【ちょっと昔の世界一周】 #35 《時には怒りに身を任せる...》
ギリシャに入国し三日目の夜。
ギリシャ(EU)出国のスタンプを夜行列車の中で押してもらう。
私はトルコの首都、イスタンブールへと向かっていた。
*****
夜の間は大変だった船の旅にも朝を迎える頃にはだいぶ慣れていた。
船の食事は高いと聞いていたので、朝食がてら事前に買っておいたお菓子類を広げる。
デッキ近くには備え付けのテーブルと椅子もあるので、昨夜はなんだったんだと思えるほどゆったりとした時間。
食後には、時間潰しにとバンコクで買っていた本を読んで過ごす。
まだ到着まで時間はあるが、こういう過ごし方も悪くないと思っていると目の前を一人の旅行者が通り過ぎた。
フッとお互いに目が合う。
彼は私と同じようにバックパックを背負い、サブバッグを抱えている。
要は同じような旅人だろう。
どちらからともなく「Hi !!」と声をかけ合う。
そここら、わずかに私の方が早く「Japanese ?」と尋ねる。
彼は首を横に振り「I'm Korea !」と答えた。
日本人じゃなかったか〜と思ったものの、同じアジア人として自然に会話が始まった、
とはいえ、そこは私の英語力。
どこまで理解しあったかは分からないが、話を聞くと彼はドイツに留学中の学生で夏休みを利用して電車でヨーロッパを周っているらしい。
ギリシャからは北上し、東欧を見てドイツへ向かうとのこと。
私もこれまで、そしてこれからの自分の旅のことを話して時間が過ぎていく。
細かい内容は別として、意外となんとかなるものである。
私はこれからトルコまで向かいその後エジプトにピラミッドを見に行くと言うと、彼も以前エジプトに行って来たと言う。
話が広がるかと思い、ピラミッドはどう?と聞いてみたが、苦笑いをしながら
「Big !! So big !! but,,, 」
そこから何かを言おうとしたが、私の英語力を理解してくれているからか、分かりやすい単語を考えてくれているようだ。
なんとなく彼の言いたいことは理解した。
「OK !! ピラミッド is BIG !! Only BIG !!」
と言うと、その通り!といった感じでハイタッチを交わす。
こんな感じで言葉は通じなくともコミュニケーションはとれるもの。
これが旅というものの楽しさであろう。

ピラミッドはデカい。しかしその他は...といった話から、タカダさんに以前聞いていた「東欧の女性は美人が多い!」という話で盛り上がっていると、段々とデッキに人が増えてくる。
どうやらギリシャ到着までもう少しのようだ。
ようやく陸地に降りれると思うと、少し気が楽になる。
何事もなくパトラの港に到着し、韓国人の彼とはお互いの旅の無事を祈りながら別れる。
「Have a nice trip !!」
この言葉を言うのも何度目だろう。
旅をする前は一人旅だし使う機会があるのかと思っていたが、想像以上に使っている。
それだけ旅の間に人との関わりがあったということだろう。
下船後、乗客はそれぞれ行きたい方向へと歩いていく。
話には聞いていたが、ギリシャはEU圏内。
同じくEUのイタリアに入国した際に、パスポートチェックを終えているので何もすることなくギリシャを旅することができる。
一瞬『あれっ…パスポート』と思った事は置いておいて、私もとりあえず歩き出す。
ギリシャ最初の街はパトラ。
しかし、申し訳ないがパトラに用事はない。
首都【アテネ】へ行くためにどうすればいいかを聞くために、ひとまずフェリー乗り場のインフォメーションへ行ってみる。
そこで、アテネへは電車が行くのがいいが今から行くと夜になるということを教えてもらう。
さすがに昨晩のこともあったので、夜に宿探しは嫌だと思いパトラで一泊することに決め、ついでに宿の情報も聞く。
イタリアに比べれば物価も安そうだが、とりあえず安いと聞いた宿へ行ってみると教えてもらった通りの金額で快適な部屋。
すぐにチェックインを済ませ、一休みをしつつアテネ行きの電車が出る駅の場所を確認に出かける。
駅の下見も終え、しばらく散歩をしてみたがイタリアとは雰囲気が違う。
表現しづらいが、違う。


