【ちょっと昔の世界一周】 #20 《一人旅は一人じゃない》
目が覚め、部屋の外へ出るとメコン川から流れてくる風が心地良い。
昨日はワットプーを見たことで遺跡の魅力を感じられた。
本来は予定していなかったが、やはり【アンコールワット】に行ってみたくなった。
その為にパークセーへ戻り、カンボジア行きの準備をしよう。
昨夜はそう決めて眠りについた。
宿の従業員に聞くと、パークセー行きのバスが宿の入口に来るからそれに乗っていけばいいとのこと。
どうせなら早く戻ろうと思い早朝にチェックアウトをした。
が、ここは海外。
日本とは違う。
なにせここに来る時も色々とあった。
覚悟はしていたがやはりバスは来ない。
宿の入口のゲート下で待っているが、一本道の先には何も見えてこない。
『また乗り遅れるとかないよな〜』
そんなことを考えていると、様子を見ていた宿の従業員のおじさんが声をかけてきた。
声をかけたというよりもバイクに乗ってやってきたかと思うと、後ろを指差し
「乗れ」
と言っている。(そう感じる)
どうやら舟の乗り場まで連れてってくれるようだ。
そこに行けばパークセー行きの車があるから案内してくれるとのこと。
チャムパーサックへの訪問は、最初から最後まで予定通り行かない。
しかし、それが楽しい!
お言葉に甘えバイクにまたがる。
しっかりと腰を掴め!と指を指すので掴むと、おじさんは勢いよくハンドルを握りしめた。
昨日は徒歩から始まり、自転車でも訪れたので距離感は知っていたがさすがバイク。
あっという間に到着した。
着いてみると昨日の小舟とは違い、荷台にたくさんの人が乗っているミニバスとそれが乗るぐらいの大きなイカダのような物が水上に浮かんでいる。
おじさんがミニバスの運転手と話をして乗せてくれることになった。
送ってくれたことも含め、おじさんにお礼を言いバスに乗り込む。
その時点でギュウギュウだったが、その後に来た人たちも乗り込むので乗車率は100%超えといった様子。
言葉は分からないが、そろそろ出発するようだ。
その時、一台のミニバスがやってきた。
見てみると外国人旅行者がたくさん乗っている。
どうやら街中に泊まっていた人たちを乗せたバスのようだ。
本来なら私もあのバスに乗ってくるはずだったのであろう。
バスの運転手とイカダの運転手?が話をしている。
そしてバスの運転手が、しょうがない...といった雰囲気で車に戻って行くと同時にイカダが動き出した。
想像するに重量的に一度出発するようだ。
『バイクのおじさんのおかげでスムーズに進めた!』
心の中で改めておじさんに礼を言い、昨日とは違って快適な環境で川を渡っていった。
*****
何事もなく川を渡り終えると数人の人たちが降りていった。
どうやら純粋に川を渡るだけの利用者もいるようだ。
人が減ったバスが動き出す。
少し人が減ったことでゆったりと座れる。
だが、そんなゆったりとした時間はあっという間に過ぎていった。
「パークセー!パークセー!パークセー!」
走りながら運転手がずっと大声を出している。
多分パークセー行きということで呼び込みをしているのだろう。
その声に気づき何人かが乗ってくる。
再び乗車率100%超え。
しかし、この時はまだよかった。
最後に乗ってきたのはお婆さん。
それまでは旅行者である私が座っていても
「あんたは座ってな!」
という感じで周りの人が立ってくれたりしていた。
それが今となっては若者は私のみ。
ここは譲るべきだろう。
そう思い席を譲る。
立ち上がったまではよかったのだが、バックパックを持った私がいる空間があまりない。
どうしようと思っていると、運転手がこっちだ。と手招きしている。
そこはステップ...
ステップに乗り、柱に掴まる。
背負ったバックパックの下に床はない...
『まぁ、なんとかなるだろう』
そう思った矢先、満員の乗客を乗せ、これ以上お客さんを乗せなくてよくなったバスは、先ほどまでのゆったり運転が嘘のように猛スピードで走り出した。
時間にしてはそれほどではなかったのであろう。
しかし、死を覚悟したと言っていいぐらいの体験になった。
なにせ道路が舗装されているわけではない。
何度車が跳ねたことか...
その度に足がステップから浮く。
着地を失敗すれば大惨事だろう。
さらに所々でやってくる中途半端な舗装。
境目を通り越す度に大ジャンプをする。
同じように半身が空中といった体勢の他のお客さんは慣れているようで、涼しい顔をしている。
「ここを掴め!」と教えてくれたり、ヒヤヒヤしている私の様子を見て楽しんでいる様子。
アドバイスもあり少しずつだが慣れてきた。
『俺ってこんなバランスよかったっけ...』
そんなことを何度も繰り返しているうちに、街が近づいてきたようだ。
車のスピードが落ち着いてくれた。
それまでのことを乗り越えてきた私にとっては、周囲の景色を眺める余裕も出てきた。
建物が増えてくる。
ほぼ一日ぶりに戻ってきたパークセーの街だが、とても懐かしい感覚になった。
考えてみれば旅が始まってから【戻る】ということをしていなかった。
当たり前だが【旅】という行動中は進むことが基本だろう。
それが今は戻ってきた。
故郷でもなければ、たった一日過ごしただけの街。
しかし、戻ってきた街。
私たちを乗せたバスが止まる。
降りた場所はサワンナケートからのバスが着いた場所の近くだった。
この辺りに何があるかはもちろん覚えている。
バスを降り、迷うことなく前日の朝にチェックアウトした宿へ向かう。
ドアを開け中に入ると、宿のお婆さんが私に気づく。
「部屋空いてるよ!」
特に言葉にしなくても自然と迎え入れてくれる。
チェックインを済ませ、カンボジア・アンコールワットへの準備をすることにした。
『せっかくならあの旅行会社に行ってみるかな…』
色々あったが、結果的にいい体験をすることができたのもあそこのおかげ。
どうせなら知った店がいいと思い足を進める。
歩き出したもののお腹が空いた。
時間的に朝食を食べていなかったので当然だなと思い、とりあえず早めに用を済ませてゆっくりご飯でも…と思っていると、途中にある空き地の横でジュースを売っている。
飲み物でもいいから、と買いに行くとどこからか
「サバーイディー!ジャパン!?」
と声が聞こえる。
声をする方を見ても誰もいない。
『これは昨日と同じだ…』
スッと近くにある木の上を見る。
予想通り木の上から子どもたちが手を振っている。


挨拶を返し、写真撮っていい?と聞くと喜ぶ。
こういう時に写真は便利。
一気に距離が縮まる。

特に内容があるわけではない。
それでもこういった関わりの時間は私にとって旅の間の大切な時間。
人との関わりがあると元気になれる。
*****
旅を始める前のこと。
一人旅=一人を楽しむ
そう思っていた。
確かに間違いはない。
だが今はそれに加わることがあると知った。
それは
一人を知ることで、人の大切さも知ることができる
以前も感じたが、口ではなんとでも言えるがやはり人は一人では生きていけないのだろう。
少なくとも私はそうだ。
ラオスに来てその感情をより強く感じられた。
次はカンボジア。
どんな旅が待っているのだろう。
