【駐在員の本音】「出世コース」と言われた日が、孤独の始まりだった。
第55話
正直、複雑なんです。
「すごいじゃん」「チャンスだね」と言われるたびに、
嬉しさよりも、少しだけ息が詰まりました。
みんなが祝福してくれるほど、
その期待に応えられるかが怖くなっていく。
そして気づけば、
誰にも本音を言えなくなっていました。
周囲の“期待”が生む、静かなプレッシャー
「駐在に選ばれる=優秀な人間」。
──そんな空気が、日本にはまだ残っています。
家族や友人は「すごいね」と言ってくれる。
会社の上司も「君なら大丈夫」と背中を押す。
でも、その言葉を受け取るたびに、
心の奥では“違う何か”がざわついていました。
期待されるほど、自分が追い詰められていく。
「頑張れ」と言われるほど、“逃げ場”がなくなっていく。
本社の“距離”が、静かに孤独を生む
駐在が決まってから、本社とのやり取りは少しずつ減っていきました。
資料の共有も、打ち合わせも、気づけばメーリングリストの外に。
日本本社のTeamsに書き込んでも、返信はいつも翌朝だった。
「どうなってる?」と聞かれても、もう誰も答えてくれない。
現地で頑張っても、評価がどう伝わるのかは分からない。
“頑張りが見えない場所”で働くことが、これほど心を削るとは思いませんでした。
「駐在=キャリアアップ」ではなく、
「駐在=見えない孤独」だと、初めて痛感した瞬間でした。
それでも――「孤立」は、終わりではなく始まり
けれど、時間が経つうちに気づきました。
誰も助けてくれない場所だからこそ、
自分の価値を“外”ではなく“内”に見つけるしかないのだと。
周囲の評価が見えなくても、
目の前の仕事に小さな納得を積み重ねることが、
自分を支える唯一の方法だったのです。
誰にも見られない努力ほど、
一番、静かに自分を変えていく。
「駐在はキャリアアップではなく、“自分との闘い”」
駐在とは、名刺に肩書きを増やす経験ではなく、
“自分の弱さ”と向き合う時間なのかもしれません。
見えない場所での葛藤も、
評価されない努力も、
すべては「誰かに認められるため」ではなく、
「自分を信じる力」を育てるためにある。
静かな闘い。
それは、誰にも気づかれない強さの証でもある。
出世コースの先に待っていたのは、
競争ではなく、静かな“闘い”でした。
今日も、見えない場所で闘っている誰かへ。
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