スポーツライターがなぜ〈平和祈念写真展〉を開くのか?
スポーツライター小林信也が平和を叫ぶ理由
報道写真家・大石芳野さんの〈平和祈念写真展〉をプロデュースする構想を話すと、「なぜ小林君が?」「スポーツライターなのに?」と訊かれる。唐突に感じるのかもしれない。そこで今回は、なぜ僕が〈平和祈念写真展〉に関わるのか、端的にお伝えしよう。
直接のきっかけは、すでに書いたとおり、大石芳野さんと出会ったこと。そして「次は長岡の写真が撮りたい」と、思いがけず故郷の名が大石さんの口から出たことだ。その瞬間、僕の中で漠然としていた希望に光が差した。
数年前まで口外しなかったけど、僕は「被爆二世」です
僕はずっと、どうやったら平和への波を発信できるか、模索していた。
ひとつの理由は、僕が「被爆二世」だからだ。父が広島で被爆した。爆心地から2㌔くらいの海岸沿いで軍の作業中、背中に猛烈な熱さを感じた。振り返ると大きな白い雲が地上から空へと湧きあがっていた……。父親ら兵隊たちはすぐに爆心地への移動を命じられ、原爆投下直後の爆心地付近に入り、救助やがれきの撤去に従事した。約一週間、爆心地付近で野営しながら作業に当たったと、戦後40年以上経ってから父に聞かされた。
父も亡くなり、原爆を知っている人々の大半が天に召されたいま、あの惨劇を誰が語り継ぐのか。僕もその使命を担うひとりではないか、そう強く感じ始めた。
被爆二世、平和への道を語る(YouTube小林信也チャンネル)
オリンピックはもはや「平和の祭典」ではなくなった?
さらにスポーツとの関連もある。東京2020の開催をめぐって、反対の声が国民的に広がった。〈平和の祭典〉と銘打っているが、すでにオリンピックは巨額なビジネスとなり、平和とは別次元の商売そのものになった、そういう指摘を否定できない現実がある。しかも、ロシアが冬季北京五輪とパラリンピックの間、〈オリンピック休戦〉の期間中に休戦協定を破ってウクライナに侵攻した。もはや、オリンピックの平和的意義や使命は失われたに等しい。しかも、ロシアに対してIOC(国際オリンピック委員会)をはじめスポーツ界はなんら戦争を止める動きができず、静観し、戦争を傍観しつつ粛々と競技を続けるばかりだ。
本当は《参加型の新しいオリンピック》を始めたい
そんな空しい現実を見て、「スポーツを通じた国際交流・国際親善は平和の礎になる!」と信じる僕は、スポーツ界の流れを変えたい、スポーツに打ち込む選手や指導者たちの意識を変えたい、自分たちがスポーツを通じて出来る可能性に目覚めてほしい、と強く願う。本当は、商業化したオリンピックに代わる、新しいオリンピックを提唱したい。その腹案はある。だが、残念ながら、僕がクーベルタンに代わって提唱しても、すぐ実現はしそうにない。僕はその計画と提案をもう40年近く前から雑誌に発表したり、本に書いているが、「お金にならない」と思うのか、これまで一度も相手にされなかった。インターネットが普及したいまこそ、ネットを活用した〈参加型オリンピック〉は十分に実現可能だし、五輪よりよほど大きな経済効果を生む可能性だってある(一部の利権者や協賛企業が儲かるだけでなく、すべての参加者が満足を得られるという意味で)。だが今のところ僕の遠吠えにすぎない。そこで、実現可能な発信から始めたい、そんな衝動で動き始めたのが〈平和祈念写真展〉だ。
〈衝突〉から《調和》へ、スポーツの潮流を変えたい
もうひとつ言えば、昨年12月に出版した《武術に学ぶスポーツ進化論》で書いた方向と、平和の提唱は連動する。
新刊《武術に学ぶスポーツ進化論》~宇城憲治師直伝「調和」の身体論~
スポーツは、勝ち負けを決める目的でルールが規定されているが、勝敗を競うのは「スポーツをする究極の目的」ではない。勝負を競うスリルや興奮を通して、新しい自分の可能性に気付き、相手に触発されて共感を抱き、自分をみつめ、自分を磨き、さらなる価値観に目覚めることこそ、スポーツの意義だと僕は感じる。つまり、戦う相手は敵ではない。ところが、巨額のお金が動き、勝てば億万長者になれる最近のスポーツ界は勝利こそがすべてでまるで戦争のような対立構造に支配されつつある。
負けた方は勝者を恨み、いつか仕返しをしようと恨みを募らせる。勝つ為なら違法なことも厭わない。それが、みんなが愛するスポーツの姿だろうか? このままではスポーツは退廃的な『衝突の分野』になり下がる。すでにそうなっている。これを《調和を主眼とする分野》に変えたい。元々そうだったスポーツ本来の価値観を多くの人に思い出してほしい。こうした情熱のすべてが連動して生まれたのが《平和祈念写真展》なのだ。
大石芳野さんと小林信也の対談映像がご覧いただけます!
YouTube小林信也チャンネル「大石芳野・小林信也対談」
スポーツを通じて平和を発信! 大石芳野平和祈念写真展&小林信也トークライブ開催 - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