同じEUでも元々の国の違いが出ていること感じながら、船での疲れをとるために早めに宿へと戻り、ギリシャでの最初の夜は過ぎていった。
翌日、早い時間の電車でアテネへと向かった。
やはりベットでの眠りは快適だった。
さらに言えば、陸の上はいいモノだ。
すっかり体力も回復し私の乗った電車はアテネへと向かう。
その数時間後、私はギリシャを離れることを決めた。
*****
アジアとは違い、さすがヨーロッパである。
パトラを出て、予定通りにアテネへ到着する。
さすが首都である。
駅に着くと人の流れが違う。
電車移動で着いた時の私の流れは変わらない。
いつも通り、宿を探すために駅の中にあるツーリストインフォメーションへと向かう。
他の場所からも電車が到着したタイミングだったからか、インフォメーションは少し混んでいた。
列に並び駅構内を眺めていると、インフォメーション横にあるチケット売り場には【Istanbul,Turkey】の文字が見える。
アテネで何日か過ごしたら、次はイスタンブールへと向かう予定。
その時はここでチケットを買えばいいのか…
そんなことを考えていると、私の前に並んでいる数人のグループが大きい声を出し始めた。
何事かと思い目をやると、インフォメーションのおばさんと揉めている。
英語やその他の言語で言い争っているが、お互いに怒っていてどちらも引かない。
結局、グループの中の一人がもういい!といいう感じで離れていき、駅中の人たちが注目した争いは終わりを告げた。
そして、私の順番である…
見るからにおばさんは怒っている。
『嫌だなぁ…』
そう思ったが、頼るところはここしかない。
ミラノでの思い出が蘇ったが、ここはギリシャ。
もうあんなことはないだろう!
そう思ってまずは挨拶をする。
「Hi !!」
「……」
返事はない。
「Hello !!」
「…..」
またしても返事はない。
「I'm looking for Hotel…」
「NO !!!」
NO !!! ってなんだ?
もう一度聞いてみる。
「I'm looking for Ho…」
「NO !!!」
完全な八つ当たりである。
直前までの言い争いでNGワードを言われていたおばさん。
そこにやって来た私に当たっているのだろう。
相当腹を立てているのであろう。
それは理解できた。
しかし、あくまで仕事中である。
もう一度、同じ質問をしようとしたのを察したのか、今度は私が口を開く瞬間に
「No !!!」
この瞬間、私もキレた…
「○×△□▼◆◉▷!!!!」
要約し丁寧にすると『怒る気持ちは分かるけど仕事だから、頑張ってね!』
という内容を、怒鳴りつけていた。
呆気にとられるおばさんを睨みつけながら、さらに『気分を悪くしたので、ギリシャの滞在を早めに切り上げさせていただきます!』という内容を再び駅中の注目を浴びている状況で、とても大きな声で伝えさせていただき隣のチケット売り場へと向かった。
「Istanbul !!! Turkey !!! SOON !!!」
(早くギリシャを出たい!!!)
チケット売り場にいたおじさんは驚いた様子ではあったが、一部始終を見ていたこともあり理解してもらえたようで、急いでチケットを探してくれた。
イスタンブールへは夜行列車で行く。
できればこのまま乗りたかったのだが、当日分はすでに埋まってしまっていた。
それでも翌日は空席があるというので、その場で予約・購入する。
流れでおじさんは駅の近くの宿を教えてくれた。
「Sorry…」
そう声をかけてくれるおじさんに
「Thank you so much !!」
私が知っている限り最大限の感謝の言葉を伝え、握手をしようと手を出す。
驚きながらも手を出してくれたおじさんと握手を交わし、隣を見ることはなく駅を出る。
『あのおじさんに最初に出会えたら違ったかな…』
そんな思いで宿へと向かい、ギリシャ最後の夜が過ぎていった。
*****
そんなこんなでギリシャを離れることを決め、夜行列車へと乗り込む。
もしかしたら違った流れもあったかもしれない。
しかし、今の私にはこの流れなのだろう。
流れに身を任せる
こうして、私の旅は進んでいった。
