「瞬くとき」第2話
国道沿い・コンビニ・外(第1話冒頭)
照りつける日差しを避け、コンビニ前の日陰に座り込む、瞬。
2Lの水が入ったペットボトルを直飲みする。
瞬M(赤い糸を辿って隣の県まで来ちゃったけど…道のりは長そうだなぁ)
地面に座り込む瞬の前に人影ができ、外国からの観光客が道を訪ねてくる。
欧米人女性「Excuse me~」
瞬「は、ハ〜イ?」
作り笑いを浮かべて親切に応対する瞬。
✕ ✕ ✕
一通り案内を終え、元いた場所に再び座りこ込む瞬、頭を掻いている。
瞬M(っていうか、インバウンド多すぎ!今日だけで何人目?俺は地元民じゃないっての!次から次へと、しかも俺ばっか!)
俯く瞬の頭上から声がする。
アジア人男性「スイマセン…オシエテ、クダサ〜イ」
片言の日本語で話しかけてくるアジア人男性。
顔を上げて作り笑いを浮かべる、瞬。
(回想)青木家・瞬の部屋(夜)
椅子に座り、顔の前で左小指の赤い糸を見ている、瞬。
瞬M(俺には神が与えてくれた、であろう特殊能力がある!)
冷静な顔で腕組みをして考える、瞬。
瞬M(彼女ができた中野に赤い糸は付いてなかったし、そういや理香子にも付いてなかった…)
瞬「俺のばか!そうだよ、よく考えたら結ばれるはずねぇよ!」
瞬、ハッとした顔をする。
瞬M(そういや、最近付き合い始めた同じクラスの岬(17)と剣司(17)の赤い糸は繋がってた!…幸い、俺には赤い糸が巻き付いている。ということは、この赤い糸を辿って繋がってる相手に告白すれば、成功率100%ってことじゃん!)
瞬「でも、どうやって…」
疑問が浮かぶ度に、左小指に巻き付く赤い糸を見つめる、瞬。
瞬M(…この赤い糸って、先は見えないけど繋がってる方向?は何となく分かるんだよなぁ…)
瞬「ちょっと周辺探してみるか」
一通り自問自答した瞬、何やら準備を始める。
(回想)町内・外
秋江のママチャリを借りて、町内を走行する瞬。
赤い糸の示す方向にママチャリを走らせるが、それらしき人物は見つからないし、途中で示す方向が変わることもある。
周囲の人には、見えない何かに振り回されている不審人物と化す、瞬。
瞬M(ヤバい…全然見つかんない。途中で方向変わるし、順調よくいってると思ったら、山にぶち当たるし。そんで引き返すと訳わかんなくなるし!)
瞬「あー!」
頭を掻き乱す、瞬。
顔を上げ、目線の先にそびえる山を見る。
瞬M(でもなんか、あの山の先っぽいんだよなぁ、だとすると県境越えちゃうしなぁ…)
少しの間、ママチャリに座ったままの体勢で考え込む、瞬。
瞬M(となれば、明日から春休みだし、自転車で行けるとこまで行ってみるか…)
ママチャリをゆるりと漕ぎ出す、瞬。
(回想終わり)
ー自転車の旅、4日目の朝ー
隣県・公園(朝)
公園の隅に設置されているベンチで寝袋に包まり寝ている人がいる。
寝袋から出ている、手入れのされていない瞬の顔。
ベンチの近くにある大きな木の葉っぱの隙間から、日差しがちらつき、のっそりと起き上がる、瞬。
気だるい体を無理やり起こし、フラフラしながら公園の水飲み場へと向かう。
と、目前のベンチで男女がイチャイチャしている。
瞬「あー…なんかもう、やめよっかな…」
急に自分がバカらしく感じた、瞬。
春休みとはいえ、夜はまだ冷えるし、病み上がりの瞬。
水を飲む前に、その場で意識を失って倒れる。
総合病院・救急外来・中
移動式簡易ベッドの上で静かに目を開ける瞬、辺りを目だけで見渡し、状況を把握しようとする。
起きあがろうとすると、眩暈がして目を閉じる瞬。
男性「大丈夫ですか?」
瞬、声のする方を見る。
少しウェーブのかかった金髪の若い男性がこちらを心配そうに見ている。
瞬、目を細めて返答しない。
すかさずナースコールを押す、金髪の男性。
少しして看護師が入室してくる。
看護師「どうされましたか?」
男性「あ、目が覚めたようなんですが…」
看護師「あら…分かります?お名前言えますか?」
瞬「あ、青木…です」
看護師「ここがどこだか分かりますか?」
瞬「…病院?」
看護師「そうです。公園で倒れていたところを、この方が助けてくださったんですよ」
男性「あぁいや、そんな大したことじゃあ。たまたま通りかかっただけで…」
謙虚に受け答えをする、金髪の男性。
瞬「…」
瞬、金髪の男性と目が合うが言葉が出ない。
男性「あ、じゃあ意識が戻ったみたいなので、僕は帰ります」
金髪の男性、椅子から立ち上がり、看護師に向かって声をかける。
看護師「はい、あとはご本人にお話を聞きますね」
男性「お大事に」
金髪の男性、瞬に向かって微笑み、病室を出ていく。
その瞬間、金髪の男性の左小指にチラッと見える赤い糸。
そして、それは瞬の左小指に巻き付く赤い糸と完全に繋がっている。
瞬「…え…お、男の人…?」
同・救急外来・中(夕)
ベッドの三方を締め切っていたカーテンの一角が予告もなしに突然開けられる。
