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大の里・能生育ち観戦記(3月場所9) 恩人・高安との優勝争い 小林信也

高安と大の里が1敗で優勝争いの先頭に立った
春場所(大阪)九日目。高安、大の里がそれぞれ快勝。1敗を守って給金を直し、十日目の直接対決を迎える。
美乃海が二敗目を喫した現時点では、大の里と高安が優勝争いの先頭を走る。二人の交流を知る者としては感慨深い展開だ。
大の里が二所ノ関部屋に入門する前、まだ中村泰輝だった時、中村君の言う「就活」で二所ノ関部屋に体験入門した時のこと。ちょうど出稽古に来ていた高安が中村君に胸を出してくれた。30番取って、互角に近い内容だったと聞かされた。稽古の後、「絶対に二所ノ関部屋に入った方がいい」と言われたとも。初土俵直前の四月末にも高安は出稽古に来て、22番取ってくれた。大の里の12勝10敗だったという。初土俵を踏む前の新弟子が、元大関を圧倒するなど異例のこと。大の里にとって願ってもない経験が出来たのは言うまでもない。

逆風の巡業先で高安が二日続けて大の里を泥だらけに
そして僕が最も「ありがたい」と感じたのは、週刊誌の不祥事報道で大の里が針の筵に立たされた昨年四月末、直後の巡業先で、ともすれば孤立しがちな大の里に二日続けて胸を出してくれたのが高安だった。高安は、いつもより長い時間、大の里を土俵に転がし、泥だらけにしてくれた。お互いの、無言の意志表現。それが大の里にとって、どれだけかけがえのない心遣いだったか。
昨年五月場所二日目の初対戦では、高安が大の里を破った。だが翌日から腰痛のため休場。大の里戦で痛めたのだろうかと、こうした二人の交流を知る応援者たちは心配したものだ。次の場所も途中休場。だが、九月場所では8連勝を含む10勝と復活し、以来、勝ち越しを続けている。

部屋は違うが兄弟弟子のような高安との感慨深い一戦
そしていよいよ今日、五月場所十日目。優勝争いのかかった大一番が本場所の土俵で展開される。
初土俵前に胸を出してくれた後、高安が「とくに2歩目、3歩目の出足がすごい」とかつての兄弟子・稀勢の里(二所ノ関親方)に話していたと、親方が語っている。その2歩目を封じる立ち合いをしてくるのか、誰よりの大の里の相撲を肌で知っている高安の〈大の里封じ〉が見ものだ。そして、大の里には〈勝つことが恩返し〉とされているこの世界の習わしを踏襲し、きっちりと成長した姿で恩を返してほしい。

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