【ちょっと昔の世界一周】 #57 《神様はいるのかな!?》
砂漠に沈む夕陽を眺める。
前日までは想像もしていなかった光景を目の前に、私のエジプト滞在二日目は過ぎていった...

*****
空港から街中へと来てから、およそ一時間ほど過ぎている。
「一緒に探してやる!」
そう声をかけてくれた男性のタクシーに乗り、今日の宿を探して私はエジプトの首都〝カイロ〟の街中を巡る。
巡ると言ってもタハリール広場周辺を周っているだけなのだが、なかなか見つからない。
最初に私が見当をつけて歩いた道を通るが、看板らしきものは見当たらない。
そこから何本か隣の道路を探してくれるものの、やはりない。
私の勘は当たっていたようで、運転手の男性は私の宿を真剣に探してくれている。
時折、車を止めては窓越しに道行く人や道路沿いのお店の人に宿の名前を伝え、何やら話をしてくれている。
ペンションさくら
私が聞いた話では、タハリール広場からさほど離れていないはず。
だが、見つからない。
ここまで探して(私というよりも、タクシーのおじさんがだが…)見つからないということは、違う宿にしろということなのかもしれない。
そんなことを思い始めていたが、おじさんは諦めない。
再び、私が最初に歩いた道を広場に向かい進んでいく。
ここでもおじさんがいつもの流れで車を止めて歩いている人に声をかける。
こんなにも熱心に助けてくれるとは、一度は疑った自分が恥ずかしい…と、思っていると、今回声をかけた青年が何やら指を指している。
おじさんは青年と話し終えると、私が乗る後部座席を向き
「Hotel !! OK !!」
と言い親指を立てる。
青年が指を指した辺りまでゆっくりと車を進め、そこから脇道を覗く。
Pension SAKURA
少し道を入った所にそう書かれた看板が見える。
顔を見合わせるおじさんと私。
自然とハイタッチを交わす。
看板があるといっても、広場からの通り沿いというわけではなく、宿の入っている建物に付いているということだったようだ。
感謝の気持ち。
といっても私の言語力では〝Thank you〟とアラビア語の〝シュクラン〟しか知らないのだが、何度も何度も繰り返す。
おじさんにもその気持ちは伝わった様子。
よかったな!と満面の笑みを浮かべてくれる。
乗車前は〝お金〟のことを気にしていたのだが、ここまでしてもらってはさすがにお礼をしたくなる。
財布を取り出し、いくらか渡そうとするとおじさんは首を横に振る。
言ってることを再び要約すると、やはりアラーの教えということらしい。
とはいえ、これだけのことをしてもらったのに…
そんな私の様子を見ていたおじさんが、ハッとしながらダッシュボードから何やら紙を出してきた。
そこには“Tour”の文字が。
どうやら旅行者向けのツアーのチラシのようだ。
何となく言われたことをまとめると、ピラミッドやカイロの周辺を案内するツアーもやってるから宣伝しといてくれ!という雰囲気だった。
そのチラシを受け取りつつ改めて、お金は...と言おうとするも、断固として受け取る様子はない。
ここまでする人にこれ以上言うのは逆に失礼だと思い、彼の親切心に甘えさせてもらうことにした。
改めてお礼を伝え、バックパックを背負い宿へと歩いて行く。
到着早々、エジプトという国が好きになれる出来事だった。
*****
看板が掲げられている建物に入る。
が、どうやら宿自体は上の階にあるようだ。
そして、ここで話に聞いていた状況になる。
設置されているのに使えないエレベーター
エジプトではなぜか、エレベーターがあるのに使えないことが多く、宿のある上の階まで階段を使わないといけない。
そんな話だったが、大袈裟に言ってるんでしょ。と考えていた。
しかし、その通りだった...
荷物を背負い、日差しはないとはいえ気温の高い中階段を登っていく。
想像よりもキツイ...
