農業問題 素朴な疑問4 日本のタネが危ない 真の目的は何? 小林信也
日本のタネが危ない!?
少し調べるだけで、日本の農業政策にはいくつもの問題点、疑問点があることがわかる。
食べる立場の僕がいちばん首を傾げ、怒りや不安を覚える問題のひとつは「種」に関わる現状だ。
2018年に『種子法』が廃止される時には、「国産の美味しいコメがなくなる」とか、「外国産のタネに支配され、日本人は遺伝子組み換え農作物を食べるしか道がなくなる」などと警句が発せられ、どういうことかと心配した。ところが国側の発信は、「日本の農業を守るため」という大前提で語られ、「必要な改革、対策をしたんだ」という自信にあふれている。2021年4月から適用された『種苗法の一部改正』と合わせて根強い反対運動があったが、国はこれらを押し通した。一体何が真実なのか、背景にある本当の思惑は何なのか? 情報を整理すると、多くの人が反対している理由の根本は、それが「日本国民の安全と未来の豊かさを軽視している」からであり、「アメリカやアメリカ企業の思惑に支配されているのではないか」、つまり何らかの利権構造や外圧によって、大切な日本人の食が脅かされているという危機感にある。
「野口のタネ」野口勲さんの警鐘
僕が《野口のタネ・野口種苗研究所》の代表を務める野口勲さんを知ったのは、《季刊どう》186号(2015年秋号)で野口さんのインタビューを読んだ時だった。野口さんは埼玉県飯能市で全国の在来種・固定種の野菜のタネを扱う種苗店の三代目。家業を継ぐ前は、漫画家・手塚治虫さんの名作『火の鳥』の担当者だったという経歴にも目を丸くした。2年後に改めて《季刊どう》の取材に応えた野口さんの話を総合すると、
「いま世界の農家で使われるタネのほとんどが『F1種』と呼ばれる一世代限りしか使えないタネだ」という。だから、農家は実ったタネを次の作付けに使えない。栽培するには毎年、タネを企業から買う必要がある。しかも「F1種の中でも『雄性不稔』と呼ばれるおしべのないタネが増えている」
タネなしの野菜ばかり食べて人間はどうなる?
これは世界人口が爆発的に増える状況の中、「世界で必要な食糧を確保するための増産対策」と言われる一方、意図的に人口減少を図るための策謀との見方も指摘されている。どういうことか? 野口さんの見解を《どう編集部》が伝えている。
『「雄性不稔」とは、男性機能を失った植物のことを言います。動物では無精子症と言い、植物では雄性不稔と言う男性機能を失う現象は、動物でも植物でも、細胞の中にあるミトコンドリア遺伝子の一部が異常になることによって起きると言います。しかもこの、ミトコンドリア遺伝子の異常は、母系遺伝によってすべての子に遺伝していく』
インターネットで検索すると、NEXT WISDOM FOUNDATIONのインタビュー記事の中で、野口さんが語っている。
「私はタネ屋を継ぐ前、手塚治虫の漫画編集の仕事をしていました。彼のテーマ、作品の根幹は生命。命をつなぐこと、地球の環境と生命を持続させることでした。このタネ屋のテーマも同じです。このままだと世界はお金持ちや大企業の思う方向に進むだけであって、その中で私たち個人が生き延びるためには、自分でタネをまいて野菜を育てて、それを食べて、自分でタネを採って、それを自分の子供につなぐしかないと思っています」(続く)
小林信也の本
既刊《天才アスリート 覚醒の瞬間》(さくら舎)
新刊《武術に学ぶスポーツ進化論》~宇城憲治師直伝「調和」の身体論~
(どう出版)
