【漫画】無色の牢獄|第5話後編|エッセイ
ランドセルの他にも小学校で使う筆箱やお道具箱など必要最低限の物を買ってくれる事になりました。

母は「これがいいんじゃない?」とプラスチック製でオレンジ色のお道具箱を持ってきたのですが私はその近くにある別のお道具箱がとても気に入り「これがいい」と母に頼みました。

この頃にはもう母の好みや傾向がなんとなくですが分かっていました。
母は『多くの人が良い』と認めたものを好みます。
なので、キャラクターものでも昔からある誰もが知っているキャラクターは母に好感度が高いと分かっていました。
しかし、キャラクターもの。
買ってくれるかな‥学校で使うものだし‥
とダメ元で頼んだのですが
「別にいいんじゃない」と私の心配と反してあっさり購入してくれました。

お道具箱を買ってもらったことは、私にとって凄く嬉しい出来事でした。
お道具箱自体も可愛くて気に入っていましたが、それ以上に自分が選んだものを認めてもらい購入してもらったことが凄く嬉しかったのだと思います。

私は姉達と同じように勉強机を買ってもらう事は出来ませんでした。
ランドセルも私が1番欲しかった青いランドセルを買ってもらう事は出来ませんでした。
ですが、お道具箱だけはそのお店に置いてある私が1番欲しいと思ったものを買ってもらう事が出来ました。
そのお道具箱は私のお気に入りで学校の先生や友達からとても可愛いと褒められるたびにやっぱりこのお道具箱を選んで良かったと思ったのを覚えています。

私が小学生2年生の時転校する事になりました。
同じ市内での引っ越しでとても近くの場所への引越しでしたが小学校も転校する必要があり当時はとても遠くへ引っ越した気持ちになっていました。

引っ越し後、私は次女と同じ部屋になり、長女には1人部屋が与えられました。
新しい家に着くと、突然長女が
「お母さん、私この小さい机のほうがいい」と私が使っている古い勉強机を指差し言いました。

すると、母は
「ゆり、よかったわね!長女ちゃんに感謝しないと。ほら、お礼は?」と言うのです。
父も「長女は本当に優しいなあ」と長女を褒め始めるのです。
私は唖然としました。
私は勉強机を交換してほしいなんて、一言も言っていません。
それなのに両親は長女を褒め始めたのです。

さらに長女は「お道具箱も交換したい」と言い出しました。
私は嫌だと言い断わりましたが、
母は「長女が使いたいって言ってるんだから交換しなさい」と言い、
父まで「お前は本当にケチやな」と責めてきました。

私は「机もお道具箱もこのままでいい」と何度も断ったのですが両親に私の言葉は通じません。
結局、私は大切にしていたお道具箱を取り上げられ、長女の物になりました。

長女に「何でお姉ちゃん机を変えたいって言ったの?」と聞くと
長女は「気に入って買ってもらったけど実際使ってみると大きいし使いにくいんよ」と言うのです。
『なんだぁ。私のためじゃないんだ。』
『まぁ、薄々分かってたけど‥』
『じゃあ何でお父さん達は使いにくい机と私の机を交換したことをこんなに褒めたの?』
『私、机を変えること自体は別にどっちでも良かったけど、変えなくても良かったよ?』
『何でお姉ちゃんは使いにくい机を押し付けて褒められて、私の大切なお道具箱まで奪い取るの?』
『何で私は大切なお道具箱を渡したくないと言っただけでケチなやつと言われなきゃいけないの?』
『何で?どうして?おかしいよ。』
何度もそう思ったけれど、当時の私はその言葉を両親に言っても無駄だと分かっていました。
だって、お道具箱を変えたくないと何度も言っても私の話を聞かず長女のために平気で奪い取るのですから‥

私は確かに母に勉強机が欲しいと頼みました。
でも母は姉達と同じように私に買ってくれる事はありませんでした。
その後私は長女のお下がりの勉強机を使う事になりましたが全く嬉しくありませんでした。
長女の勉強机を使い始めて初めて分かった事があります。
私が欲しかったのは勉強机そのものでは無かったのだと。
沢山展示された勉強机の中から自分の好きな勉強机を1つ選ぶ姉達の姿が私にはとても楽しそうに見えて‥
私も将来小学生になったら姉達と同じように自分だけの机を姉達のように選ぶ事をとても楽しみにしていたのです。

ずっと、ずっと小学生になって机を選ぶ事を楽しみにしていたのに母から、
「昔から家に置いてある古い机でいいでしょ?使えるのだから」と言われ姉達とは違う扱いを受けた事がとても悲しかったのです。
そして私から大切にしていたお道具箱を奪われた時はっきりと気づいてしまったのです。
『私よりも、長女のほうが大事なんだ』と。

その現実を突きつけられた私は、ただただ悲しくて、悔しくて…
喉の奥がギュッと締め付けられるようなあの苦しみを、今でも鮮明に覚えています。
親からすれば『ただの机』『ただのお道具箱』だったのかもしれません。 でも、私にとっては、姉達との扱いの差をとても感じる出来事でした。
私は、自分の好きなものを「これが好き」と堂々と言うのが苦手でした。
欲しくても素直になれず、
「別に欲しくないし」と強がってしまうのです。
どうせ奪われる、どうせ否定されるという恐怖が、心の奥底にこびりついていたからなのだと今なら分かります。

もし今、当時の私と同じように、家庭の中での理不尽な扱いや、きょうだい間の格差に苦しんでいる方がいるなら、伝えたいです。
子供の頃の理不尽な扱いは、あなたが悪かった訳ではない。
苦しかったよね。
悲しかったよね。
忘れたくても忘れられないほど傷ついたよね。
でも、どうか自分の幸せに目を向けて欲しい。
奪われた悲しみを、傷つけられた苦しみを無理に忘れなくてもいい。
きっと忘れたくても、忘れられないのはそれほど深く傷ついたから…
でも、これからは自分を大切にして、大切なものを見つけていってほしい。
私たちの人生はまだ終わってなんかないんだから。
過去の自分を抱きしめて前に進んでほしい。
今回も『無色の牢獄』を読んでいただき、ありがとうございます。
この投稿が誰かの心に寄り添えると何より嬉しいです。
引き続き、どうかお付き合いください。
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