スポーツライター塾の話をします(1)これから出会う塾生さんへ 小林信也
スポーツライター塾、どうしようか迷っている人へ
僕(小林信也)がスポーツライター塾を再開したのはご存知ですか。
十数年前に何年かやって、しばらくお休みしていました。
今日は、受講しようかどうしようか考えている方に、答えを出す助けになるであろうメッセージを送ります。
以前、スポーツライター塾を開いていた時
「プロ野球の選手になれなかったから」「Jリーガーになれなかったから」、「スポーツライターを目指します」という受講生がかなり多かった。そんな動機の書かれたメールを受け取るたび、事務所のスタッフとため息をついたのを思い出す。
その気持ちは、まあ、わかります。選手の夢がかなわなかったから、せめて取材・執筆する立場で好きなスポーツと関わりっていたい……。
僕はといえば、プロ野球選手になれなかったから、他の仕事を求めたという意味では、同じ仲間かもしれません。でも、何とかスポーツに関わって暮らしたい、という気持ちはありませんでした。むしろスポーツから逃れたい、近づきたくない気持ちの方が強かったでしょう。なぜなら、野球部に入るつもりで大学に進学しながら、入学式の前に合宿所から逃げ出した負け犬だったから。
スポーツの現場に行けば、当時の仲間も少なからずいます。実際、ナンバー編集部のスタッフとしてプロ野球取材をした時、当時の阪急ブレーブス(現オリックス)の広報担当は、大学の同級生で同じ野球部員でした。一緒に入学テストを受けに行った堀場秀孝選手は、プリンスホテルを経て、プロ野球選手になっていました。
なる気のなかった僕が、48年もスポーツライターをやっている
いわば挫折組ですから、後ろめたく感じ、頭の上がらない現場で仕事をしくないのは自然なことでしょう。僕は、作家になろうとは思っていましたが、スポーツライターになりたいとは考えていませんでした。
その僕が、もう48年もの間、スポーツ分野の取材・執筆を続けている。
これも運命としか言いようがありませんが、そんな僕だから、常に「なぜスポーツを書くのか」「スポーツを通して何を表現し、伝えるべきなのか」といった、勝ち負けとは別次元の問いかけをずっと続けて来ました。そういう、ちょっと屈折したところのあるスポーツライターは、そう多くないと思います。いえ、多くの人がそれぞれ悩みや葛藤を抱えて仕事をしているでしょうが、いざスポーツを取材し、書くとなれば、そこは割り切って書くしかないのが、たいていのスポーツライターの職分です。でも僕は、その悩みや葛藤そのものを執筆テーマにしています。
《子どもにスポーツをさせるな》
《高校野球が危ない!》
《真夏の甲子園はいらない》
といった単行本の題名を見ても、わかっていただけるでしょう。
魅力ある主人公に出会えたら
かと言って、常にスポーツを斜めに見ているわけではありません。魅力的なテーマに出会えたら、誰よりも真っすぐ、そして真っ先に寄り添い続けるのもまた僕のスタイルです。
《消えた天才ライダー・伊藤史朗の幻》
《招待状のない夢 トレーナー白石ひろしの冒険》
《越後の雪だるま ヨネックス創業者・米山稔物語》
などは、主人公に強い魅力を感じて書かせてもらった本です。
そして今は、《大の里を育てた”かにや旅館”物語》という本を書き上げ、5月の出版を待っているところです。
小林信也のスポーツライターに向いている人
簡単に言えば、何のためらいもなく、「スポーツ、大好きです!」「野球、最高!」「サッカーを語らせたら負けません!」と叫んでてらいのない、熱血直進型スポーツ人間は、僕のスポーツライター塾には向かないだろうと思います。
そういう人は、スポーツ新聞やスポーツ雑誌、あるいはプロ球団の広報とか広報を受け持つプロダクション等への就職を試みた方がいいでしょう。
スポーツは好きなんだけど、いまのスポーツって何か違う……。そんな、好きだけど素直に絶賛できない、心のどこかに疑問やためらいを感じている、だけど、スポーツから離れたくはない、スポーツが気になる……。そんな人が、小林信也スポーツライター塾には向いているかもしれません(笑い)。
小林信也の本
既刊《天才アスリート 覚醒の瞬間》(さくら舎)
新刊《武術に学ぶスポーツ進化論》~宇城憲治師直伝「調和」の身体論~
(どう出版)
