最適解は意外にも男爵
私は北海道の農村地帯に住んでいるので、馬鈴しょ(ジャガイモ)には一生食うに困らないだけのコネがあります。
関連して、馬鈴しょのウマさや品種については、プロ農家と話ができるレベルと自負しており、スーパーでイモを買う層では絶対ここまでになれないだろう、という程度には詳しいです。
一例を挙げますと、8月くらいから出回る北海道産の「とうや」「キタアカリ」は、出始めから味が乗っているので安心して買っていいです。これらは早生種なんで、早く収穫されても完熟感があるからです。
北海道産のメークインがいちばんウマいのは年が明けて2月か3月。ここまで寝かせるとデンプンが糖化して、ジャガイモ特有の甘い味が乗るんです。もっとも、3月まで芋の形のままで寝かせられたらどんな品種でもウマいんですが、寝かせた芋はメークがいちばんウマいと私は思います。
いまだ国内で知名度ナンバーワンの男爵はと言うと、生産者サイドでは「売れるから作るけど男爵なあ」的なポジションの雰囲気です。男爵よりウマい品種なんていくらでもある時代だしさあ、とも。
そんなイモの酸いも甘いも嚙み分け尽くしたプロ農家の一人が、あるとき直売所でポテトフライのお店を出しました。それで、使っている品種があろうことか男爵なんですよ。なんで男爵なんですか? と言いました。インカは量を獲れないにしても、ホッカイコガネとか、もっとポテトフライ向けの品種あるでしょうにとも。
しかし食べてみると、これがめちゃくちゃウマい。男爵なのにウマい。揚がり方といい、味付けは粗塩にローズマリーと、ずいぶん洒落てるのですよ。ローズマリーってこんなにウマかったっけ? ですよ。
とくに揚げ方にはよっぽどの工夫が隠されているに違いないと思いました。粉か、それとも揚げる前に凍らせるのがいいのか。商売のネタなんで、どうやって作っているのかまでは聞けません。
それ以来、私の中でポテトフライはそこで買って食べるものになって久しいくらいでしたが、あるとき結構な量の男爵を貰ったんですよね。貰い物なんで品種に文句を言うことはありえません。
せっかくだからポテトフライでも作るかとやってみたら、なんということでしょう。他の品種で作るよりずっとウマい。あのイモ臭くて比較的味のない男爵が、ポテトフライにすると油と塩との相性でこんなに跳ねるのかと驚きました。
そして思い出します。件のお店の農家の方が「いろんな品種で試したけど男爵が一番だった」と言っていたことを。
人間、信じていない情報は聞いていても頭に残らない習性があるんですね。これは不思議な体験でした。
北海道にいるとジャガイモに詳しくなります。
