無事に到着。
入場ゲートへと着いたのだが、問題は時間。
今から入ったら急ぎ足で回ることになるだろう。
話し合いの結果、それぞれ後日訪れることに決まった。
「いい勉強になった…」
そう呟くタク君たちと共に、ピラミッドが見えることで有名なピザハットで写真を撮り、その日は宿へと戻って行った。


ピラミッドからの帰り道、
「ノブさん、なんでそんなに何事もなかったかのように対応できたんですか?」
と質問される。
すると、特に考えもせずに答えが出てきた。
「旅行じゃなくて〝旅〟をしてるからかな...」
そう、私がしているのはどこかの何かを楽しむ〝旅行〟ではなく、その場の全てを感じて楽しむ〝旅〟
私は旅をしているんだ...
*****
その翌日、私は朝から一人でピラミッドへと向かった。
夜の便に乗るので、少しでも時間を無駄にしないように早くから動き出した。
さすがに二回目となると、スムーズなものである。
なんの問題もなく到着し、チケットを買い中に入る。
遂にピラミッドとご対面である。


だが…
人によるとは思うが、特に感動がなかった。
前日に遠目ながら見ていたこともあると思う。
さらに、船での出来事で〝大きいけど…〟という話を聞いていたこともあるだろう。
アンコールワットやベンメリア、イタリアで見た遺跡の美しさ、カッパドキアで感じた自然とも違う。
なんと言っても直前でペトラを見たことで、正直なところピラミッドの魅力が薄まってしまったようだった。
とはいえ、そこはさすが世界的な観光スポット。
観光自体は充実したものになった。



一通り見終わり、カイロへと戻る。
※写真はこちら→【Pyramid,Egypt】
その後、考古学博物館、オールドカイロと見て回り、出発準備をするために宿へと戻る。




中に入ると、部屋からバックパックを持ってきている女性二人組が、、
オーナーが私に気づき声をかけてくる。
「フタリモ〝スペイン〟ニイクヨ。タブン、オナジヒコウキ!」
話を聞くと、キョウさんとメグミさんといって二人とも今日、偶然にも私と同じ便でスペインへと向かうらしい。
二人とも空港まではタクシーで行く予定だったが、誰か他にいないかと探していたらしい。
詳しく話を聞いたが、二人がその便に乗るのは当然である。
彼女たちは一緒に旅をしているのだが、なんと私と同じ世界一周航空券を使っての旅の途中であった。
とはいえ、期間としては四ヶ月なので私に比べかなりの早足。
ちょうど私が砂漠ツアーから戻った日にカイロに到着しペンションさくらに泊まり、昨日ピラミッドを観光。
二泊三日しかエジプトにいないんです。と言っていた。
そういえば、ツアーから帰ってきた日にコシャリ探しをした後にみんなで夜の散歩に出かける際、挨拶をしていたことを思い出した。
昨日は昨日で早くからピラミッドへと向かった二人に対し、私たちはゆったりと出かけていたのであまり話をしていなかった。
旅を始めてから多くの日本人旅行者に会ってきたが、同じように回っている旅人との出会いは初めて。しかも二人同時にである。
驚きと喜びの気持ちで、もちろん一緒に行きましょう!と答え、準備をする。
すると、他の宿泊客も何人か集まり、どうせならみんなで夕食でも食べてその流れでタクシーに乗ろうということになる。
チェックアウトを済ませ、私たちは荷物を持ちつつ宿の近くの食堂へと向かう。
するとその中の一人が、エジプト名物コシャリを食べれる店を見つけた!というので、行ってみることにした。
私はすでに食べたことがあったが、皆は食べていないらしい。
というのも、今の宿にいるメンバーは旅というよりも短期間の観光旅行という人たちが多かった。
なので、いつもの私に比べれば若干の高級感を感じていた。
話を聞くと、皆食事は旅行者向けのレストランらしい。
昨夜、マサユキさんがコシャリを食べてみたいと言うので前日の店に連れて行ったのだが、そういった地元の人向けの店はあまり利用したことがなかったらしい。
緊張しながらも美味しさに感動していた。
海外慣れしているマサユキさんでそんな感じだったので、何となく感じていたが多分私と皆では旅の仕方が違うと思っていた。
そして、いかにも観光客向けのレストランで、いつもよりも倍の値段のコシャリを食べて空港へのタクシーへと乗り込んだ。
旅行と旅
明確な違いはないはずなのだが、何となく私には旅という方が似合っているのかな...
そんなことを考えながら、改めてヨーロッパへと向かうのであった。