秋江「ちょっと、あんた!」
瞬「うお!びっくりした!」
驚きのあまり、ついベッドから起き上がる、瞬。
怒りをあらわに赤い顔をした秋江、近づいてくる。
秋江「本当にあんたって子は!連絡もなしにいなくなるなんて!電話にも出ないし!」
瞬「ちゃんと書き置きしといただろ!毎日LINEも送ってたし…」
段々と語尾が小さくなっていく、瞬。
(回想)青木家・リビング
買い物から帰宅した、秋江。
食材を机の上に置こうとしてノートの端切れに気づき、手に取る。
『ちょっと旅に出てきます。あとママチャリ借ります。瞬』
と走り書きの文字が書かれている。
秋江「ちょっと!どういうこと⁉️…しゅんー!しゅんー!」
ドタバタと家中を探し回る、秋江。
(回想終わり)
総合病院・救急外来・中(夕)
秋江「あんな書き置き意味ないでしょ!どんだけ心配させるのよ!」
瞬「…ごめん…ちょっと急いでたからさ…」
秋江の怒り心頭な様子に不貞腐れた表情をしつつも謝る、瞬。
秋江「ほら、帰るわよ!荷物どこ?」
瞬「え?入院しないの?」
秋江「検査では特に異常もないし、先生が退院してもいいって!」
瞬「えっ、いや、ちょっとやることがあるんだけど…」
秋江「やることって何よ」
瞬「いやぁ…人さがし?ちょっと急いで…」
瞬の言葉を遮り、怒気を含んだ声で話をする秋江。
秋江「あんた、まさかっ!出会い系なんてしてないでしょうね!それだけは、もう本当許さないから!」
瞬「違うよ!出会い系じゃ…な、い?」
勢いよく否定するが、またもや語尾が萎んでいく、瞬。
秋江「とりあえず!今日は帰ります!」
強い口調で言い切る秋江に逆らえない、瞬。
瞬「…はい」
青木家・瞬の部屋(夜)
ベッドに横になり天井を無言で見つめる、瞬。
親切にしてくれた金髪の男性と瞬の、左小指に巻き付いている赤い糸が繋がっていたことを何度も思い返している。
瞬M(巨乳ロリ顔(かなり加工されている)をモチベーションに、ここまで頑張ってきた自分は何だったのか…あの時見た「赤い糸」は幻覚じゃなかった?寝ぼけてたし。あー!もう1回ちゃんと見たい!でもお兄さん……みかけによらず優しそうな人だったな。俺が身分証を持ってなくって家族に連絡できないから、代わりにあの金髪男性が付き添ってくれてたみたいだし…)
うる覚えな金髪男性の顔を思い浮かべる、瞬。
ー数日後ー
青木家・瞬の部屋
ベッドでゴロゴロして漫画を読んでいる、瞬。
秋江の声(空耳)が聞こえてくる。
秋江「しばらく外出禁止だからね!」
瞬、ため息をつく。
瞬「あぁ、もうすぐ春休みが終わってしまう…」
瞬、赤い糸が繋がっていただろう彼のことを思い出さずにはいられない。
瞬M(一旦はなかったことにしようと思ったけど…ダメだ、めちゃくちゃモヤモヤする!)
瞬、スマートフォンを手に取り、操作する。
スマートフォンから、呼び出し音が鳴る。
理香子「もしもーし、どしたの」
瞬「いや、ちょっと聞きたいことがあって」
理香子「何?」
瞬「いや、あのさ…」
理香子「?…急ぎじゃないなら、また後でもいい?」
瞬「あ!赤い糸って、信じる?」
理香子「何よ、急に乙女っぽいこと言って」
瞬「昨日、漫画で読んだんだけどさ。おまえ、もし見えたらどうする?」
理香子「えー、そりゃもちろん自分と繋がってる人を探すでしょ」
瞬「だよな!」
理香子「意外、瞬はめんどくさいって探さなそうなのに」
瞬「よく分かってんじゃん。今までの俺ならな」
理香子「なに、なんかキモい」
瞬「はぁ?まぁでも、1回キリの人生だし、ずっと受け身なのもつまんないよな」
理香子「…なにそれ」
思わず笑ってしまう、理香子。
瞬「ははは」
つられて笑う、瞬。
瞬「そういやさ、」
楽しそうな2人の会話が続いている。
ー新学期(4月)ー
青木家・リビング(朝)
秋江がキッチンで朝食を作っている。
私服に大きめのリュックを背負った瞬、リビングの入り口に立っている。
瞬「母さん」
秋江、包丁で野菜を刻んでいる。振り返らず、
秋江「なに、今日は早いじゃない。どうしたの」
瞬「俺、学校辞めるわ」
秋江、思わず手を止めて振り返り、
秋江「はぁ?急になに言い出すの!留年手続きしたでしょ?」
瞬「それと、またちょっと家空けるわ」
包丁を持ったまま、瞬に近づく秋江。
秋江「ダメに決まってるでしょ!学校に行きなさい!それに、あんた何回死にかけたら気が済むのよ?」
瞬「今度は大丈夫!」
言いながら駆け足で玄関へ向かう、瞬。
瞬「毎日連絡するから!安心して!」
慌てて、包丁を持ったまま追いかける、秋江。
青木家・玄関・外(朝)
秋江のママチャリに乗り、漕ぎ出す瞬。
だんだんと遠ざかる青木家の玄関先には、
秋江「しゅんー!」
と、大声で呼ぶ秋江と寝ぼけ眼の俊雄の姿が見える。
国道・海岸沿い
朝陽を受けて海面がキラキラと光る。
国道をママチャリで走る、瞬。
その横顔は、春休み前の顔とは違ってキリッとしている。