ようやくドアの前に辿り着いた頃には、息が切れている。
対応してくれたオーナーの男性は、聞いていた通り日本語に問題はなかった。
そして、だからこそ私にとって残念な結果をすぐに知ることができた。
満員
まさかの空き部屋、空きベッドがない。
明日になれば空くが今日は誰も出て行かないとのこと。
残念ではあるが、こればかりはしょうがない。
人気があるからこその結果、と受け止める。
さらに、オーナーが別の宿を紹介してくれる。
値段を確認し、なんら問題がないのでお願いをする。
向こうに確認するから中で休んでなと言われ、共有スペースであるリビングで休ませてもらう。
中に入ると、想像通り日本人だらけ。
すぐに一安心できる。
荷物を下ろし、椅子に座り挨拶をして世間話。
改めて、スムーズに会話ができるようになった自分に感心しながら話をしていると、興味深い話を聞けた。
砂漠ツアー
大学の同級生で旅行中のタク君とナオヤ君の二人は、明日砂漠を巡る一泊二日のツアーに参加するらしい。
砂漠
なんだろう、言葉を聞いただけで妙にワクワクしてしまうこの感覚は...
ちょうど戻って来たオーナーも話に入り、よかったら参加するか?と聞いてくる。
ツアーは明日の早朝に出発する。
今日は別の宿だが、明日の朝に荷物を持って来てくれたら、ツアー中はそのままベッドと荷物を確保しとくよ。と提案してくれる。
先ほど大活躍した私の勘は、行け!と言っている。
そのまま申し込み、宿に荷物を置いたら明日の準備をする二人に合流するから戻ってくると話をし、オーナーに付いて本日の宿へと向かう。
こちらも、同じように永遠に修理中のエレベーターのある建物の上層階の宿。
部屋も問題なく、チェックインを済ませ再び〝さくら〟へと戻り、二人と共に街歩きへと向かう。
どうやら、ツアーは周囲の観光スポットを巡り、砂漠で一泊するらしい。
砂漠ということは当然飲み物はない。
なので、暑さのことも考えて水を多めに持ち込んだ方がいいらしい。
水を求め歩き回る私たち。
とはいえ、水を買うぐらいどこでもできる。
二人は大学の同級生で、初海外でエジプトへと来たのだという。初めてがエジプトとは、なかなかだね。と言うと、そのこともありカルチャーショックだらけらしい。
カイロ三日目らしいが、初日はほぼ宿周辺で過ごし二日目は考古学博物館に行ったぐらい。ピラミッドは砂漠ツアー後に行く予定でまだ行ってないし、街歩きもさほどしていない。
二人に比べれば、私の方が少しは旅慣れしていることもあり、どんどん進んで行く。
広場と宿の位置関係もつかんだので、迷わずに動き回りウロウロしながら過ごす。
なんとなくの私の街歩きに付き合ってもらうような形で、水やお菓子を買っていく。
「ノブさん、メチャクチャ頼もしいですね!」
こんなことを言われ、嬉しくもありどこか恥ずかしさも感じながら準備を整え宿に戻る。
そこで他のツアー参加者にも出会う。
二人の他にユウタさんとシホさん、リエさんと私を合わせ合計六人。
出発は早朝、他のメンバーは皆さくらに泊まっているのでいいが、私は別。
遅れないようにとオーナーに説明を受け、宿に戻り明日に備えることにした。
とはいえ、まだ夕飯も食べていない。
それに暗くはなってきたがまだ日は沈んでいない。
旅の最初は暗くなったら防犯上、できるだけ宿の近くで過ごしすぐに戻れるようにしていたが、今やそこからが本番のような感じ。
ツリーのように日本人が多ければ宿で過ごすのもいいのだが、今日の場合は外で過ごすか...
そんなことを考えながら歩いていると、脇道にテーブルを並べ椅子に座った人たちの姿が見える。
不思議なことに、テーブルには料理が入った皿があるが誰一人手をつけず、会話をしたり皿を見つめている。
なんだろう?と思っている私の様子に気づいた一人が声をかける。
「Dinner !!!」
ディナー??
説明を受けても理解できていなかったが、すぐに意味が分かった。
街中にアザーンが鳴り響く。
ラマダン明けの時間だ!
それをほぼ同時に一斉に始まる食事。
皆、待っていたのだ。
タクシーでも感じたが、信仰心は素晴らしいなぁ〜と思っていると、先ほどの男性が手招きをしている。
「一緒に食べよう!」
周囲の人たちも自分たちの料理を少しずつ分けてくれる。
最終的に満腹になるまでご馳走してもらい、素晴らしいスタートを切れたエジプト滞在。
ムスリムではない私にも、神の力を分けてもらえたのかな…という気持ちになりなりながら宿へと戻って行った。
