農業問題 素朴な疑問1 コシヒカリはもう別の品種!? 小林信也
令和の百姓一揆、大事なのはこれからの行動の継続
《令和の百姓一揆》は意義ある行動だった、農業従事者でない僕までが触発された。
これまで一般に知られなかった農家の惨状、深刻な離農、農業政策の偏りや失政が伝えられ、多くの人たちが共有した。もちろん、コメ不足や野菜の高値などが家計を直撃し、一般の問題意識は高まっていたと思うが、大半は「異常気象」のせいにされ、「不足したら輸入すれば解決する」といった楽観的な空気もなくはなかった。でも《令和の百姓一揆》によって、この問題はすでに何十年も前から始まっていた失政が根にあり、日本の食を司る農政は「国民の食生活の安全と充実をもたらすため」でなく、アメリカ支配の元に「一部の政治家や団体がアメリカの利益の片棒を担ぐことで私腹を肥やすために行われてきた」と思わざるをえない、おかしな決定や判断がきわめて多い現実を知らされた。
食を愛するひとりの生活者として
僕は農業問題に関して門外漢であり、専門家ではない。けれどもちろん、一消費者、〈食べることが大好きな人間〉としてはそれなりの関心と興味を抱いて暮らしてきた。〈自然食〉に関心を持ったのは20歳の時だからもう48年間、マクロビオティックとかナチュラルフーズ、オーガニックと呼ばれる分野と関わって生きている。
また昨夏から、ある研究者との出会いをきっかけに、カーボン・ファーミングに関する専門的な取材と勉強も始めている。
そんな立場から、まずは〈素朴な農業問題の疑問〉を僕なりのスタンスでまとめてみようと思う。
魚沼地方を取材して『コシヒカリの現実』を知り驚嘆した
数年前、コシヒカリ発祥の地とも呼ばれる新潟県南魚沼市から依頼を受け、コシヒカリ誕生の歴史をテーマにまとめる小冊子を取材・執筆した。
数軒の農家が、コシヒカリの試験栽培に参加した。そのうちの一軒に話を聞いたとき、ビックリする話を聞かされた。
「いま流通しているコシヒカリは、私の父親たちが一生懸命協力して作った最初のコシヒカリとはもう違う品種のコメなんです」
哀し気にそう言って、跡を継いだ息子さんが引き続き作っている本物のコシヒカリのおにぎりを食べさせてもらった。
「うまい!」としか言いようがない。違うか? と訊かれて「明らかに味が違う」と断言できるほど僕の舌は肥えていないが、そのおにぎりが掛け値なしに美味しかったのは言うまでない。
「魚沼産も含めて、いま日本全国で《コシヒカリ》だと言って、売られているコメは全部、〈コシヒカリBL〉という品種です。それを〈コシヒカリ〉と銘打って販売している」
「それって、詐欺じゃないですか!」
僕は思わず声を上げた。でも、それが現実なのだ。ここにも「日本の農政はおかしい」という事実の一端が垣間見える。しかも、一部の専門家か熱心なコメ愛好家以外、こんな事実は知らないだろう。都合の悪いことは知らせないように世の中は流れている。
隠しているわけではないが、知られてもいない
実際は、隠している、隠されているわけでもない。
新潟県のホームページを検索すると、こんな解説がある。
『新潟県では、平成17年産米から従来のコシヒカリよりも農薬を減らした栽培ができる「コシヒカリBL」を県内に一斉導入し、環境にやさしく、安全・安心なお米づくりを推進しています。(中略)
コシヒカリBLは、コシヒカリに「いもち病」に強い性質だけをプラスしたお米であり、従来の育種方法により15年の歳月と手間をかけて改良しました。(※遺伝子組み換えではありません)』
さらに『コシヒカリBLの品種名に係る法律上の規定』と題して細かな表が掲示され、よく見ると次の記述がある。
『コシヒカリBLと従来コシヒカリは、目視による外観形質の判別ができないため、いずれも「新潟県産コシヒカリ」として銘柄を設定』
シレッと書いてある。いいのかなあ、こんなことで……。
小林信也の本
既刊《天才アスリート 覚醒の瞬間》(さくら舎)
新刊《武術に学ぶスポーツ進化論》~宇城憲治師直伝「調和」の身体論~
(どう出版)
