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北海道民はジャガイモに詳しい

 たまにはどこまでが本当かわからないような、もっともらしい与太話でもしますか。
 私は北海道の農村地帯に住んでいるので、馬鈴しょ、つまりジャガイモの生育にはかなり詳しいです。具体的には、家庭菜園で植えられているジャガイモが、購入した種芋なのか、食用に買って余った芋を植えてみたのかが一目でわかるレベルです。
 なぜ見ただけでわかるのか。私クラスのベテラン道民同士なら、「そんなのオーラを観るまでもなくわかるよね」なんですけど、道外民にも通じるように話しますと、購入種芋を植えた芋は健全な姿で、そうでない芋はほぼ確実に病気を持っている姿だからとの説明になります。なお、病気の芋は「罹病株(りびょうかぶ)」と言います。
 そもそも、ジャガイモは病気に弱い作物なのですよ。19世紀のヨーロッパでジャガイモ疫病菌によって壊滅的な被害が発生したのを世界史で習いましたね。しかし今ではそれが起きていない。このことは決して偶然の産物ではなく、たゆまぬ品種改良と栽培技術の発展、現代農業を支える農薬研究の成果なのです。
 家庭菜園でジャガイモを育てる際に、殺虫剤や殺菌剤を使う人はあまりいないでしょうが、販売用の種芋生産ではまずありえません。種芋の定植から収穫まで、農薬の有効日数を計算しながらどの薬を使ってシーズンを過ごすか、それは計画的に決まっているものです。ホームセンターで売っている、いわゆる売り物用の種芋はこうした栽培を経て店頭に並びます。
 ついでに病株の抜き取りの話でもしますか。種芋を生産して売り物にするには、植物防疫官による防疫検査を突破しなければなりません。防疫官というプロ中のプロが種芋の畑を確認し、合格して初めて売り物として出荷できるのです。この際、畑の中に罹病株が0.3%以上あると不合格とされています。
 こんな無理ゲーをどう凌ぐのか。先に触れた農薬の使用管理は当然のこと、これに加えて徹底的な「抜き取り」を行います。
 冒頭で挙げた家庭菜園の例では、真性の罹病株の姿に間違いありませんが、プロ農家の現場ではこんなにわかりやすい病株は残っていません。その中で、少しでも変わった株を抜き取って磨き上げていくのです。
 例えるとこんな感じです。同じ学校の生徒を5万人揃えたと思ってください。
 まず、まったく違う制服を着た者がいれば別の学校の生徒だとすぐにわかります。抜きます。
 すると次に、制服は似ているのに校章が違う者が目に付きます。抜きます。
 さらに見慣れてくると、ネクタイ、靴下、ボタンの形、果ては纏っているオーラが微妙に違う者まで気になるようになります。抜きます。
 抜かれたのが、実は校則違反気味の同校生だった。それは大きな問題ではありません。その他5万人と同じ姿の株で揃えれば、同校生だけになったと考えて間違いないからです。
 こんな経緯もあって、ホームセンターで売っている種芋なら健全な状態にある。検査も必ず突破している。それがわかっているのです。
 ちなみに、健全な種芋で始められれば、無防除で育ててもその作はきちんと獲れます。なんだジャガイモって簡単じゃんとか思って、適当な芋を使うと全然獲れないのはこういう理屈になります。
 これは北海道の農村地帯では誰でも知っていることです。




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