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【笑える英文法物語】代名詞戦隊ワタシーズ ⑥ S怪人が友達を連れてやってきた 後編

こちらの後編です!




 そのとき、マイがゆらりと立ち上がった。
 足元がおぼつかない。

「わたし……分かったかも」

 苦しげな声でマイが言うと、アイもミーもマイを振り返った。

「分かった?ホントに?」

 アイが目を見開く。

「間違ったらゴメン……でもやってみたい!」

 マイの目が光った。

「その時は、私たちが絶対守ります!ねっ、アイさん!」
「当たり前!この勝負、マイに任せた!」

 ニヤッと笑い親指を突き出すアイ。
 マイはうなずいて前に出た。
 そして手を大きく広げる。
 問題たちが獲物を捉えたように急加速してくる。

 マイは心の中で勘を最大限に働かせた。

 —— enjoys(エンジョイズ)は普通に言えるからこのままでいい。でもstudyes って書くと『スタディエス』みたいな発音になっちゃう。『スタディーズ』にするためには多分……

「いっくよー!わたしの勘フルパワー!!6. enjoys!そして……」

 マイが i 怪人を睨み、そしていたずらっ子のような笑みを見せた。

「7は y を i に変えちゃえ! そうすれば発音しやすくなる!」
「そっか!」

 マイの言葉にアイが手を打った。

「なるほどです!」

 ミーも納得したようにうなずく。

「みんなで言おう!」

 マイが両手を伸ばすと、アイがその右手を、ミーが左手をギュッと握った。

「7. studies!!!!!!」

 三人の答えは閃光となって問題を粉砕!

 後にはピンポ~ンという音が鳴り響き、 e 怪人と i 怪人は粉々になった。

「そ……そんな……『勘』が『感覚』になるとは……」

 落下するS怪人。



「勝った……」

 マイが膝から崩れ落ちそうになるのを、アイとミーは微笑んで抱きとめた。

 地面に叩きつけられる一歩手前で踏みとどまるS怪人。

「クックック……まだだ……」

 S怪人が血走った目でカッと睨んだ。

「S怪人が………」

 愕然とするミー。

「やっつけたと……思ったのに……」

 満身創痍で何とか顔を上げるマイ。
 S怪人は体制を立て直して力強く手を振り上げた。

「これを受けてみろぉぉぉぉ!」


問題
次の動詞に三単現の「 s 」を付けよ。
8.have


「よし!あたしが仕留める!」

 勢いよく突っ込んでいくアイ。
 そこへ問題が迫る。
 アイは咄嗟に思考を巡らした。

 ——haveにsを付けて『ハブズ』になっても言いにくくない!よし!

「8. haves!!」

 高らかに答えを叫ぶアイ。
 だが問題はアイの攻撃をものともせずに弾き返す。

ブブーッ!!

 ハズレ音を響かせながら問題が突進してくる!

「……なぜ?」

 呆然とするアイの前でそれは炸裂した。


ドォォォォン!!


「うわぁぁぁ!!」

 吹き飛ばされるアイ。

「アイさん!」

 ミーはアイのもとへ走った。

「ア……アイちゃん!!」

 身体を引きずりながらもそれに続くマイ。

「アイさん、しっかりしてください!」

 ミーがアイを抱きかかえた。

「ダメだ……分からない……」

 アイはミーの腕の中で悔しげにうめいた。

「e 怪人と i 怪人が消えたのに……」

 ミーは目の前でボロボロになっているアイの姿を見て、どうすれば良いか分からない失望感に震えていた。
 そこへたどり着いたマイも、アイの手を握ることしかできなかった。

「どうすれば……」

 マイの目から涙が一粒落ちる。

 そのとき三人のもとへ杖が舞い降りた。
 e 怪人に奪われていたが、e 怪人が消えたことで三人のもとへ戻ってこれたのだ。

「必殺技スティック!」

 ミーがそれを掴み取る。

「アイさん!マイさん!」

 ミーが声を張り上げると、二人はそれに呼応した。
 アイもマイもダメージで手が震えながらも何とか杖にすがりついた。

「チッ、またあの杖!だがもう遅い。トドメだぁ!受けてみろ!」

 空を仰ぐ怪人は余裕の笑みを浮かべた。

「怪人奥義!『ヤベェんだわ〜』

 S怪人から光が放たれると、問題はガッカリ輝きながら巨大化した。そして三人を突き刺すような鋭利なフォルムへと変化していく。

「さらばだ!ワタシーズ!」

 その時、三人の頭に杖から映像が流れ込んできた。


(タイムカウントスタート0.00秒)

 何百年も前のような、古い時代の背景。
 画面いっぱいの口が v の発音をする。
 強調される唇の厚さと歯の黄ばみ。間に海苔が挟まっている。



 ——リアル過ぎてキモい……

 げんなりしながらも観察をする三人。

 下唇の上に乗る前歯。
 そこから吐き出される破裂音『ヴ』。

 ——ハブじゃなくてハヴなんだ。

 背景がどんどん新しい時代に変わっていく。
 その中で何回も発音される『haves(ハヴズ)』。
 口が疲れてきたのか、発音がだんだん歪んでくる。

 ——めんどそう……

 同情する三人に輝く思考が降りてきた。

 ——そういうことなんだ!


(ここまでの経過時間0.12秒)


 三人を呑み込むほど大きな『have』が風を切って迫り来る。
 三人は目を輝かせてそれを睨んだ。

「よし、行くよ!」

 アイの凛とした台詞にマイもミーもうなずいた。

 ——ずっと昔からたくさん使われてきた『have』だからこそ、『 s 』が付いても言いやすいように変わっていった……

 三人は一緒に杖を掲げた。

「行け!必殺技!」


『めんどいチェーンジ』!!


——めんどくさい→めんどい と同じ理屈!havesも何回も言ってたら『めんどい』よね!

「8. have に s を付けると……」

 面倒くさそうにダラダラと漂っていた光たちの面倒パワーがきらめく。

めんどくさめんどい
っていうってか

havesは……



「has!!」



 三人が声を張り上げると、has が面倒パワーをまといながら問題を一閃!


 ピンポ〜ン♪


と、音が鳴り響いた。

「な……んだ……と……」

 S怪人は砕け散りながらも最後の仕事を果たす。

「見事だ……」

 怪人が消えたグラマーワールドの空に、大きな赤丸が輝いていた。


 次の日。
 意気揚々と英語の授業に向かった三人に悲劇が訪れた。

「今日からは次の単元に入るよ~」

 ——えっ!!

 三単現の s の使い分けはすでに過ぎ去ってしまった。

 三人は真っ白な灰になって崩れ落ちたのだった……。



 しかし、定期テストでは必ず出題される!
 肩を落とすな!ワタシーズ!
 頑張れワタシーズ!



「S怪人が友達を連れてやってきた」編 完


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